■V字日記

ペプシツイストは奇跡だと思う。

ありえないことが派手に起こる、っていうものが奇跡だと思いがちだけど、本当の奇跡っていうのはまさに神の気まぐれ。まっすぐ走ってる車の向きを少し左にずらしてやるとか、それぐらい何気ないことが奇跡で、そのあとどれだけ派手なことが起ころうとそれはもう奇跡じゃなく、奇跡の尻尾を見てるに過ぎない。

だから奇跡は僕らの日常の中にごくごく普通に潜んでいるのだ。その中でも一押しの奇跡がペプシツイストだ。

今まで色んな人がコーラの味を変えようとしてきた。濃くしてみたり薄めてみたりカロリーをゼロにしてみたりブルーベリー入れてみたりヒーロー化してみたり、しかしそのどれもが失敗に終わったといえるだろう。それほど初代コーラは完成されたものだったのだ。すでに完成されたオリジナルに敵うアレンジなど存在しない。ミロのヴィーナスに彫刻刀を入れようと思う人がいるだろうか? うんこより臭いうんこを出そうとする人がいるだろうか?

その中で奇跡が起こった、コーラにレモンを入れるというペプシツイストの発想である。

この組み合わせはまさに奇跡と言えるだろう。ありとあらゆる食材の中で、レモンという天文学的数字分の一! 大抜擢って言葉はこのあとに生まれるべきだったと思う。この大抜擢に比べたら、今までの大抜擢なんか小さじ一抜擢にも満たない。しょぼい。やばい、しょぼい。

もうレモンもびっくりしたと思う「自分スか!?」って。家でキャプテン翼読んでたら巨人にドラフト一位指名されてたようなもんだ。そりゃもう「自分スか!?」だし「野球スか!?」だ。

多分最初に混ぜられた時は緊張したと思う「あ、あの、自分コーラさんと混ぜられることになった、レモンです! えーと、結構しょっぱいヤツとか言われて」「あ、君がレモンくん? まあいいんだけど、アンタのせいでまたマズくなったら一生許さないからね」「は、はいっ!(やっべぇ、やっぱりコーラ姐さんの炭酸キツイぜ……!)」

そんでもうシュッワシュワにされたんだけど、全然レモンが負けてない。キャメラを通してのアピールもさながら、レンズを通しても伝わってくる『個性』それはまるで毒ともいえるぐらいアクの強い『個性』だったけれども、それが逆に良かった。周りの個性を刺激にして、その個性がさらに映え、いまやドラマにバラエティに大活躍。彼女の個性を止められる個性は、向こう十年現れないだろう。

それが柴咲コウという女優である。

2007年11月22日 15:09