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■初めての宙

授業で地球のできるまでを習った。

信じられないことかもしれないけれど、昔の地球は路側帯も無い荒れ果てた地形だったらしい。当然ローソンもサンクスもあるわけないし、記録メディアもフロッピーディスクか岩に直接彫るぐらいしかなかった時代だ。そう、三十万円貯まる貯金箱が発明されるもっとずっとずっと昔のお話。地球は巨大な巨大な岩の塊のようなもので、生命など存在しなかったらしい。

しかし公衆電話から指紋が無くなるまでぴあに電話しまくった甲斐もあって、奇跡的に太陽から遠すぎず近すぎないSSS席を予約することに成功。液体の水が存在する太陽系唯一の惑星となり、生命が誕生した。しかしラッキーは続くものではない、そう、その質量が生む重力ゆえ、多くの隕石を惹きつけてしまったのだ。過去地球に衝突した隕石の大きさは、石ころのようなものから直径数百kmに及ぶ巨大なものまで様々だったらしい。

こういうと、なんだか地球が気の毒に思えてくるが火星などからしたら「いいな地球ばっかり、隕石落ちてよ」といった気分だろう。惑星にとってつきあった隕石の数は、ステイタスなのだ。しかも地球は唯一生命のある星「高重力、多水分、有生命」の三拍子そろったイケメン惑星であり隕石からしてみたらいくらでかくても硫酸の雲に覆われたオタクっぽい木星などより、地球と付き合いたいと思うだろう。しかし多くの惑星は地球に辿り着く前に大気圏で燃え尽きてしまう。近寄りがたいオーラがある、と、多くの隕石は地球を敬遠した……

「でしょ?」
「う……う、うん」
「でも、だからってこのままで良いわけ?」
「うん、だって地球さんには月が」
「アレはたまたま周回軌道に乗っただけじゃないの! あんなニキビ面なんかよりあんたの方が絶ッッ対イケてるって!」
「でも……あたし直径が数百キロもあるデブだし…」
「もおー……ほんっとに地球さんのことになると奥手なんだから」
「そうそう、女だったらどーんと体ごとぶつかっていかなきゃ!」
「え、あっ! め、メテ男先輩!」
「まだぐじぐじやってんのか? ほら、いきなよ、きっと受け止めてくれる」
「メテ男先輩……」
「何、駄目だったら、俺が嫁にもらってやるよ!」
「ありがとう……先輩、あたし、やってみる!」
「おう、がんばってな!」

「いいの? メテ男先輩、あの子のこと」
「いいんだ、いいんだよ」
「男って、ほんと、馬鹿ばっかり」
「それが、いいんだよ」
「わかんない」

(ありがとうメテ男先輩……あたし、前に進んでみる。地球さん、太陽系の中で、あたし、あなたが一番好きです! あたしの気持ち、受け止めてください!)

全ての想いを込めて数百キロの隕石が地球にぶつかる。その衝撃で、高さ数十キロという大津波が音速で世界を襲う。しかし津波はあくまでおまけである。数百キロの隕石がぶつかったためめくれあがった地殻が「地殻津波」となって怒涛のように押し寄せてくるのだ。地殻津波によって日本列島は丸ごとめくれ上がり、またその高さは大気圏外にまで達し、さらに、大気圏外にまで上昇した地殻は再度地球の重力に引かれ「二次隕石群」として地球に降り注ぐのだ。

しかし悲劇はこの程度で終わらない。隕石衝突地点には直径四千キロ超の巨大クレーターが発生し衝突地点の温度は6000度にまで上昇。この巨大な熱量は新たな死神を誕生させる、そう、岩石蒸気である。岩をも蒸発させるその温度実に1500度! 岩石蒸気はまたたくまに膨張し、地球全土を覆い海はたゆたう間もなく蒸発、塩の大地へと変化するがそれも束の間、岩石蒸気は「塩さえも蒸発させるのだ」。木々は1500度という規格外の熱量に自然発火し生命は瞬きする間に消滅する。隕石衝突からわずか三時間後、地球はかつての水の惑星からマグマと熱波に覆われた死の惑星へと、姿を変えたのであった。

「あの子ったら、地球さんとアツアツじゃん!」

笑いごとではない。

2006年10月25日 22:45


■ハッポビースディ

誕生日。

先日十月二十一日が、僕の誕生日であり同時に二十二歳の命日になった。誕生日の数だけ僕は僕を殺してきているのだろう。一番思い出に残っている誕生日は十歳の頃である。九歳の僕を(単一電池の両極を指でつまんだことによる感電死で)殺した達成感か、余りの嬉しさに近年まれに見るモラル安テンション高の状態を記録した僕は、焼肉のタレを蓋を閉めずに振る、という暴挙に出てゼウス(父)とヘラ(母)の怒りに触れ仏間へ幽閉。肉の焼ける音を客観的に聴きながら、仏壇の鐘でハッピーバースディを演奏するという十月を過ごした。

