■万引きじゃないです、補充ですと言い張る元本棚

「立ち読み。

ってね、あるよね。まあ俺も書店員やるまで立ち読みぐらいいいじゃないか、別に減るものでもなかろう、なかろうて! 武田軍なにするものぞ! ぐらいの勢いで馬入店断られてた時期はあったんだけどもさ、まあ、なんつーの、書店員の立場にたつとやっぱりあんまりいい気分のものでもないのね。

いや立ち読みそれ自体は悪くないよ。それはやってくれて構わない。どうせうちの書店には途中までしか読めないようになってる立ち読み専用のコミックが用意してあって、それ以外は全部コールタールを満遍なくぶっかけた挙句上からきな粉をまぶして「どう見ても美味しそうなお餅……!」カモフラを採用してるので別にそれを読む分にはやってくれて構わない。

でもなんていうかさーたまにいるわけだよ、立ち読みしてたと思ったらそれをおもむろに右ポケットへぎゅっ! と詰め込んだら左ポケットからインコがにゅっ! と顔出して「カイジ!」「おいアイツカイジ盗んでるぞ!」ってなることがさあ、まあそれは極端な例だとしてもビニールを勝手に外したり、飲み物が少しこぼれて染みになっちゃったり、あと背表紙が折れて売り物にならなくなったり。

つまり立ち読みは、それ自体悪いことではないのだけども『万病の元』なわけで、立ち読みしているヤツを無視するわけにはいかないのよ。立ち読みしてるやつって発がん性物資なわけ、僕ら白血球としてはさ横で発がん性物質がアップ始めたらそりゃ見なきゃいけないでしょ、見過ごすことはできないでしょ。屈伸運動ならまだしも、まだしもだよ。指に唾つけて風向き見だしたらもうアウトだね。発ガンする。完全に発ガン徴候だからね、そう、つまり未然に防ぐってのが書店員にとって大事なことであって絶対に立ち読みから目を離しちゃ駄目なの、そう、絶対ね、」
「先輩」
「ん?」
「ライトノベルの棚が無くなってます」
「棚、ごと?」
「棚ごと」
「ごと?」
「ごと」

「ま、こういう風に善行をつんだ棚が人間にしてもらってさ、お礼も言わずにどっか行くってケースもあるけどそれはこの場合関係なくて……」

2009年09月28日 22:56


上田さんはどうなっちゃったんですか?とても心配です

投稿者 Anonymous : 2009年09月29日 22:18

私も…。

投稿者 Anonymous : 2009年09月30日 07:02

ライトノベルの棚というのがきっと、上田さんのことなんだ

投稿者 大T : 2009年09月30日 23:00