■ポッシビリティ

「たーちゃん、そろそろ寝ないと駄目よ、たーちゃん」

ジジジ……ジジ……

「たーちゃん、いつまでテレビ見てるの、たーちゃん!」

ジジジ……ジジ……

「たーちゃん……?
 !!! タクヤ!」
(なんてこと! 息子が、ああ、デッキに入れっぱなしにしてた呪いのビデオを……私の息子が見てしまった……! そうよ、落ち着いて、落ち着きなさい私、こんなときは……まず……

まず鶏肉を一口大に切る。
使う肉は胸肉の方が口当たりが良いけど、カロリーが気になる人は片栗粉を軽くまぶしたササミを湯に軽くくぐらせたものを使おう。こうすることでつるんとして、口当たり、喉ごしが良くなる。

具はお好みで。私はあまり具の多いのが好きではないので、一センチほどに刻んだネギとタマネギのみ。

だし汁、みりん、醤油を7:5:2の割合で混ぜて作った割り下を手鍋に流し入れ、中火にかける。少し煮立って醤油の香ばしい香りがたってきたら鶏肉を入れ、肉に火が通ってきたらネギを入れ弱火にする。

この間に卵を一個溶いておこう。

鶏肉に火が完全に通ったら、溶き卵を半分だけ流し入れ鍋を揺らして全体に回す。少し固まってきたら残りを流し入れ蓋をし、火を止める。

どんぶりにご飯を盛ろう。どんぶりは口が広くないもののほうが盛ったときに美しい。このとき、あれば三つ葉を少し刻んでおく。

蓋をあけ、卵がいい具合に半熟になったらそのまま鍋を傾けてどんぶりに流し入れ、上に三つ葉を乗せて出来上がり……)

「ん、この、醤油の香りの中に鮮烈と刺す三つ葉の香り……醤油が鼻腔にまとわりつく雨雲だとするならば、三つ葉はその雲間から刺す一条の日光……霹靂の中に柔らかさのあるこの匂い……これは!

おかぁーさーん! 親子丼作ってるのー?」
「んふふ~そうよ~?」
(よかった……! ビデオから目を逸らす事に成功したわ!)


一週間後、たーちゃんはビデオの呪いによって現れた貞子に一流の親子丼をふるまった。

2009年07月24日 22:23


それからというもの、夜な夜な飢えた貞子がやってくるようになったとさ!

投稿者 Anonymous : 2009年07月25日 12:32

仲良し!

投稿者 Anonymous : 2009年07月25日 13:52

「親子」丼ってのが、怖すぎます。
夏らしいですが。

投稿者 ジャングルの王者 : 2009年07月25日 21:19