■オート馬

教習所。

教習所に行きだしてからというもの、日記に書かれるほとんどが教習所での出来事だというこの事実。いかに僕の人生が起伏に乏しいものかを表してしまっているようで非常に遺憾であるが、そんなことで負けてはいられない。このマラソンは僕が免許を取得するまで続けられるのだ。

物事は全て形から、あるいは知識から、下準備をちゃんと整えてから望めば予期せぬ事態も難なくコンプリートということで先にしこたま学科教習を受けていたら「学科教習第二段階に進むためには、技能教習の第一段階を終わらせてないと駄目」まさかの足切り。そうやって大人たちは俺達を見た目で判断して! 技能教習が何だ! 知識がなければ車だって作れないし、何より理論抜きでの運転では帰りのエネルギーがすぐに尽きて過去のドクに頼らないといけなくなるし、デロリアンは隠さないといけなくなるんだ! あまりの仕打ちに酒場でくだを巻いていると身の丈八尺はあろうかという偉丈夫が豊かな髭をなびかせながら隣に座る。手には「教習ガイド」。

同じ志を持つ者、ということで我々はすぐに意気投合し飲み明かしていると今度は黄不動さもあらんといった大丈夫が肩に進入禁止の標識を担ぎながら入ってきた。ごぶごぶと酒を飲む彼に声をかけると、同じく教習所の暴政に憤る同志だという。等しく血の涙を流す者、兄弟の契りを結ばん。桃園で杯を交わし誓う。仲間が出来れば心は強い。初めて握るハンドルも、初めて踏み込むアクセルも、赤兎馬で併走する弟の姿を見れば何ら恐ろしいものではなかった。

2006年09月16日 20:31