あれからもう十二年も経つのか、未だにドレッシングなどを振る際は蓋を確認してしまうことから、あの事件は僕に相当のトラウマを残していることがわかるが、それでも誕生日は楽しいものだった。誕生日の前は例外なくワクワクしていたし、前日など意味も無く走っていた。たぶん走れば時間の流れも早くなると思っていたに違いない。生憎50mを10秒という鈍足だったため、物理法則はくつがえされずに済んだのだが。

中学生も後半になると別に誕生日にそこまで情熱を抱かなくなっていったが、幼少のあの頃、一体何を楽しみに誕生日を心待ちにしていたのだろう。プレゼントか。プレゼントだろう。ケーキや肉の揚げ物といったご馳走もプレゼントの前の煩雑物に過ぎなかったように思える。一体何をもらっていたのか、少し思い出してみる。

レゴブロック(基地。宇宙船とかロボットとか持ってないのに。基地。)
バーコードバトラー(with 母親が勘違いして買ってきたデータックのカードデッキ)
テトリス(何かルーレットを回して出たブロックを手動で積んでく奴。ゲームじゃないので一列そろったら一列分だけボーダーを手動で上げる。対戦可。)
着せ替えオセロ(オセロ盤をボードを入れ替えることで他のゲームも出来るようにしたやつ。オセロ以外のゲームが将棋、囲碁、ダイアモンド、チェスといった子供心をわしづかんでそのまま握りつぶすラインナップ)
トランスフォーマー(カセットデッキに変身するやつ)
拳闘王(グローブとボクサーのキャラがチューブで繋がってて、グローブをはめてパンチするとボクサーもパンチするおもちゃ。対戦用。パンチ力がそのままキャラのパンチ力になるので、父親にどうしても勝てず最終的にグローブを直にキャラに当てて倒してたりしてた。)
ガンダムのプラモデル(アッガイ)
ガンダムのプラモデル(ズゴック)
ガンダムのプラモデル(武器セット)

そりゃ情熱も冷めるか。

2006年10月22日 14:56


■GOSSO-SAN

近くに99ショップという何でもかんでも九十九円で売ってしまう地獄のソルジャーがやってきたというので、足を踏み入れてみた。確かに店内の値札は一部除いてあれもこれもが九十九円。「きゅうじゅうきゅう」などと打つより「つくも」と打った方が九十九が容易に変換できるほど九十九に信頼を置いていない僕は"99"の右側の"9"が微妙に小さくなっており、レジに持っていけば「馬鹿め! 九の九乗円のお買い上げになりましてよ!」と天文学的小銭を要求される可能性さえも考慮していたのだが、これがこれが、九十九円だと。

思わぬ安買いに湯気をつむじから吹き上げながらパスタソースを買いも買ったり五袋。しかも一袋で二人前というこのお徳用、ブラジルチームがアポなしで押しかけてきてもロナウジーニョ以外にはパスタを振舞える計算になる。喜び勇んで帰宅し、早速ひとっ袋浴びようかと戸棚を開けるがパスタが、無い。

いつ間にか食べてしまったのかいやいやいやパスタ管理には自信がある。パスタを切らすなんてことは僕に限ってありえないはずなのだ、しかし事実パスタが無い。おそらく毛利あたりの元就が家臣に「okay guys,watch this」とかいいながらパスタを重ねてぽっきんぽっきん折っていったに違いない。矢とパスタの違いもわからん田舎大名が、ちょっと背伸びさせたらすぐこれだ! しかし折れたパスタを持ってこられても困るのは僕なのでその件は不問にするとして、とにかく今はパスタの代替品を探すことが先決だと戸棚に視線を戻す。うどんと目が合う。

いや、わかっている。お前はうどんだ。百歩譲ってカレーに浸かるのはよしとしても、パスタソースをぶっかけられることなど本意ではないだろう。君がどんな思いでうどんという職業についたかは知っている。冬寒い朝、君は母親が握ってくれたおむすびとお守りを携えてここ大阪の地に一玉咲かせようとして出てきたのだろう。間違ってもパスタなど! パスタなど! しかしわかってくれ! 僕には君しかいないんだ!

