■あるある

「ねえねえ、おばあさんおばあさん」
「なんだい? 赤ずきん」
「おばあさんはどうしてそんなに耳が大きいの?」
「お前のかわいい声をたくさん聞くためだよ」
「おばあさんはどうしてそんなに目が大きいの?」
「お前のかわいい顔をしっかり見るためだよ」
「そうなんだ」
「ふふふ、そうなんだよ」
(さあ聞け! 口のこと聞け! 何で大きいの? って聞け! そのときがお前の最後だ!)
「でも私も、おばあさんに負けないくらい耳とか目とか大きいんだよ!」
「あ、え、あ、そうなのかい?
 じゃあ赤ずきんちゃんの耳はどうしてそんなに大きいのかな?」
「それはね、戦場では耳が最重要といっても過言ではないからなの。
 草を踏む音、銃声との距離、敵の息遣い。
 状況を把握するとき、真っ先に使用するのが耳なのよ?」
「は……え、と、じゃあ、どうしてそんなに目が大きいのかい?」
「愚問だな。
 戦場において敵を肉眼で確認、あるいは戦況を把握するのは基本といっていいわ。
 耳で立体的に状況をとらえ、目でその動きを追う。この二つは生き延びるための鍵。
 身体能力や銃の腕前なんてこの能力の前では、赤ん坊のオムツぐらいの効果しかないのよ?

 五感をフルに開くことで、活路を見出すの。そうすれば窮地に陥ることもなくなるわ。
 だんだん相手の断末魔や、相手の血液の温かささえ楽しめるようになるの
 そうなって初めて、私たちレッド・ベレーの一員と、それでも新米だけどね、呼べるわ!」
「そ、そうかい」
「その点おばあさんはすごい! そんなに大きな目と耳があるんですもの!
 きっとおばあさんなら、あのアフガンの、熱砂と爆風と殺戮の地獄でもダンテをおんぶしてスキップで渡れるわね!
 ところでおばあさん、おばあさんの口はどうしてそんなに大きいの?」
「生まれつきです」

2007年04月28日 17:39