■ラブミーっつってんだ

「俺ね、ちょいと悩んでることがあってさ」
「ほう」
「あのー最近ね、どうもね。なんていうか、距離おかれてるっていうか、なんか邪魔者扱いされてる気がするのよ」
「いや気のせいだと思うよそんなの」
「いや、例えばお前とかさ、俺のこと相当邪魔だと思ってるでしょ」
「いやそんなことないよ」
「いないほうがいいと思ってんでしょ」
「そんなことないって」
「俺がいない方が、彼女とデートしやすいとか思ってんだろ!」
「そりゃそうだよ。何でお前二人の甘いひとときに相席してんだ」
「もうそういうのが最近ね、ホント辛くって」
「いやデートに割り込まれたら邪魔だけど、それ以外でそんな風に思ったことないよ」
「嘘つけよもー! いやー! もういやー!」
「扱いづれー」
「じゃあ例えばさ、例えばよ」
「なに」
「俺と彼女が溺れてたら、どっち助ける?」
「それは、彼女かな」
「ほらー! やっぱりほらー!」
「だって仕方ないじゃん俺の彼女泳げないから」
「じゃあじゃあ、彼女が浮き輪持ってたとしたら」
「何で浮き輪ついてて溺れてんだよ」
「どっち助ける?」
「彼女かな」
「いやーん! もういやーん!」
「いや彼女は無理だって、お前では間違いなく彼女には勝てないって。別のものにしろよ」
「うーん、じゃあ、何、お前食べ物で何が好き?」
「食べ物で何が好き?」
「うん、あ、俺以外でね」
「お前に食欲を感じたことはないが、えーと、ブリの照り焼きとか」
「ブリの照り焼き、よし、じゃあもし俺とブリの照り焼きが溺れてたとしたら」
「そしたらお前だよ」
「マジで!?」
「うんもう、ブリ照りが溺れてるイメージが沸かないし」
「え、え、でもブリの照り焼きだよ?」
「うんわかってるよ」
「ブリの照り焼きがお前の彼女の重みで沈んでるんだよ?」
「そしたらブリだわ」
「ほらー! ちょっと気を許したあたいのうつけ!」
「いや、それだと結果的に彼女が溺れてるからだよ。ブリ照りだけが溺れてたらお前助けるよ」
「ブリ照りが溺れてるなんて状況、意味わかんねーだろ」
「ブリ照りが俺の彼女の重みで沈んでる状況の意味を教えてくれよ」
「俺はどうせ、ブリ照り以上恋人未満だよ!」
「大抵の人類はそうだと思うけど」
「もういいわ、諦める」
「何を」
「お前の彼女になるのを」
「今すげーお前と距離を置きたくなった」

2006年11月24日 14:56