瞳を堅く閉じ沸騰した湯にうどんを放り込む、ぐつぐつと断末魔が聞こえ、湯の中で無念のワルツを踊るうどんが見える。ほどなくして諦めたかのようにざるへと横たわる彼らを器へ移し、ミートソースをかける。涙が。涙が、止まらない。まるで血の海だ。ミートソースにまみれたうどんは、今、まさに死んだのだ! 天に召されるかのように立ち上る湯気が文字を象り僕に語りかける

旅に病み
 つひはこの身の
  アルデンテ

濃いつゆにつかることを夢見ていたうどん! さぞ無念だったろう。甘酸っぱいミートソースの匂いが彼の想いを代弁しているように響き、僕の五感は敏感にそれを捉える。次々と流れ込んでくる彼の無念、きつねうどんの父と冷やしとろろうどんの母の下に生まれ、いつかはでっけぇうどんになることを夢見ていた彼の想いが五臓六腑につるつるとパスタには無い素晴らしいのどごしで意外とイケるぜごっそさーん!

2006年10月20日 22:07


■マルコフ

数学が出来ない。

文系だから、というわけでもなく、文系でもこのぐらいは解けるだろうという問題も僕にかかればフェルマーの最終定理なみの難問に変化する。耳から蒸気を出して100マス計算をやってたあの頃はまだしも、無理して数学に触れなくても良いという環境になってからは輪をかけて数学ができなくなってしまった僕だけれども、数学の授業を「必ず」一つ取らなくては卒業できないという噂を耳にした。学生課の偉い人から直に耳にした。「どういうことですか?」って言ったら「どういうことですか?」って言われた。

とにかく数学の授業を一つは取らないと卒業ができないと。ぐう。しかし背に腹は変えられぬと断モツの思いで「数理科学入門」を履修。これが入門などとは名ばかり、目の前では高校数学の知識を前提とした高度な授業が展開されている。無理だ。高校数学どころか、自前で一万円札を作ろうと適当に切った画用紙に「10000」とゼロを書いているうち楽しくなってきて、仕舞いには一京円ぐらいの紙幣を偽造し「おかあさん! 見て! 見て!」と自慢げに披露しては「凄いわねえ」という見返りと苦笑というお釣りを頂いていた過去を持つ僕だ、大きい単位の数字を見るだけで「何かヤベェ! 何かヤベェ!」と走り出しちゃうのに解けるわけがない。

しかしそんなことはお構いなしに授業は進んでいく、何だこの式、A,B,CはまだしもΣって何だ。どんなプレイだ。式を理解するどころじゃない、やっていることの意味さえ飲み込めないままマズいこのままじゃマズいマズい、首を左に傾けて右脳を左脳にしようとするも耳糞がガサガサ言うばかりでちっとも移動してくれない。マズい。ランダムウォーク理論、何それどういう味、マルコフ連鎖、あーリングの続編ね、鏡像の原理を利用して以下の問題を解けa>0 b>0のときS1>-b....Sn-1>-b,Sn=aであるような項の数はNn,a-Nn,a+2bで、って、って

ヤベェ、何かヤベェ。

2006年10月19日 23:52


■マップス

マップス。

マップス、という漫画がある。MAPSつまりはそういう意味のマップスなわけで、つい先ほど読み終えた。

簡単なあらすじは、それこそ実に簡単。平凡な生活を送っていた少年のもとにある日天使型の宇宙船と、宇宙海賊カリオンと名乗る女性が舞い降り、混乱する少年を他所に「うち、ダーリンが宇宙の秘法を手に入れる鍵だって知ってるっちゃ!」と問答無用に少年を拉致ってしまった! その後大冒険とエロを五、六回挟んだ辺りで敵が出てきて銀河がピンチになってもう駄目だ「諦めるな! 皆が力を合わせれば勝てる! Say Yeah!」「Yeah」「声が小さいSay YEAAAH!!」「YeeeEEEYAAA!」銀河が一つになった! 「銀河軍のがんばりが奇跡を呼ぶんだ! スーパーがんばり銀河艦隊(S.G.G.K)だ!」さあS.G.G.Kは銀河を救うことが出来るのか!?

