さわやかもも水。
北朝鮮と核戦争になったとき困らないよう非常清涼飲料水としてさわやかもも水を買った。コンビニでジュースを買うのがあまりにも久しぶりだったのでテンションが上がってしまい、レジ横おでん鍋の空いてるスペースに拳を突っ込んで「どれでも七十円です! どれでも七十円です!」と絶叫、近づいてきた奴に熱々のげんこつを食らわせるという大技を店員に止められた。
さわやかもも水。さぞかしさわやかなもも水なんだろうと浮かれる気分で地殻がえぐれるくらいスキップしながら家に帰り、開口一番もも水を流し込む。ごくりごくりとリズムが鳴ってもも水がほてった体に流れ込んでくる。
冷たい。
しかし、さわやかではない。何故だ。さわやかもも水を飲んでいるはずなのにさわやかさが一向にこみ上げてこない。これは騙されたのか、僕はあの店員にまんまとしてやられたのだろうか。やはりあの時、止められたとはいえ強引にでも僕のメリケンがんもをぶち込んでおけば、いや、今からでも間に合う! おでんつゆを買いに走ろうとする僕の足に、さわやかもも水が当たる。
ひんやりとした感覚が、末端から中枢へ集まってくる。恐る恐るさわやかもも水に触れてみる。冷たい。底から冷えるような冷たさがある。僕はさわやかもも水をたまらず抱きしめた。きんりんきんりんと耳の後ろがとがっていく様な冷たさが体中を駆け巡る。これか、そうか。僕は、てっきり飲んだ者がさわやかになるものだと思い、彼自身のさわやかさを忘れていたんだ。こんなことで彼からさわやかさを感じれる筈がないじゃないか。そして一心不乱にもも水を抱きしめてYes,打ち明けてBoy,してみせてTonight,今夜二人で秘密の熱交換。分かり合えた、ようやく僕はもも水と分かり合えた! 今ならきっと、本当のさわやかもも水を理解できる気がする。コップに注がれるもも水は、心なしかさっきよりピーチ……一気呵成にもも水を流し込み、ごくりごくりとリズムが鳴って
ぬるい。
2006年11月10日 22:34