■起きてよおとうさん

凝視。

ぎょうし、モノをまじまじと見つめる癖がある。たびたび初対面の人から「眼球でかいねー」と、目玉のオヤジぐらいしか喜ばない褒め言葉を頂いていた僕は、その大きなお目目でもって色んなものをぼーっと見つめる癖がある。

しかも、だいたいそういうときは見つめているものと全く関係のないことを考えてることが多い。
「もしも喫煙席に置いてある灰皿が全部モナカだったら、俺なら気づかず食べちゃってそれから『あっ! 俺灰皿食べちゃった!』つって店員さんに灰皿要求するだろうな。で、もらった灰皿がまたモナカで、しかも中があんこでぎっしりだったら、どうしよう」
とかそういうことを、考えてたりする。

女の子をずーっと見ながら「あー、もし灰皿がモナカだったら」って考えることもある。見られてる女の子は「え! アイツずっと私のこと見てるけど、もしかして私ラヴい?」とか思うかもしれないけど、残念ながら僕の考えてることは、モナカの灰皿だ。

電車に乗っても、まるで坐る気なんて無いのに空席をぼーっと見たりする。

そうするとその空席の両隣に坐ってる人が気をきかせてどいてくれたりするが、それがなんとも気まずい。
別に僕は坐りたくて席を見てたわけじゃないんだ。
でもまるで「坐りたいからちょっと席つめてくれよ……」って意味で見つめてる、と勘違いされてしまう。

僕はもともと坐るつもりがないから坐らない、けどだからといって一度席をつめた人が戻ってくるわけでもない。
僕の目の前で不自然に空いた一人分の席があるだけだ。そうなるとかなり居心地が悪い。「お前坐らねえのかよ!」という視線がビシビシ眉間に刺さってくる。
これは地獄だ。ちょっとした地獄だ。昨日の残り物で出来るお手軽カンタン地獄だ。

ホントなら誰も坐れない半人前の席が、僕の不注意のせいで一人前になってしまうわけだ。
僕がもしその席の母親なら「うちの席が半人前から、一人前になった!」っつって喜んで赤飯でも炊けるし、その炊いた赤飯を空いた席にちょこんと置く事だって出来るけど残念ながらその席は僕と血縁関係にないし、そもそもただの長イスだし。

それにきっと赤飯を置いても誤魔化せない。
「赤飯じゃなくてお前座れよ!」とわざわざ席をつめてくれたOL二人が僕に赤飯をぶつけて僕は大火傷だ。
なんたってアツアツでもっちもちの赤飯だから、もうきっと凄い大火傷をする。
治療費とかも凄いことになる。きっと治療費が百万円とかになって、自分じゃ払えなくなって親に泣きつくだろうけど「もしもしお母さん! オレオレ! 赤飯にぶつけられて火傷したから百万円ちょうだい!」なんていっても「コメコメ詐欺だわ!」と思われ電話を切られてしまうに違いない。

そして僕は大火傷のまま死んでしまうんだ。

話をカンタンにまとめると
灰皿がモナカだったら、って考えてると赤飯をぶつけられて火傷して死ぬ。

みんなも気をつけようよ。ねえ。

2007年04月21日 21:43