「人は自由だと思うかい」
「人は自由さ」
「どうして」
「僕は今自由に生きて、自由に君と喋ってる。
僕に不自由さがあるかい?」
「確かに君は今自由だ、だからといって人が自由とは限らない」
「不自由そうな人はいるが、それだって自由だ」
「温泉には入る?」
「たまにね」
「自由に?」
「わからない」
「間違いなく、温泉に入っているときは、例えばだが」
「何がいいたいんだ」
「不自由ってとさ」
「温泉が?」
「君がさ」
「どうして」
「温泉に入っているとき、温泉から出れないだろう?」
「そりゃそうさ、温泉に入っているんだもの」
「なぜでない?」
「寒いからさ」
「じゃあ出ても寒くない用意がしてあったら?」
「わからない。出ないかも」
「なぜ?」
「なぜって。それは温泉に目的があって入っているから」
「盲目的に温泉に入っていたら出るかい? 例えばロボトミー手術で……」
「何が言いたいんだ」
「つまりだ、温泉に入る目的というものに縛られて、あ、砂糖いるかい?」
「入れてくれ」
「いくつ」
「四個だ」
「つまりだ、目的が人を縛るってことさ。歩いている人は、目的のために止まれない。目的を凌駕する目的が生まれない限り止れないんだ」
「なるほど、しかしその目的の選択に自由があるんじゃないのか」
「違うね。」
「なぜ」
「一味は?」
「入れてくれ」
「ミルクも?」
「ああ」
「君は全部入れるんだな」
「だって、君が入れたがるんだろう」
「まあ、つまりだ、目的無しで生きることができない以上、人は目的に縛られてしまうんだ」
「だから、不自由ってことかい」
「バニラエッセンス」
「入れてくれ」
「そうさ、人は自由に生きているフリをしているだけだ。人は本当に自由にはなれない。どこまでいっても奴隷さ。」
「おもしろくないことを言うな」
「まあそういうな、奴隷には奴隷の娯楽がある」
「ふん」
「ところでどうだい、シチューは美味くできたかい」
「失敗だ」
「どうして」
「バニラエッセンスがとどめになった」
「そうか。そりゃ悪いことをした」
「一味が浮かんで綺麗だ。見て楽しむシチューも悪くは無いよ」
「味わえなきゃ無意味さ、どうせならこのうんこでもぶちこんでやればよかったかな」
「ずっと持ってたのか」
2006年02月28日 20:05