朝起きると、右足が不可解に痛い。
立つと痛い。体重をかけると痛い。右足でぴょんぴょん飛び跳ねると痛い。万力でくるぶしをギリギリ締め付けても痛い。試しに内側に足首を捻ると、途端に痛覚が一粒一粒立ってこれはもう季節が色あせるくらい痛いヤバいヤバいCry in the Sky.しかし動かないわけにはいかない、とにかくこの日はバイトがある。特に僕のバイトは一度に入る人数が少ない。多くても二人、それにマスターを含めた三人on150という界王拳五十倍が必須項目の死に戦を昼場の忙しいときは展開しないといけない。休むわけにはいかない。
幸いハイカットを履きクツ紐でがっちり固定すると多少痛むながら早歩き程度はこなせるぐらいに復調する。いける。なんてったってあたしはスーパーモデル、今年の秋冬コレクションに身を包んだあたしのキャットウォークを見に、各界から大勢の著名人が来るのだもの……フンッ! 著名人だなんて、ふんぞり返っちゃってさ! 小気味良く揺れるモデルの胸と脚目当てでランウェイにかじりつくしか能のない俗物どもがさっ! けどあたしは違う、あたしはこのランウェイで蝶になるの! 違う長島茂雄の愛称じゃなくてパピヨンの方の、あ痛いッ! これは……! 画鋲! さてはあたしの才能をねたんだ、初枝の! 初枝の仕業ね! けどあたしはにんなことで負けるわけにはいかないの! ここで諦めるぐらいならゴリラにラリアットされた方がマシよ! って、ちょっと、何やってんの! 冗談に決まってるじゃないこのクソゴリラ!
というわけで後半二時間ぐらいはオリジナルシングル「涙目とガニマタと私」を無差別リリースしながら何故だか屁も止まらない、見るに見かねたお客様が僕の運ぼうとしているコーヒーを取りに来てくれたり、使用済みのおしぼりとかゴミを纏めて渡してくれたりで、なんていうかこの店と客とバイトがまさに一体になったグルーヴ感? バイト? とか? お客様? とか? そういう、なんつうの、ボーダー? みたいなのが? なくなった、て、ま、そういうの? ジョン・レノンが見たら多分さ、こういう世界が理想だったって言うんだと思うよ? そしたら? いつもの口調で、いつもの歩調で、いつもの仕草で俺に近寄ってさ? んで、言うんだ「代わりに運ぼか」
Imagine..
2006年11月13日 21:46