■好意の作法

休日だったからポケモンスタンプラリーに行ってきた。

あまりの過酷さ死傷者の多さ故に、長く日本での開催が禁止されていたがこの夏、ワックワク☆ドッキドキのポケモン新作映画が公開されるということでキャンペーンの一環として全国の小学生とその保護者の脚に乳酸を溜めようという目論み、それがポケモンスタンプラリー。

無料配布のパンフレットに六つのスタンプを押すだけなのだがスタンプカウンター設置時間が午前九時半から午後四時までという、二十五歳成人男性を全く考慮しないampmになっているため、パンフをもらいはしたものの半ば諦めていた。が、しかし、スタンプを集めればピカチュウサンバイザーがもらえるという情報を耳にし一念発起。前日から入念に準備を進め、今朝十時、スタンプラリーへ男一丁ご出陣。
ただ偏に、ピカチュウサンバイザーのために。

午前十時半―西国分寺

最短六駅で済むとはいえスタンプカウンターは改札の外。乗り降りする運賃を考えると相当な出費になるし、その辺にいるジャリを捕まえ、かば焼きさん太郎握らせてスタンプを押してこさせたとしても手間がかかる上、ジャリが我が軍を裏切るリスクもあるため素直に都区内フリーチケットを買う。

一日だけ、山手線を中心とした都区内の駅に乗り降りし放題で740円という夢のような切符。これを握り締め、まずは西国分寺を出発。

西国分寺→代々木

計画したルートは代々木→目黒→田町→神田→日暮里→巣鴨、ククク、もう既に気づいたとは思うが、この駅を全て線で繋ぐと……ククッ! ダビデの星、六芒星が出来上がる! フハハハ! だがもう遅い! 貴様らがこの日記を呼んでいる頃、儀式は全て終了し、六芒星の中心、すなわち市ヶ谷には邪神アスモデウスがその寧猛な牙を人類に振り下ろしているだろうよ! ハーッハハハハハ!

いざ絶望の一里塚、代々木へ!


午前十一時半―千駄ヶ谷

千駄ヶ谷にピカチュウのスタンプあるんだってー! イエーイ!

千駄ヶ谷のスタンプカウンター。まだ午前中だと言うのに子連れがチラホラ見受けられる。画像からは判別つかないだろうが、俺はまだ朝勃ちが持続している状態だ。
勃起したままスタンプカウンターに向かう。

ピカチュウゲットだぜ!

ピカチュウ にくしょくポケモン

ネズミのような格好をしており、山野に住む。「ピカチュウ、ピカチュウ」というような鳴き声を発し、ピカチュウが軒先で鳴くとその家には二度と子供が生まれなくなるという。回避するためにはピカチュウを捕まえ、尻尾のギザギザしたところをヤスリでこすり「すいませんした」と言わせなければいけない。性格は獰猛で好戦的。素早い身のこなしで顔に飛び掛り、腹にある口で噛み砕こうとしてくる。庄内地方では「ピカ獣」とも呼ばれる。耳の黒い部分は垢であり、舐めると苦いがコーヒーにいれるとうまい。

千駄ヶ谷→秋葉原

戻って山手線に乗りなおすのもなんか面倒なので、そのまま総武線で秋葉原へ。

午前十二時―秋葉原

この駅で押せるスタンプは、シークレットスタンプという特殊なものらしく、千駄ヶ谷以上にジャリジャリしておりノーモア二十五歳の空気が充満していた。

だが年金を払ってない俺に、その程度で潰れるプライドなぞもう無い。

シークレットスタンプゲットだぜ!

ピカチュウ&ギザみみピチュー ひきょうポケモン

ピカチュウの亜種。二種一対のコンビネーションを活かして襲ってくる。ピカチュウが前足で相手の目に砂をかけ、ピチューがギザみみで急所を狙う。ピチューの耳がギザみみなのは、負わせた怪我を治りにくくするためであり、たとえ返り討ちにあったとしても治癒しきらない怪我を残すことで、闇討ちによる復讐を成功させるのだという。ピカチュウとピチューはとても仲良しで、ピカチュウが格ゲーをやってるのを見ると、何も言わずに両替をして投入口にコインを積んでくれるほどである。

秋葉原→浜松町

何だよ秋葉原にピカチュウスタンプあるんなら、やっぱ代々木でスタンプ押してくればよかった。おかげでダビデの星計画が大幅に狂ってしまった。しかしまだ俺は諦めてはいない。千駄ヶ谷→秋葉原→浜松町で一つ目の三角形が完成する……!

