■チェル野ブイ美6

「テニスの放射能」第六話

「なんなんですか部長、あたしなんかに……」
「テニス部には、入らないの?」
「え、だって、あたし、負けちゃったし、それに、才能もないし」
「そう……あなたを勧誘しに来たのだけど、見込み違いだったようね」
「ど、どうして、どうしてあたしなんか!」
「あなたのその額の傷」
「あ、これは、その、うっかり強化ガラスにパチキを……」
「ふふ、嘘ね。それは明らかに動物の爪あと……そして服の上からでもわかる、背筋の異常な発達……
この夏休み、そうとう訓練したみたいね」
「は、いや、これは、あの……」
「したいんでしょう? テニスが」
「いえ……」
「悔しいんでしょう? 負けたのが」
「……」
「勝ちたいんでしょう? 便津に!」
「………」
「……素直になれないと、また後悔するわよ。でもまあ、無理にとは言わないわ。やる気のないものなんて必要ないのだから「やります!!」
「私、テニスがしたいです! 誰にも負けたくない! 便津さんにも、部長にも! でも……」
「でも?」
「一つ、条件を出してください。もう一度だけ便津さんと勝負して、そして、もし勝てたら、私を入部させてください」
「いいのかしらそんな条件を出して、もし負けたらもう二度と」
「負けません!」
「!!ッ」
「ブイ美のブイは、Victoryのブイですから!」
「ふふ……おもしろい子。いいわ、やらせてあげましょう!」
「ありがとうございます!」
「お礼なんて良いのよ。それより早く行かないと二学期終わっちゃうわよ?」
「あっ! いっけない!」

2006年04月15日 15:14