■2ターン行動不能

風邪を引いた。

最近寒くなってきたしここのところ忙しかったということもあって疲れも溜まっていたのだろう。朝起きたらノドが痛いし熱っぽいし、立ってるだけで鼻水が滝の如く流れ落ちていくのがわかる。もう住職が見たら「ちょっと修行させて!」って言っちゃうぐらいナイアガラ。

僕はよく多忙と多忙の間に風邪をひくので色々と助かるといえば助かるのだけど、やっぱり風邪は風邪。しんどい。

サマータイムに入った脳を抱えながら寝転び、五万画素程度の意識でベッドの桟をぼうっと見ていた。

意識がぼんやりしているので、ベッドの桟が段々と遠近法のルールを外れだす。まるで巨大な陸橋を見ているような気分になる。

脳が大幅に勘違いしだす、十五型のテレビで東京ドームを見ても「でけえなあ」と思えるのと同じ現象がベッドの桟に起こる。

だんだんベッドの桟がもう完全に一つの観光名所になり、電車が走ってもおかしくない大きさにまで成長し、物好きなカップルがそこを歩きだしたり後ろの彼氏がちょっと揺らしたりして
「もー! やめてよキルケー!」
「あはは! ゴールは怖がりだなあ!」
なんつって会話がなされてるところを後ろから汽笛が聞こえる。
「もう今は廃線になって走ってないはずなのに、汽笛が聞こえる! そういえば聞いたことがあるこの陸橋は呪いの陸橋だって……!」
そして振り返った二人を、人間の手のような形をしたバケモノが彼らを襲う!
「なんだよ汽笛とかの伏線ちゃんと使えよ無能!」
うっせーこっちだって電車の模型とかあったら使ってるけど、今手元に亜鉛サプリしかねえんだよ!
ホラ指だってこう横から見たら新幹線みたいに見えるだろ、爪のところがフロントガラスとしてさ
中指が「のぞみ」薬指が『ひかり』小指が『こだま』で……親指、は、えーと。
「お前新幹線の名前三つしか知らねえんだろ!」
うっせー知ってるっつーの、親指が、えーと、親指が『スティーブ』で人差し指が『ジョブス』だバッキャロー! モワー! モワー!
「なんだよその汽笛」
Macの起動音だよ!
「似てねー!」

風邪である。

2007年10月16日 21:41