午後十二時過ぎ―浜松町

フハーハハハハハハ!

ガーハハハハハハハ!

イーブイ あっせんポケモン

バイトも探さないでウダウダしているフリーターに、職を斡旋するポケモン。最初は楽だが時給の悪いバイトばかり紹介し、調子に乗ったフリーターが「もっと金のいいバイトないんすか?」と詰め寄れば、一転して時給は良いがキツくて遠いばかりでなく辞めづらいバイトを紹介する習性を持つ。平日の昼間は連絡がとれない。

浜松町→上野

ダビデの星とかマジめんどくさい。

午後一時―上野

しまった。しくじった。上野はスタンプ駅ではなくゴール駅だった!
ゴール駅は、スタンプが六つ揃ったパンフレットとピカ獣タンホイザーを引き換えるための駅で、スタンプカウンターは設置されていない!

途方に暮れた俺はとりあえず頭を冷やし、今後のプランを練るため上野公園へ。

ピジョン ハトポケモン

サイゴドン&ノットニャース さつまポケモン

とりあえず、このまま山手線を北上していこう。最終ゴール地点を新宿と定めれば、それまでにどこかであと三つスタンプを押せばいいんだから簡単だ。時間もまだたっぷりある。ふむ。

だったら何か、レアっぽいポケモンのスタンプも押しておきたいな。せっかくだし、こう、主役張れるようなカッコイイやつを……、などとパンフレットのポケモン分布図を眺める。有象無象のポケモンが各駅に配置されておりそれはまるで一見ランダム配置のようにみえるが……。
ここで重大な事実に気づく。

都心にいるポケモン、脇役ばっかり。

ピカチュウは除外するとして、映画などで主役やライバルを張る強力なポケモン達は全て郊外に追いやられているのだ。

例えばダークライは千葉、ミュウツーは八王子、ディアルガは大宮、パルキア・ルギア・フリーザーなどの幻ポケモンに至っては全部横浜! 比べて都心はどうだ。原宿にイシツブテ、五反田にキャモメ、日暮里にニャースと来たもんだ! ふざけんな!

そういえば今まで押してきたポケモンも木っ端なものばかりだった……このままではスタンプが全て脇ポケモンで埋まってしまう! カブトムシ取りに山いったはずなのに何か山菜ばっか取って帰ってきたなお前みたいなヤツになる! 

なんとか都区内フリーチケットの圏内でイカしたポケモンはないかと必死に探すと……あった! 一駅だけ! 赤羽! 赤羽には何と新作映画の主人公格ポケモン・アルセウスがいる!

ルートは決まった。京浜東北線で赤羽まで行き、そこから埼京線で新宿に戻る。赤羽までにアルセウス以外のスタンプを押しておけば完璧だ。だがしかし! 日暮里のニャースは嫌だし鶯谷のウソッキーに至ってはお前ただのダジャレじゃねーか! かくなる上は!

上野→田端

午後一時半―田端

ここなら! ここならばきっと!
きっと俺も満足し得る伝説のポケモンが!

ナメてんのか。

田端→赤羽

午後一時半―王子

呼ばれた気がしたので、降りた。

ピジョン はとポケモン

「スタンプラリーとかしてる場合なんすか(笑)?」

スポミー ダメだしポケモン

居酒屋やバーなどで女の子を口説いていると現れるポケモン。口説き文句が陳腐なものであったり、到底それじゃオトせないものだったりすると頭の上に大きな×を作りダメだしをする。スポミーが現れるということは、その時点で結構もうヤバい空気になっているということなので、×を出すまでもなく女の子がまだ九時だというのに「終電が」といって帰ってしまうことが多い。女の子が帰って一人になった後、肩をポンッと叩いてくる習性がある。そのとき逆上してスポミーに殴りかかろうとすると「おおっと! へへっ!」と鳴く。頼んだ唐揚げに勝手にレモンをかけると死ぬ。

