■軍はすぐそこまで来ている

「人は自由だと思うかい」
「人は自由さ」
「どうして」
「僕は今自由に生きて、自由に君と喋ってる。
僕に不自由さがあるかい?」
「確かに君は今自由だ、だからといって人が自由とは限らない」
「不自由そうな人はいるが、それだって自由だ」
「温泉には入る?」
「たまにね」
「自由に?」
「わからない」
「間違いなく、温泉に入っているときは、例えばだが」
「何がいいたいんだ」
「不自由ってとさ」
「温泉が?」
「君がさ」
「どうして」
「温泉に入っているとき、温泉から出れないだろう?」
「そりゃそうさ、温泉に入っているんだもの」
「なぜでない?」
「寒いからさ」
「じゃあ出ても寒くない用意がしてあったら?」
「わからない。出ないかも」
「なぜ?」
「なぜって。それは温泉に目的があって入っているから」
「盲目的に温泉に入っていたら出るかい? 例えばロボトミー手術で……」
「何が言いたいんだ」
「つまりだ、温泉に入る目的というものに縛られて、あ、砂糖いるかい?」
「入れてくれ」
「いくつ」
「四個だ」
「つまりだ、目的が人を縛るってことさ。歩いている人は、目的のために止まれない。目的を凌駕する目的が生まれない限り止れないんだ」
「なるほど、しかしその目的の選択に自由があるんじゃないのか」
「違うね。」
「なぜ」
「一味は?」
「入れてくれ」
「ミルクも?」
「ああ」
「君は全部入れるんだな」
「だって、君が入れたがるんだろう」
「まあ、つまりだ、目的無しで生きることができない以上、人は目的に縛られてしまうんだ」
「だから、不自由ってことかい」
「バニラエッセンス」
「入れてくれ」
「そうさ、人は自由に生きているフリをしているだけだ。人は本当に自由にはなれない。どこまでいっても奴隷さ。」
「おもしろくないことを言うな」
「まあそういうな、奴隷には奴隷の娯楽がある」
「ふん」
「ところでどうだい、シチューは美味くできたかい」
「失敗だ」
「どうして」
「バニラエッセンスがとどめになった」
「そうか。そりゃ悪いことをした」
「一味が浮かんで綺麗だ。見て楽しむシチューも悪くは無いよ」
「味わえなきゃ無意味さ、どうせならこのうんこでもぶちこんでやればよかったかな」
「ずっと持ってたのか」

2006年02月28日 20:05