■ダッフンド

「いやーあのね。最近こう、街なんかを歩いてて思うのがね。
 街はどんどんオシャレになっていくなと」
「いいことじゃないですか、オシャレになるのは」
「いいことですかね。僕、あの、オシャレって凄い駄目なんですよ」
「何でですか」
「いや何か腹立つでしょ」
「腹立てるのはおかしいでしょ」
「いや何かもうイライラするんですよ、なーんかスターバックスとか、ねえ? スタバとかいって」
「それはいいじゃないですか」
「よくないですよ! どうせ「スタバ」って響きがかっこいいからでしょ!?」
「言いにくいから略してるだけだよ
 スターバックス長いからスタバ、って。」
「そしたらオートバックスもオトバって言えよって話ですよ」
「いやいやいや」
「ダックスフンドもダッフンドって言えよ」
「どんな略し方だよ、ダッフンド」
「充分なんですよそれで」
「嫌だろ『この犬の種類何?』って聞いて「ダッフンド!」とか言われたら」
「いいじゃない別に」
「嫌だよ、犬の後ろでチラチラ志村けんが見え隠れするし」
「そんなこと無い、考えすぎだろ」
「ミニチュアダックスフンドだったらミニチュアダッフンドになるんだぞ?」
「いいじゃないですかミニチュアダッフンド」
「よくねえよ」
「ちっちゃい志村もかわいいですよ?」
「やっぱ志村じゃねえか!」
「志村のどこが駄目なんですか!」
「駄目に決まってんだろ、せっかくの可愛い犬が志村だぞ!? ドリフだぞ!?」
「あ! それそれ! オシャレ好きのそういうとこも嫌い!」
「そういうとこ?」
「そう、何か、全部オシャレじゃないと気がすまない、みたいな」
「それはお前考えすぎだって」
「スターバックスみたいな店は店の中も外もそういう空気出てるもん」
「そうかなあ」
「内装がもう腹立つ。椅子とかもなーんか針金をぐにぐにまげて作ったみたいなほそっこいやつ!」
「いや、オシャレじゃないですか」
「そういうのが駄目なんだって、何でもかんでも「オシャレでしょう? オシャレでしょう?」みたいなのが!
 椅子なんてあんなもん座れたら何でもいいんだよ。
 切り株でいいんだよ」
「駄目駄目! 客が全員木こりになっちまう」
「コップとかも、プリングルズの空き箱でいいんだよ!」
「嫌だよ! 何頼んでもあの丸い髭ヅラが笑ってんだろ? 嫌だよ!」
「じゃあお前の好きなバーベキュー味にしとくよ」
「何味でもお断りだ!」
「何でよ、コーヒーとバーベキュー味が一緒に楽しめる」
「洗えー! 洗ってから出せー!
 粉が残ってんじゃねーかバーベキューの粉が! 明らかに不味くなるだろ!」
「じゃあ最初からバーベキューラテを頼めよ」
「ねーよ! なんだバーベキューラテって!」
「バーベキューをまずラッテラテにして」
「何だラッテラテって!
 つーかそれだとバーベキューラテしか飲めねーじゃねーか
 普通のコーヒー飲みたいときはどうすんだよ」
「コーヒー味のプリングルズを持ってくるしか」
「だから洗えー! 何で味つきコップしかねーんだよ!
 そんな店、誰もいかねえよ!」
「勘違いすんなよ」
「何が」
「俺もいかねえよ?」
「お前はいけよ」

2007年04月07日 21:54