王子→赤羽

二時―赤羽

さあ赤羽。結構栄えてる駅な上に、置かれてるスタンプも新作映画主人公のアルセウスということでジャリ度マックス。駅員もそれを察知してか、王子駅の五倍ぐらいの駅員が「走らないでねー」「ちゃんと並んでねー」と、注意を促していた。俺はもちろん走ったりはしないし、ちゃんと列にも並んで待っていたのだけれども、何故か一番見られた。

アルセウス そうぞうポケモン

千本の腕で宇宙を創ったポケモンとして、神話に描かれている。(ゲーム内説明ママ)

まさかの赤羽ビッグバン。

しかしこれでスタンプは六種類揃った。あとはこのパンフレットを胃下垂サンバルカンとやらと交換してくればラリー終了だ!

しかし思ったより早く六種類スタンプが揃ってしまったので時間が余ってしまった。そろそろ朝勃ちも収まりお腹も減ったので赤羽で昼食を取ることにした。ショッピングモール地下のレストラン街でインド料理屋に入る。

ランチで、カレーとナンとドリンクそしてタンドールチキンがつくという結構なボリューム。一応、ブログをやってる身として一般に倣い店員に「お料理の写真取ってもいいですか?」と尋ねると、笑顔で「皆やってる」と言ってくれた。オッケーだと判断したが、裁判にされれば負けるなと思った。
こちらがランチメニュー画像

キーマカレー。見た目に反して割とアッサリとした味付け。

ナン。見た目からはわからないかもしれないが、かなりモチモチしており食べ応えがある。

コールスロー。少しドレッシングが酸っぱかったかな。でもいい箸休め。

ピジョン ほねポケモン

ごちそうさまでした。
お腹も膨れたし新宿へ。

赤羽→新宿

午後三時―新宿

案内に沿ってゴールカウンターに向かうと、完全に疲れきった顔の女子バイトが迎えてくれた。ピカチュウサンバイザーをかぶってはいるものの生気が全くない。三蔵の念仏でサンバイザーがギリギリ頭を締め付けているとでも考えなければ説明がつかないほど顔がやつれてる。

まあ、一日中子供のテンション目の当たりにしてれば仕方ないか、などとひとりごちてパンフレットとサンバイザーを交換してもらう。やったー! サンバイザーとスタンプ帳ゲットだぜ! ゲットだぜー! スタンプ帳! ん、スタ……ンプ帳……?

2009年08月03日 20:11


すっごいわらた。

投稿者 Anonymous : 2009年08月03日 20:32

岩田さんのポケモンスタンプラリー&トークライブツアー(東日本)が始まるということでよろしいですね?

投稿者 Anonymous : 2009年08月03日 20:55

ポケモン遊行の旅がんばってください

投稿者 hallo : 2009年08月03日 21:15

omkr特集レベルのクオリティと面白さ

投稿者 Anonymous : 2009年08月03日 22:51

おもしろい
最近なんか吹っ切れてますね

投稿者 Anonymous : 2009年08月03日 23:19

95種類

投稿者 Anonymous : 2009年08月04日 01:36

はじめてコメントします
私もそのころ新宿にいました
定期かしてあげたかったなぁ

投稿者 A : 2009年08月04日 03:00

さきこされたー

投稿者 Anonymous : 2009年08月04日 03:34

言ってくれれば一緒にまわったのに

投稿者 Anonymous : 2009年08月04日 06:26

よーし、じゃあわたしは今日いってきますネ!

投稿者 Anonymous : 2009年08月04日 07:55

オモコロ特集レベルとか岩田さんけなされてますね。

投稿者 Anonymous : 2009年08月05日 01:59

なんか感動した。やっぱり岩田さんってすごいと思います。

投稿者 Analmouse : 2009年08月05日 02:45

おおきいおにいちゃん、お疲れ様。

投稿者 さいこー : 2009年08月05日 19:26