湯沸かし器の調子がおかしい。
この季節ともなると汗腺から汗以外のものも噴出さずにはいられないわけで、そのどろどろした液体を放っておくといずれは僕の形になり一人歩きしだすためこまめなシャワーは欠かせないのだが、ここんところずっと湯沸かし器の調子が優れない。
浴びている最中、急に冷水を噴出したかと思うと今度は中央区を六度蒸発させる勢いの熱湯を出す。明らかに湯沸かせてないのはまだしもとしてその後熱湯を浴びせるのはどういうアメと鞭だ。僕をコシのある太麺にでも仕上げたいのだろうか。夏だから冷水はまあ許せるとして、その後の帳尻合わせ湯は本当に勘弁していただきたい。この温度差はストレスに弱いウサギぐらいなら殺せるし、メロスならセリヌンティウスを諦めてセガワールドに行く。
しかし壊れるなら壊れるで警報が鳴るとか近くを飛んでた鳥が急に落ちるとかしてくれればいいものを、見た目には全く壊れた様子の無いことが腹立たしい。明らかにガス湯沸し器にガス湯沸す気が見られない。盆休みだからって本来の仕事を忘れてもらっては困る。常にというわけではないんだから、シャワーを浴びているときぐらいもっとガス湯沸かす気を出してくれ
「ガス、あんた、湯沸す気……?」
「ああ」
「……ガス、あんたの体はもう湯沸せる状態じゃないんだよ! それ以上やったらもう二度と」
「パロマ、俺気づいたんだ。俺の居場所ってやつに」
「居場所なんて、そんなもん、そんなもんのために、あんた!」
「まあ見てろって、俺は湯沸かし器だぜ? 俺に沸かせない湯なんて……!」
「ガス! やめなよ! ガスぅう!」
「は……はは、どうだい、見事な湯だろう、な、パロマ……」
「馬鹿! ガス、あんたホントに大馬鹿だよ……ガス? ちょっと……ガス!」
冷たっ。
2006年08月13日 10:37