■ドリーム腐れ

寝癖。

最近寝癖の野郎が調子に乗り始めた。今朝起きると前髪の右半分が上にハネ、左半分が横にハネていた。何が悲しくて髪の毛で起きた時間を表現しなくてはならないのかと、九時ちょうどをお知らせする己のSEIKOちゃんカットを泣きながらUNOでスタイリング。今まではせいぜい髪がちょこっとハネている、だった程度のものがまさかの大学デビュー、四年目にして頭上から春の息吹。

とはいえ、前髪が寝癖でもって起床時刻をお知らせするのだとわかれば、起きる時間を八時二十分にすれば対処できるし部位も前髪だけなのでそこまで大した問題でもない。問題なのは、これと同レベルのブっ頓狂な寝癖が様々なバリエーションでもって毎朝僕の枕元に届けられているということだ。前髪が時計になったかと思えば、揉み上げが両方同じ高さまで捲れ上がっていたり前髪が額に対し垂直に伸びその先にモズが餌を刺していたりある時など髪の毛が固まって電球の形になっていたので「とうとう閃いちまった!」と友人に己の寝癖を写メールにしたため送ったところ「殺されたくなかったら死ね」というふつおたを頂いたり。

もうこうなってくると寝癖は不可避の事件なのではないかという気さえしてくる。これはもう運命なのだ。因果なのだ。だとすれば抗うだけ時間の無駄である、まずは寝癖を受け入れるところから始めねばならない。常に寝癖とともに。しかし寝癖だけでは不自然なので、パジャマと枕とスリッパとよだれを標準装備で歩くことにしよう。これならただのウォーキングドリーマー、この世はあぶくのような夢なのだ、それを寝癖という技法でもって表現する歩く前衛芸術。しかし天才はいつの世も理解されにくいものできっと僕を非難する人間も出てくるだろう「パジャマで歩いてるよあいつ!」「スリッパ片方しか履いてねーじゃん!」「枕の内側から血の染みが!」そんな野暮には、その場で狸寝入りだ。

2006年11月25日 22:32