■エンドレスエイト


「あ、藤崎さんだ。オーイ、藤崎さーん」
「あら、ウィルソンくんじゃない」
「伊藤です。
今日はもう授業終わりなんですか? 藤崎さん」
「そう。
であれば、私と一緒に帰ろうという観念が見え見えよ」
「観念」
「私と並行移動したいという観念が、私の洞察力によって丸裸だわ。
シャツぐらい着せなさい」
「あ、えーと」
「無論、構わないわ」
「あ、うん、帰りましょう」
「ウィルソンくん」
「はい?」
「漫画という文化をご存知かしら」
「あ、うん、好きですよ、漫画」
「私もね、昨今、漫画文化に親しんでいるの」
「へぇ、何読んでるんですか?」
「一つ、群を抜いて面白いものがあったけれど、題名を失念してしまったわ」
「え、面白かったのに忘れちゃうなんて」
「いいえ。これが世に言うド失念というやつね」
「ド忘れですか」
「もう、名前が出掛かって、あのあたりまで来ているのだけれど」
「何がですか」
「このあたりまで迎えに来ているのだけど」
「誰がですか」
「思い出したわ。
 『オモシロ接吻』よ」
「……。
 『イタズラなKiss』ですか、もしかして」
「そう、それ、その『奇抜唇接着沙汰』
 面白かったわ。特にどこが、ということはないのだけど」
「僕は『イタズラなKiss』読んだこと無いですねー少女漫画はあんまり……」
「あら、男根漫画ばかりなの?」
「あんまりそういうジャンル聞いたこと無いです」
「週刊男根ジャンプに連載されているような漫画たちのことね」
「その袋とじから陰毛がハミ出てる感じ、勘弁してください」
「私もいくつか読んだわ」
「あ、何が面白かったですか?」
「そうね。まず『シェンロンスタンプラリー』と」
「『ドラゴンボール』と」
「『こちら葛飾区亀有5丁目34−1』と」
「『こち亀』と」
「『ジョジョのるるぶ逆さ読み』は読んでてワクワクしたわ」
「あ、『ジョジョの奇妙な冒険』僕も読みましたよ! 第何部が好きですか?」
「この私は、第二部が好きよ」
「へぇ~意外だなあ」
「ジョジョセフ・ジョジョースターのような男性は、いいわね」
「ジョジョジョジョになってますが」
「あのような男性は、たまらんのだわ」
「へぇ~僕は三部が好きだな~。承太郎カッコイイから」
「そうね。空条状 承太郎状も、たまらんものがあるわね」
「良く似た何かになってますよ」
「でも私は、ジョジョセフのあの飄々とした感じが好きよ。
 『クソ歌謡』の主人公もやや近い雰囲気があったわね」
「『ろくでなしブルース』は読んだことないなー]」
「最近の、あの『RA-MEN NI UITERU GURUGURU MOYOU NO TOKUTYOUTEKI NA NERIMONO』は、どうも人物像に寄せ集め感があって良くないわね」
「確かに『NARUTO』は昔のほうが面白かった気がしますね
藤崎さんはジャンプ漫画が好きなんですか?」
「いいえ、他誌のものにもいくらか目を通したわ。
 そうね。せっかくだからスポ男根もので言うなら」
「また陰毛が」
「私、野球はわからないのだけど、『人を呼びますよ!』は面白かったわ」
「『タッチ』かぁ~最初の展開が凄いですよね」
「そうね。一卵性の片割れが死亡する場面は『お客様困ります!』の名場面の一つだわ。
同じスポ男根ものだけど『部内最高権力者翼』はいまいち馴染まなかったわね」
「『キャプテン翼』は、絵柄で好み別れちゃうかもしれないですね確かに」
「やはり『エッチ!』には及ばないわ」
「『タッチ』好きなんですね
 結構昔の漫画多いですね。最近の漫画は読まないんですか?」
「読まないという事態にはなっていないわ」
「あ、そうなんですか、何読むんですか?」
「『チェーザレ』」
「あれっ」
「なに?」
「いや。」
「そう。」

2009年08月21日 22:21


×郡を抜いて
○群を抜いて
よくもまぁここまでアイデアが出てくるものですね。
『奇抜唇接着沙汰』が気に入りました。

投稿者 Anonymous : 2009年08月22日 08:08

キリンさんが好きです。
でも週間男根チャンピオンはもっと好きです。

投稿者 少々承太郎(ショジョ) : 2009年08月22日 09:45