■童話「アリとキリギリスとB型」

「うんせっ うんせっ」
「ハハハハ、せいが出るねえアリさん」
「おやキリギリスさん、こんにちは」
「こんにちは。
 君たちはいつもあくせく働いているけれど、それは楽しいのかい?」
「いいえ、でももうすぐ冬が来てしまうので、食べ物を蓄えておかないと……」
「ハハハハ! 冬のことは冬が来たら考えればいいんじゃないかい?
 今は辛い冬のことなど考えず、この美しく色づいた木々に心を傾けていたいね」
「それは楽しそうですね
 でも私たちはそれだと食べ物がなくて凍え死んでしまう……」
「その時は僕が何とかしてあげよう! ハハハハハ!」
「え、ちょっと、何の話? 何の話?」
「あ、いや、えーと」
「俺の話? こないだの学祭のときの俺の話?」
「いや、違うけど。冬に備えて働くアリさんと」
「あー冬っつったらさ、マジ寒くね? 今回マジ寒くね?
 温暖化とか嘘じゃんねー」
「あ、うん。寒いね」
「あ、アリさんアリさん、こないだ池袋いたっしょ?」
「え、いや、いないですけど」
「マジで? 絶対見たと思ったんだけどな、え、マジ? マジいない?」
「はい」
「マジか! あの池袋の駅前に出来たジーザスって店マジでヤバいから今度行ってみ? すっ飛ぶから、マジで
 で、何の話だっけ」
「あの、冬の蓄えの話」
「蓄え? 何? たくあん?」
「蓄えです。
 私たちアリは、冬に備えて食べ物を集めているのです」
「マジで! 週何? 週何で?」
「毎日です。
 そうしなければ冬に凍えて死んでしまうので」
「ハハハ、アリさん、だからそういうのは冬に考えたら
「無いわー!」
「いや、あの、僕まだしゃべっ」
「週七で、シフト満タンでって、マジしんどくないですか!? しんどいでしょ? 辞めた方がいいですって、マジで! ありえないっすもん!」
「いや、でもアリさんはそうしないと凍えて」
「でも週七ですよ週七! ありえないっしょ。キリギリスさんとか週何?」
「いや、僕は別にこれといって」
「だしょ? ホラちょっとアリさん、辞めた方がいいってマジで」
「いやでもアリさんにはアリさんの考えがあるから」
「え、何、俺、ハブ? ハブ一丁いただいている今もしかして?」
「私たちはこれでいいのです。働かないと、死んでしまうので」
「でもそのままだとマジ過労死になって死ぬ確率アップですよ!? たまには休んだ方がよくないすか?
 あ、息抜きしたかったら池袋のジーザスって店行ってみ? マジヤバいから、裏返るから、マジで」
「ま、でも、あのアリさんみたいに働かなくてもいいけど、君も少しは冬に向けて
「え、何、ヒロ? うん、いや、今アリとキリギリスさんと、え? タクもいんの? どこ? ラウンドワン? おっけ、行くわ、んじゃねはーいじゃねー
 ちょっと俺行きますわ、んじゃまたねっ、うぃす! うぃっす!」
「うぃっす」
「何これ! へへへ何このテンション、俺何これ!
 へへへ、またね!」

* * *

「もっしー、もしもっしー」
「はい、どなたでしょう?」
「あのさ、アリさんごめん、ちょっと木の実貸してくんない?
 ちょっとマジキリギリスさんとか死にそうでさ。五個でいいんだあ、五個でいいからさあ」
「あ、はい、わかりました。
 では、これ、持っていってください」
「え、十個も!? いいの!? マジで!?」
「はい」
「ありっす! んじゃもらってきまっす! ほいじゃ!」

「キリギリスさーん! 食べ物もらってきたよー!」
「あ、ありが、とう……」
「五個しかくんなかったっすけどね。まあとりあえず、はいっ」
「五個、か……」
「まあいいじゃないすか、もらえただけでも。あんま贅沢言ったらダメっすよ」
「僕のこと、笑ってただろ……アリさん」
「え? いや、特には聞いてないッスよ」
「そっか……」
「ジーザス行きます?」
「うん……」

2008年01月17日 01:20


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投稿者 test : 2008年01月17日 22:19