case1
「先生、はっきりおっしゃってください、私の病気は、癌なんでしょうか……!」
「たけしさん、落ち着いてください。ただの風邪です」
「ほ、本当ですか?」
「ええ、しかし一口に風邪といっても色々ありまして」
「はあ」
「たけしさんの風邪は少し珍しい風邪でして、このレントゲンを見てください。ここに影がありますね。」
「はい」
「これが風邪の腫瘍です。まあしかし症状はほとんど風邪と一緒で時折咳や痰に血が混じったりする程度のもので、まあ、癌のようなものだと思っていただいて結構です」
「先生!」
case2
「先生、はっきりおっしゃってください、私、癌なんでしょう?」
「たけしさん、落ち着いてください」
「でも、このレントゲンにははっきりと影が!」
「影があるからといって癌とは限りません、いいですか、順を追って説明しますよ。この部分が胃袋なんですが、これを「妙子」と名づけます」
「妙子?」
「便宜上、妙子と名づけます。妙子には「ゲン」という一人息子がいまして、これが最近不登校なのです」
「いや、あの」
「妙子はゲンを何とか学校へいかそうとしますが、ゲンは自分の部屋から出ようとしません。この、大腸の部分に引きこもってしまうわけですね」
「はあ」
「大腸の部分に引きこもってしまったゲンを大腸ゲンと呼びます」
「大腸ゲン」
「妙子も最近大腸ゲンにうんざりしているので、ご飯を差し入れたりしなくなりました。つまり放っとくと死にます」
「え!」
「大腸ゲンを放っとくと死にます」
「先生!」
case3
「先生、はっきりおっしゃってください、癌だと!」
「たけしさん、落ち着いてください」
「しかしレントゲンにははっきりと影が写ってるじゃないですか!」
「とりあえずこのレントゲンを他人のものだと思ってみましょう」
「他人のもの」
「あなたの嫌いな上司のレントゲンだと思ってみてください、どうです、ぶっさいくでしょう」
「あ、そういわれてみれば」
「見てくださいこの肋骨の辺りなんか大爆笑です」
「あはは、本当だ、肋骨だけに六本あったり!」
「でしょ、マジウケるでしょ! しかもこの大腸のところの影!」
「なんでしょねこの影、黒子ですか? これ黒子ですか? 顔だけじゃなくて体にも黒子ですか!?」
「あっはっはは! これ黒子じゃないんですよ、これ、癌なんですよ!」
「ええー! ちょっとマジですかそれ、かわいそー、超かわいそー」
「あははは! 棒読みじゃないですか! 癌なんですよ? 死ぬんですよ?」
「いい気味だ、あははは!」
「いい気味とはなんですか!」
「は、え」
「人の命が、消えようとしているんですよ、それをあなた、いい気味はないでしょう!」
「あ、すいません、はい」
「もっとまじめに考えてください、自分の体のことなんですよ!?」
「先生!?」
case4
「癌だろ!?」
「落ち着け」
「だって影が!」
「落ち着いてよく見てください、少しレントゲンがぶれてるでしょう」
「あ、本当だ」
「こういっては何ですが、撮るのに失敗してしまいまして」
「あ、じゃあこの影はそのせいなんですね」
「いや、この影のでかさにびっくりして失敗したんですけど」
「ちょっと!」
「こんなひどいの見たこと無くてね」
「先生! それってやっぱり!」
「大丈夫です。時にたけしさん、奥さんの写真などお持ちですか?」
「あ、妻のなら、あの、恥ずかしいんですけど、プリクラなら」
「あ、これは、あー、素敵な奥さんじゃないですか、ねえ」
「いや、ははは」
「いや、本当に、綺麗だし、大事にしないと駄目ですよ?」
「ええ、それはもう」
「じゃ、プリクラはこの癌のとこ張っときましょうね」
「先生! 今、癌って!」
「癌じゃないでしょう、奥さんのプリクラですよこれは!」
「癌に張ったんでしょプリクラ!」
「あなた自分の妻を癌呼ばわりか! そんなだから癌になるんだ!」
「やっぱ癌じゃねーか!」
2006年11月04日 21:16