■私立アイリス四暗刻女学院

「無い……無いわ……私の当たり牌……どうして?」
「あら、霧ノ宮さん、生きたままのガゼルを貪るハイエナのようにカバンを漁って……どうかいたしまして?」
「え、いや、ふふ、なんでもございませんのよ。少し探し物をしてまして……」
「そう、ならよくってよ。あら、そういえば、本日の学年集会で薔薇ヶ峰様がご挨拶なさるようですわ」
「えっ、薔薇ヶ峰様が……?」
「素晴らしい方よね。学年トップの秀才で、スポーツも万能、まさに我が校の誉れ! はぁ、憧れてしまいますわ……」
「そ、そうですわね……」
(薔薇ヶ峰 綾香……いえ。本名『粗忽山 ペロ美』……まさか、また、アナタが……)

「それでは、生徒代表の挨拶を、薔薇ヶ峰 綾香さんよりしていただきます」
「薔薇ヶ峰さんよ!」
「素敵だわ……」
「なんて気品溢れる……」
「しっ、薔薇ヶ峰さんがご挨拶なされるわ!」

「……ただいまご紹介に預かりました。薔薇ヶ峰 綾香です。皆様、ごきげんよう」

ごきげんよーぅ

「あら、うふふ、少しお声が小さいのではなくて?」

ごきげんよーぅ!

「あら嫌ですわ、まだ実力の三割といったところではなくて?」

ごきげんよーぅ!!

「もう、わかってらっしゃるくせに……そんな声では、ウルトラマンティガは来てくれませんことよ?」

「薔薇ヶ峰様ったら……ごきげんようではティガはいらっしゃらないというのに」
「なんてユーモアあふれるつかみでしょう!」
「さすがは薔薇ヶ峰様ですわ……」
「ホンマや……」

「では……こほん。いきなりこんな話で申し訳ないのだけれど、私、先日ある人物に命を狙われましたの」

ざわ……

「その人物は前方より私にGunを突きつけて参りましたわ。そこは一人通るのが精一杯の狭い路地、前方よりはヒットマン、さらに後方には景色をバックに写真を撮る家族。私、進むも戻るも叶わぬまま、ただただ立ち尽くし、わが天命の儚さを呪いましたの……しかし撃鉄が私の人生の幕を引こうとした、そのとき」

ざわ……?

「私の胸に入ってたコレ……その時たまたまツモっていたイーピンが、私の命を救って下さいましたの!」

「なんということでっしゃろう!」
「奇跡、まさに奇跡だわ!」
「薔薇ヶ峰様の、日頃の行いの賜物ね!」

「そしてこのイーピンは私の当たり牌でもありましたわ……私はこの奇跡を、奇跡の和了を神に深く感謝いたしたましたの!」
(違う……アレは!)

ガタタッ!

「あら、どうしましたの霧ノ宮さん? そんな第一宇宙速度突破、みたいな立ち上がり方をして……」
「薔薇ヶ峰様……そのイーピン、私のロン牌ですわ!」
「え……?」
「まさか……薔薇ヶ峰様が放銃するだなんて……」
「ありえないわ!」
「ホンマやで」
「霧ノ宮さん……だったかしら。このイーピンがアナタのロン牌、ですって? うふ。まあそういうこともあるかもしれませんが、しかしこのイーピンはアナタのロン牌であると同時に、私の上がり牌……で、あれば、私の和了が優先されるのではなくて?」
「ええ、そうね。上がり牌がカブっていたなら、そうですわ。しかしこの場合は違くてよ! なぜなら私の上がり牌は、イーピンではなく、「白」なのだから!」
「え……?」
「ではイーピンでは上がれないのではなくて?」
「あの子、キ印ではなくて?」
「せやなぁ」
「霧ノ宮さん……アナタご自分で何をおっしゃっているか、理解できていて? あなたの上がり牌が『白』ならイーピンでは上がれなくてよ? こんなこと、基本ですわ……」
「ええ、そうね、その牌が本当にイーピンならね!」
「何を言いたいのかしら」
「イーピンだとおっしゃったその牌、もう一度皆の前に掲げてくださいまし」
「……」
「どうしましたの? もう一度、先ほどなさったように掲げてくださいまし! ましれ! ましれよ早く!」
「……これが、どうか、しまして?」
「普通のイーピンではなくて」
「どこから見ても普通の……あ!」
「どうしました?」
「真ん中の柄、アレは……もしかして」
「弾痕?」
「え、ということは……!」
「そう! あの牌は元々イーピンではなく「白」なのよ! それを薔薇ヶ峰様は弾痕がついたのをいいことにイーピンと偽ったのですわ! つまりあのツモ上がりは偽りのツモ上がり!」
「な、なんですって……」
「そしてその白は私のロン牌……薔薇ヶ峰、いえ、粗忽山さん! もう言い逃れはできなくてよ! 私の3900点、今ここで支払ってもらいますわ!」
「わ、私ちょっと気分が……」
「逃げるの! 粗忽山さん!」
「いえ、急に生理が五か月分来ただけよ……そして霧ノ宮さん、あまり調子に乗らないほうがいいわ……あなたとの東場は、まだ始まったばかりでしてよ!」
(まだ諦めてないの……薔薇ヶ峰、ライバルながら天晴れ!)


収拾がつかなくなる前に収拾する。

2009年10月16日 00:55


たぶん、レンガぐらいでかい牌なんだろうな。
遊戯王とウテナを足してカイジとコナンで割った萌え学園麻雀物ですか。
鬼才。

投稿者 アダマウロン : 2009年10月16日 20:39