虫。
ゴキブリがよく出る。夏の風物詩といえばカリブの海賊とゴキブリなわけでそのうち一方が我が家で毎日開催されていることの贅沢さは身に余るほど理解しており夜な夜な「分不相応! 分不相応!」と言いながらエレクトリカルにパレードするゴキブリに鉄槌を下している。
しかしそんなことで別に不快に思ったり不便に感じたりすることはない。むしろいまや彼らは僕の家の住人として完全に居心地を確保しているのだ。彼らは台所と水回り、僕はベッドとパソコン回り。完璧なまでのルームシェアリングにいよいよアーバンプレジデントだななんて思いつつ、ゴキブリとの同棲生活を楽しんでいるのだけども最近、去年から置きっぱなしのゴキブリホイホイにやたらゴキブリが捕まる。
自慢じゃないがコンロ回りの掃除なんてものは日本が沈没するとき一緒に水洗いすりゃあいいもので、物心ついたときからほったらかし。そのためあの辺は油、食物片が散乱し放題とまさにゴキブリにとってはまさにプロミスランド、弥勒のマメさがコンロにまで及んだ結果である。しかし。しかしだ。にもかかわらずゴキブリホイホイに引っかかるとはどういうことだろうか。食物は足りているはず、ゴキブリホイホイの放つ誘引香などより数倍グラマーな匂いを三角コーナーが放っているはず。触角も持たない僕がそういうんだから間違いない。
とはいえゴキブリに謙虚さを求めた僕にも責任はあるのかもしれない。いまさら「少しは遠慮しろ」などとは口が裂けても言えまい。「コンロの回りにある食物カスで充分だろ」そんなことを言う権利もないのだ。女に貢ぎ続ける男の気持ちがなんとなくわかった気がする、それが習慣となった今、習慣の破棄は恐怖なのだ。今後もこの住み分けを続けるつもりなら僕のやることは一つ、さらに食物を与えることしかできない、ため息をつきながらスーパーで買ってきたダンゴをたっぷり撒く。これならきっと満足する、なんせ一度で二度効くらしいから。
2006年07月16日 21:56