■シャア少佐新春シャンソンショー

ゼミ合宿という名の。

ダンテがフリーパスをケチったために見そびれた地獄の一つとしてゼミ合宿が挙げられる。卒論の草稿を五十枚書いてきて、さらにそれを皆の前で発表し検討するというこの地獄は前世で他人から借りた漫画にポテチの油しみをつけたものが落ちていく。草稿を仕上げるまで地獄から這い上がることはかなわず、またその題材は難解を極めた日本文学ばかり。意を決して草稿に取り掛かろうとすればたちまち鬼がガンダムのDVD-BOXを持ってきて誘惑する。よしんばその誘惑を振り切ったとしても、気づけば桃鉄の設定年数が99年にされており多くの罪人たちは草稿を仕上げることなく永劫の苦しみに喘ぎ続けるという。

そういった会合に僕は赴かねばならない。仕上げておくべき草稿は未だにタイトルさえ決まっていない。ここは現世だ鬼はいない。しかし草稿は終わっていない。人は放っておくと堕落の方向へ転げ落ちていく、この精神の自由落下は「知恵」が悪魔によって与えられ「娯楽」が悪魔によって喚起されたものである故か、それとも神の誘導か。とにもかくにも「努力」が続かない。どれだけ鳴り物をぶらさげて連載させても読者アンケートがぶっちぎりの最下位で連載3ページ目にして努力が打ち切られるこの三日クレリック。これをどうにかしなければ! 変わらなければ! まずこの決意が三日で変色する。

そんなことを言っていても草稿は仕上がらない。最早こうなれば合宿の会場となっている場所を炎上させ、少しでも日を延ばさせる他手段が無いか。そうだ、人は火を使うことで闇を切り開いて来たではないか! 火が、悪魔によって与えられたものであっても、僕はそれを手にとって未来を照らす。希望の火を、燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ、ガンダム。

君よ。

2006年09月09日 13:52