「バッター、井崎くんに変わりまして、竹田くん」
(竹田……? 聞いたこと無いやつだな。こんな場面で出すなんて、よほどの隠し玉なのかな)
「とうとう俺の出番が来たようだな……よう、久しぶりだな。飛鳥 一球!」
(俺、長谷川だけど)
「あの日以来、俺はお前の球を打つためだけにバットを振ってきた……!」
(マジ誰だろうこの人)
「この左目の傷! 忘れたとは言わせねえぜ!」
(忘れたって言いてえー)
「さあ、投げな! 俺に打たれる勇気があるならな!」
(よく喋る人だな、まあいいや)
ずばん!
ットライーック!
「見えなかった、だと。この俺が! 貴様、あの球を完成させたというのか!」
(フォークだけど)
「噂には聞いていたが、これがお前の『ステルス・タイガー』か!」
(勝手に名前つけられた)
「しかし残念だったな! 貴様のその球、俺はすでに見切ったぜ!」
(見えなかった、って言ってたよな)
「さあもう一度投げてみろ! 貴様の『ステルス・タイガー』を!」
(これからフォーク投げるたびに言われんのかな、やだな。
普通に三振とっても『出たー! ステルス・タイガーだ!』とか、すげー恥ずかしいな)
「いくら見えない球とは言え、実体がなくなっているわけではない。そう、例えばハエの羽は飛んでいるとき、怖ろしい速度で動いているため肉眼では見えなくなっているという。この球もそのハエの羽と同じ原理によって、高速でブレて落ちる変則ナックルだとしたら……」
(なんかすげー喋ってる。気持ち悪いからフォーク以外投げよ)
ずばん!
ットライーク・ツー!
「何! これは!」
(あ、なんか怒らした)
「審判、あんたには、いや、ここの球場にいる全員が見えちゃいないだろうが、俺の目は誤魔化せねえ……! 貴様、『白龍衝』まで会得していたのか!」
(カーブだけど)
「最初の『ステルス・タイガー』は撒き餌だったってわけだ……フフフ……クックッ、ファーハッハッハッハ! 楽しませてくれるぜ、飛鳥一球!」
(長谷川です)
「ならば俺も本気を出そう! 六時間山にこもって編み出した必殺技!」
(飽き性なのね)
「『竜虎心眼打』」
(うわ、あいつ)
「何! アイツ、目隠ししてしまったぞ! あれでは見えるはずがない!」
(自分で言ってるよ)
「フン! しかし、心の目はバッチリ開いているぜ! さあ飛鳥! 俺を楽しませてくれ! そして俺がお前の球を打ち
ずばん!
ットライーック! バッターアウッ!
「……なん、だと……」
(悪いことしたかな)
「ククク! おもしれえ! 負けたってのに、ワクワクしているぜ! おい! 飛鳥!」
(はい)
「今日は負けたがな、今度はそう上手くはいかねえぜ? 覚えておくんだな! 貴様をもっとも手こずらせた男の名を!」
(凡退ですが)
「そう、この俺、不知火 瞬の名をな!」
(竹田くん)
「あばよ! 飛鳥一球!」
(じゃあね、竹田くん)
2007年03月18日 01:06