「はいどーもー。うんこプリッツでーす」
「よろしくお願いします」
「はーい、よろしくお願いしまーす。いやー頑張っていきましょうねえ」
「うん、頑張っていこう
これが、最後かもしれんから」
「いや初っ端から重いな。
最後じゃないですよー、次もありますから、ね」
「わからないだろ、最後じゃないなんて」
「いや、だから」
「この漫才終わったあと、死ぬかもしれないじゃないか!」
「まてまてまて、お客さん引くからそんなこといったら
死ぬわけないだろそんなすぐに」
「わからないだろそんなこと!
今日の帰り道に、道路に飛び出したメンチカツかばってダンプに轢かれるかもしれないじゃないか!」
「どんな死に方だよお前
かばって死ぬ相手ぐらい選べよ」
「じゃあお前はメンチカツを見殺しにしろっていうのかよ!」
「しろって言うよ、全力で言うよ
大体あいつら死んでっからね?
死んだ上にこねこねされて油で揚げられてっからね?」
「要するに一分一秒を大事に生きていこうって、そう言いたいんだよ!」
「重いんだってその心構えが」
「いいか、俺が今から全力でボケるからな
だから、お前も全力でつっこめよ、いいな」
「まあ、うん」
「いやあ衣替えの季節ですね……僕も寒くなってきたから冬服出しましたよ……でも全部……
半袖です! けど! ね!」
「つっこみにくいわアホ
テンション上げるボケじゃねえだろそんなの」
「……さない」
「え?」
「何故、全力を尽くさない!」
「はあ?」
「そんな軽いツッコミじゃない! もっと全力で来いよ!」
「だからそれうっとうしいって」
「殺すつもりでつっこめよ!」
「どんなツッコミだよそれ」
「俺はいつ殺されてもいい覚悟でここにいるんだよ!」
「いや、だから」
「遺書も書いてから来てるんだ!」
「なんでー!?
お前いつも遺書書いてから漫才してんのかよ」
「そうだよ、だから遺書ももうジャンプぐらいの厚さになっている!」
「一枚でいいだろそんなの、何で何枚も書いてんだよ」
「週刊少年遺書だ!」
「誰が読むかアホ
だから死なねえって言ってんだろ」
「言い切れないだろそんなこと!
帰り道に、チキンカツの身代わりに銃で撃たれて死ぬかもしれないだろ!」
「何でさっきから揚げ物ばっか助けようとしてんだよお前は」
「俺は真剣なんだよ! この漫才に真剣なんだ!」
「いや俺も真剣だけど」
「結婚を前提に漫才してるんだよ俺は!」
「えー!?
お断りしますけどー!?」
「わかった、じゃあこう考えよう
俺が人質に取られてて、漫才が受けなかったら俺が死ぬ
こう思えば真剣になれるだろ」
「いや意味がわからねえから」
「よし、やってみよう!」
「やんのかよ」
「はいどーもー うんこプリッツでーす」
「んー! ん、んー!」
「いやーめっきり寒くなってきましたねー」
「んんー! んー!」
「衣替えとかしてますー?」
「んー! ぷはっ、助けてっ、たすっ、助け、んー!」
「いやー冬服とかもう出しましたー?」
「んー! ぷはっ、だっ、出します! 冬服でも何でも出しますっ! だから命だけはー!」
「やっぱやりにくいわ、いい加減にしろ」
2007年09月30日 01:36