■仲間達の想いが勇者のキャパを超える日

「ぐわあー! ぐへぇー!」
「おい大丈夫か魔法使い!」
「へへ……俺はもう駄目だ……」
「喋るな! 傷は浅いぜ!」
「わかるんだよ……俺はもう助からねえ……
 だがせめて勇者よ、これをもっていってくれ……」
「これは! 魔法の紋章!」
「その紋章に込められた魔力が、いつかお前の助け、に、ぐはっ!」
「魔法使いー!」

「クッソー! 魔法使いの無念を晴らすためにも必ず魔王を倒してやる!」

「ぐわあー! げろりー!」
「わー! 大丈夫か武道家!」
「ぐう……俺はもう駄目だ……」
「何言ってんだ、こんなのかすり傷だ!」
「どうやらかすっただけで死ぬ毒が武道家一人分塗ってあったみたいだぜ……」
「なんだって! くそー!」
「俺はここでリタイアだが、これを俺だと思って……」
「これは、お前の大事なダンベルじゃないか!」
「へへ……あばよ……」
「武道家ー!」

「クッソー! 武道家と魔法使いの無念を晴らすためにも!」

「ぐわあー! べろべろー!」
「あらー! 僧侶だいじょぶー!?」
「あたしはもう駄目よ……」
「何言ってんだちょっと漆にかぶれたぐらいで!」
「これをあたしのかわりに……」
「これは! お前の大事にしてた三国志全六十巻じゃないか!」
「必ず、世界に平和を……ガクッ!」
「僧侶ー! ちくしょー魔王め必ず皆のかたきを「ぐわあー! ずぎゃーん!」うわー! 言い終わる前に戦士がー!」
「へへ……もう俺はアレだからこれを俺の代わりに持っていけ……」
「これは! お前の大事にしてた延長コードじゃないか!」
「ぐわあー! わーい!」
「あー! 今度は何故かついてきた三姉妹がー!」
「ふふ……あたしたちの代わりにこれを」
「受け取れないよこんな大量のキーホルダー!」
「ぐわーあーあ!」
「あー! 後援会のみなさまー!」
「我々はもう何かダルいので……これを……」
「段ボール一杯のロール芯を僕に!?」
「ぎゃーす! これを……」
「ノック式ボールペンを二百本も!」
「あひゅー! これを……!」
「豆おかきを10キロだって!」
「よし! これを……」
「きびだんごを今さら!」
「えーと、これ……」
「お前の卒業制作じゃないか!」
「これ……」
「シャワーカーテン!」
「これ」
「残り湯!」
「これ」
「ポストイット!」
「これ」
「クリーニングタグ!」
「……」
「……!」

* * *

「大魔王さま! 大魔王さま!」
「なんだ、騒々しい」
「城に近づくものがいます!」
「なんだと? もしかして勇者か!」
「いえ! 違います!」
「じゃ誰だ!」
「軽トラです!」
「なんで!」
「わかんない!」

2007年05月08日 21:17