■習作2にぎり

おにぎり。

おにぎり、ってなんてシンプルな名前だろう。
これほどまでにそのまんまな名前がつけられているものも少ないのではないか。

米をにぎって作ったものだから「おにぎり」って、シンプルにも程がある。犬にだって「カニス・ファミリアリス」なんていう学名がついているのだ。犬のくせに超かっこいいじゃないか「カニス・ファミリアリス」。

道端でいきなり「くらえ! カニス・ファミリアリース!」って叫ばれたら絶対ムチを使った必殺技が飛んでくるって思うだろ。実際は胸ポケットからチワワが顔を出すんだけど。

なのに米をにぎったから「おにぎり」て。

名付け親はよっぽどシンプルなものが好きだったのだろうか。
ユニクロで色違いのジャージを何着も買う人だったんだろうか。
だからってここまでストレートな名前はどうだろう。余りにも直球過ぎやしないか。
逆立ちしながら縮毛矯正したってこんなにストレートにはならない。

ここまで不自然にシンプルな名前だと、何か別の目的があるんじゃないかと思ってしまう。
そう、きっと、おにぎりを作っている最中に「咄嗟に名前を言わなければいけない必要性」があったんだ。本来は全然別の目的でおにぎりを作っていたのに、急に誰かに見られて

「何つくってるの?」
「え、あ、えーと、お、おにぎりだよ! おにぎり!」
「おにぎり? 確かににぎってるけど」
「う、うん! だから『おにぎり』! ね、シンプルで良い名前でしょ!」
みたいなことを口走っちゃったんだろう。
上下ユニクロのジャージで口走っちゃったんだろう。

じゃあ一体、おにぎりの本来の目的は何か?
おにぎりの「中に具を入れる」「最後に海苔を巻く」という特徴から考えられることは一つ、そう、おにぎりは「財布」だったのだ。そう、「財布」だ。中に入れる具は「小銭」 外に巻く海苔は「お札」と考えれば全てのつじつまが合う!

うん、合う!

きっと最初に見られた人は、へそくりをおにぎりにして隠そうとしたんだろう。だからごまかさなければいけなかったのだ。

たった一人のへそくりマダムのせいで、今ではおにぎりは完全に「おにぎり」として浸透してしまったけれど、これを「財布」として考えれば非常に効率の良いものだということがわかる。
大きさは自分で調整できるし軽いので、持ち運びにも便利だ。万が一カツアゲされても「お弁当だ」と言い張れば「お弁当なら仕方ねえ」ってなるだろうし、もしお金を使ってしまったなら食べてしまえば荷物にもならない! さらに驚くべきはその収納性。おにぎりの中には、五百円玉が四つは入るし、外側にだって一万円札を二枚は巻き付けることが出来る。

つまりおにぎり一個=500×4 + 20000=22000円、おお。すごい、すごいぞこれは!
コンビニに行けばおにぎり一個でおにぎりが二百二十個も買える!

2007年03月30日 15:33