■森口博彦

財布を失くした。

余りにも一瞬の出来事に世界がそこだけスクラップされたかのような錯覚を覚える。財布なんてものは肌身離さず持っているものでありこれを失くすイコールそいつの名を冠したワインが造られるほどマヌケ、というのは毎年のサミットでの結論だが全く、僕は今日まさにそのマヌケを体験した。

普段はバッグに入れているため、太陽ががんばっても北風ががんばっても財布が外に零れ落ちるなんてことはありえるはずのないこの状況下で、ともかくも財布は何らかの力が働いて落下した。いや、落下したという固定観念がそもそも間違っているのではないか? 異性人が牛のサンプルを採取するのはキャトルミューティレーションとして知られている事実だが、もうロースもタンもキャトり飽きたはず。ならば次に狙うのは何だろうか?

人間の文化は貨幣文化に基礎られているといって過言ではない。文化の礎たる貨幣に異性人が興味を持つのも無理はないのだ。不幸にも地球侵略の片棒に弁当をぶらさげて上京し、それを地元の天才中学生に大罵倒されさらに母親をも馬鹿にされたから文太は怒った。棒をがんがん振り回し「謝れ! 謝れええ!」と叫ぶ文太のワイルドさに惚れたクラス一のマドンナは、淡い想いを込めたキャデラックを文太にぶつけ、その日から文太の棒の先には弁当、そしてもう片方にはマドンナがうっとりぶら下がっておったそうな、と、とりあえず自分のマヌケ話を一刀猥断にしてみたところで僕の自虐シアンはハイスコアを記録したままバグ止まり、ハハハ、田舎物は金の次にプライドも失くすんだな「何だっとぉ!?」

文太は止められない。

2006年08月09日 00:07