「この洞窟に伝説の秘宝が眠っているんだな……!
よし、入るぞ!」
「お待ちなさい」
「誰だ!」
「私はこの島の住人です。
この洞窟に入るのはおやめなさい」
「なぜだ!?」
「この洞窟はとても危険なのです。
今まで何人もの冒険者がここで命を落としました」
「ふっ、はははは! なんだ、そんなことか
俺はトレジャーハンター・J! その程度のこと、既に承知の上で来てるぜ!」
「そうですか、わかりました。
では私も一緒に入りましょう
私はここの島の住人。何かの助けにはなれるでしょう」
「ふん! 勝手にしろ!」
* * *
「さすがに暗いな……」
「ライトとか懐中電灯とかもってきてないんですか
トレジャーハンターのくせに」
「うるさいな。トレジャーハンターは夜目がきくんだよ!」
「じゃあ何で暗いとかいったんですか」
「いいだろ別に!
お前だって夏とか暑いってわかっててても『暑いなー』って言っちゃうだろ」
「ああ、確かに」
「いいから進むぞ!」
「あ、そこ」
「いたっ!
なんだ、罠か!」
「いや、そこ岩が出っ張ってて危ないです、ちょっと右寄りに進んだ方がいいですよ」
「そ、そうか」
「足元気をつけてくださいね。苔ですべりやすくなってますから」
「お、おう」
「あ」
「どうした! 罠か!?」
「こっからちょっとかがんでください。わかりにくいですけど、天井低くなってますから」
「あ、うん」
「あ、そうだ」
「どうした! 怪物か!?」
「ペンダント持ってるでしょ。エメラルドの。龍の彫り物のはいった」
「あ、ああ。
これは親父の形見なんだ。
『龍の眼に導かれしとき、汝の道は安息と平穏を得るだろう』
この謎の言葉とともに親父はこのペンダント俺に託してくれたんだ……!」
「それ貸してください」
「へ?」
「いや、それでID認証できるんで。罠解除できるんで」
「……詳しいな」
「現地民なもんで」
「……やっぱお前帰れ」
「え、なんでですか」
「おもしろくない」
「はあ」
「面白くないんだよ!
なんでお前こんな幻の遺跡にやたら詳しいんだよ!」
「はあ、だって修学旅行とか遠足とかここだったし」
「こちとら命がけの大冒険してきてるんだぞ!?
ここに来る途中だって幻の海獣リヴァイアサンに襲われて死に掛けたりして!」
「ああ、それ鉄の船で来るから駄目なんですよ、金っ気に反応して襲ってくるんで」
「言うなやああ!!
すっごい興ざめなんだってそういうの!」
「ムギムギはまともに戦うとアレですけど、卵は旨いですよ」
「ムギムギってなんだよ!」
「僕らリヴァイアサンのことそう呼んでますよ」
「現地独特の呼び方なんかどーでもいいんだよ!
もうそういうのホントおもしろくないの!
横でネタバレ言われながら映画観てる気分になるの!」
「じゃ僕どうしたらいいんですか」
「もっとこう、うわー! とか、ぎゃー! とかなれよ!
そんでそこを俺が助けたりして
『やっぱり僕は足手まといでしたね』
『そんなことはない! 君も立派な戦士だ!』
みたいなやり取りがあった後、お前のちょっとした機転で
最後の扉が開くみたいな展開が燃えるんだろ-がー!」
「ああ、最後の扉はさっきのペンダントを逆さにして使えば」
「だから言うなやああ!!!」
「あーとにかく、あれですか、僕も少しは盛り上げた方がいいってことですね」
「ま、まあそうだ。ネタバレとかなしで頼むよせめて」
「わかりました」
「……!
む、こんなところに沼が……
洞窟内部に沼とは不自然だな、怪しい……
何か投げ込んでみよう」
ジュッ!
「わ、コンパスが一瞬で溶けた!」
「ふん、やはり罠だったか。きっとこれは硫酸の沼か何かだな
よけていこう」
「う、うわー!」
「何! 壁から無数の槍が!
しまった、二段構えの罠だったんだ!」
「あ、危なかった……!」
「大丈夫か? もっと慎重に進まないと……」
「ぎ、ぎゃー!!!」
「上から巨大な岩が!」
「ふう、紙一重……
う、うわ、うわーああ!」
「なんだと! コヨーテの大群が……!」
「何とか気づかれなかったみたいだー
な、なんだこれはー!!!」
「前方から無数のレーザービームがー!」
「ふーよかった、危機一髪」
「引っかかれやああああああ!」
「へ?」
「何驚きながらも全部よけてんだよお前!
一個ぐらい引っかかれ! 罠に当・た・れ!」
「無理無理、死ぬ死ぬ」
「もういいよもう、もういい!
どうせこの調子だと宝も誰かにもう取られてるだろ!」
「ああ、いや秘宝はありますよ
次の人が来るまでに返してくれれば」
「賞典返還かー!!
もう帰る! 色んなヤツの手垢にまみれた秘宝なんかいるか!」
「あ、ちょっと」
「何だよ!」
「出口こっちですよ」
「ちくしょー!!!」
2007年08月20日 13:29