■3キロバトル

砂と闇が支配する荒野の中、蜃気楼のように浮かぶ町影があった。それが今でも人の存在を許すものなのか、それとも以前そうであったことを示すただの墓標なのか。窓は砂に覆われて見えず、扉は堅く閉ざされて開かず。それは外敵から身を守るためであったか、あるいは、もう開く必要の無いためであったか……。

「おーい、誰か、誰かいないか」

私は声を枯らして叫ぶ。旋風巻く砂塵が嫌でも私の叫びを奪っていく。町並みはしんとして沈み、呼びかけに応じる物音すら聞こえない。

「俺は敵じゃない。誰かいないのか。誰か、ホントにいないのか、誰か」

蝶番の外れた酒場のドアがきいと軋み、ぎいと戻る。奥は薄暗く、生き物の気配は無い。カウンターとテーブルには砂が降り積もり、また久しく掃除をされた様子もない。モザイクがかった酒瓶を手に取り振ってみるが、中の液体はとうにその甘美さを蒸発させてしまっているようで、空気のみがゆらりと揺れた。酒瓶を床に落とす。雨粒が屋根を打つような音を立てて、やがて酒瓶は砂塵の仲間入りを果たした。

「誰もいないのか。本当に、本当に誰もいないのか」

カウンターに手をかけ、注文をするような格好で呼びかけてみる。返事はない。
酒場から出る。外も中も似たような景色だ。

「うさぴょん」

声を枯らして叫ぶ。

「うさぴょん、ぴょーん! ぴゅるぴゅる! うさぴょんビーム! ずきゅーんずきゅーん!」

私が残した足跡は、もう風が攫っていったようだ。

「うさぴょんハイパービーム! 説明しよう! うさぴょんハイパービームは、うさぴょんビームの五倍の香辛料と、八倍のメンマをトッピングした当店オススメのビームでありコラーゲンたっぷりの目玉メニューなのである! まとも食らえば五年は若返るといわれているが、うさぴょんハイパービームを撃てる人間は年々減っており、若者離れがうさぴょん産業へ深刻な打撃を与えていることはこのグラフを見てもわかるだろう!」

世界は文字通り暗黒に閉ざされた。

「おっぱい揉ませてくだっさぁ~い!」

今が昼なのか夜なのかすら区別がつかない。

「相対性理論完成させるんでぇ~おっぱい揉ませてくだっさぁ~い! ねぇ~! でっへへぇ、思春期時代のアインシュタインの真似ぇ~!」

それでも喉を振り絞る。

「ちゃんこ出すよ、いい? ちゃんこ出すよ、出しまぁ~す! ちゃんこっ、ちゃんこ出してもいいの!? 二人分出すよ、いいね、出すよ、ちゃんこ、ちゃんこ、これは本居宣長の分だけどいいの? 俺本居クルーの一員だからさ、ちゃんこ出してんの! うん、そうそう五時から森林浴、はーい、じゃあねーちゃんこの素出す! もったいないから! ちゃんこの素出すよ、出しちゃうよ、せぇ~のっ!」

遠雷が聞こえる。

「正解は、救助犬の樽の中にたっぷりめかぶでしたー!

つーまぶーき君が蹴ってるリスがープレミアつーいて五十万(五十万!)
たーめしーてびっくーりすれっちがい通信
そっこなーしぬーまで五十人(五十人!)
らっふれーしあーのうーえに立っつと
パケットつーしんやっすくなる(長老の知恵!)」

がさっ

「!
 誰か! 誰かいるのか! おい! 誰かいるんだろ! 教えてくれ、俺のギャグは面白いのか? ウケてたのか? 頼む! 教えてくれ! 俺の、俺のギャグは!」

遠雷が聞こえる。

2009年08月19日 22:48


夜中に読んだら感動したよ

投稿者 Anonymous : 2009年08月20日 08:56

すんません、ちんこ出すよ、に、見えますた

投稿者 Anonymous : 2009年08月20日 12:49

雷様爆笑の模様

投稿者 蹴りす(靴跡付き)\500,000 : 2009年08月20日 19:52