まあ要するに宇宙を舞台にしたスペースオペラなんだけども、そのストーリ展開が非常に巧み。一人の主人公が物語のラストになって大風呂敷を強引に畳むといった独身男の大掃除みてえな漫画が多い昨今、銀河大の風呂敷を広げておきながら主人公に頼ることなく数十に及ぶ登場人物がちゃんと分業して畳んでいるというこのすばらしさ。小さくまとまることなく終盤に向けてどんどん増えてく登場人物、しかもそれらが全員平熱38度かってぐらいのテンションの高さ、あちこちへ飛び回るし移動するときは大体ダッシュだし何かとあるとすぐ服を脱ぐ。

そう、やたらとこの漫画のキャラ、特に女性キャラは脱がされる。たとえ一国の王女だって初登場で全裸だし、レギュラーキャラにいたっては「何、お前は乳首に眼球?」ってぐらいのトップレスぶり。濡れ場入浴シーンでは飽き足らず戦闘シーンでも脱いで脱がされすっぽ'n ぽん。そんなんじゃ興奮してページを右と左どっちからめくればいいかわかんなくなっちゃうよ! とお嘆きの思春期の権化は安心しよう。絵が古風なので、別に興奮しない。女性の裸にあれだけ冷静になれたのは、初めてだろう。

しかしエロは本筋ではない。本筋は前述した骨太ストーリーに裏打ちされた大冒険活劇なのだ! エヴァンゲリオンやガンダム、初期のドラゴンボールにハマった人なら間違いなく楽しめるだろうけどそれ以外「スケールのでかいSF好きに、俺はなる!」といったゴムゴムの御仁や「この星を一発で砕く最終兵器なのこの技は」といったアイキャンフライ小僧にもお勧めしたい漫画。特に「究極の進化生命体・銀河伝承族」「銀河生贄砲」「超機動グラジオン」といった単語にディスティニーを感じたお前は買うべき。ただ一つこれだけは言っておきたい。いくら気になるからって、最終巻から読んじゃ駄目だ。

絶対だ。

2006年10月19日 01:11


■マップスマップス

マップス。

マップス、という漫画がある。MAPSつまりはそういう意味でのマップスなわけだ。この漫画が途方もなく面白いという話を耳にしてから、いつの日かマップスを手にして読んでみたいという欲望が生まれ、それは日に日に募っていき、とうとうあの大嵐の晩僕は出航を決意する。あの海の向こうに何が待っていようと、僕は必ずマップスを手に入れてやる! しかし行く先々の島にあるどの漫画喫茶にもマップスは置いておらず、途方に暮れた僕は生まれ故郷へと帰ることにした。

きっとマップスは、もう誰かに盗られてしまったんだ。僕は、その誰かがトレーシングペーパーを使って写したのにも関わらず「俺が描いたんだぜ!」と言い張る日までマップスをビタ一コマ読むことさえかなわないんだ!

そう思って半年、失意のどん底にいた僕は何か気が向いたのでこうなったら全巻通販すりゃいいや、ということでマップスを全巻購入。先日ようやく待望のマップスが届いた。

最終巻だけ。

金惜しさに中古と新品の二種類を、さらにAmazonとlivedoor booksの二つをちゃんぽんして注文したのが思わぬ形で仇となった。負けず嫌いのAmazonの自己アピールが祟って最終巻だけが御許に鎮座、イエス、鎮座。Amazonとかいう名前からして不安だったけど所詮ジャングル、空気を読むってことしない。どうせ「のろまなlivedoor booksめ! 俺なんて昼寝したってお前に勝てるぜ!」みたいな調子で序盤にスパートかけちゃったらうっかりゴールだろ。そんな童話から子供達が学べることなんていったら「出荷時期をよく見てから注文するか、通販するならショップを統一しろ」なんてことぐらいだ!

まあ恨み弁をいくら垂れても仕方のないもの、だけどこの目の前にある最終巻をどうしよう。当然、読んじゃったらこれから始まるであろう大冒険が台無しになってしまうから残りが届くまで封印、いやでも表紙をちらっと見るぐらいなら別にネタバレにならないかな。表紙ぐらいならね。ちょっとだけ見るだけ。包装を剥がし表紙を見る、そこには「マップス」の文字に宇宙船らしき絵と妙に露出の高い女の絵と「銀河滅亡まで、あと一日!」の文字。

やられた。近年まれに見るジャイアントお世話をこめかみに叩き込まれ脳震災に見舞われる。銀河滅亡て。一体何をどう失敗すりゃ銀河が滅亡するんだ。うっかり八兵衛でもせいぜい江戸をピンチに追い込むぐらいだからうっかり八ギガ兵衛くらいないと到底無理、ちょっと読んでみようか、いや! 駄目だ! ここで読んじゃったら台無しだぞ? せっかくの面白い漫画が、台無しになるんだぞ!? 表紙を見るだけって「伝承族の目的がついに明らかに!」えー!伝承族って何! 誰! 芸能人で言ったら誰!? 「二人は捨身で最後の戦いに挑む!」二人って誰!? チャゲと誰!? 畜生小馬鹿にしやがって、こんなので負けたりはしねえぞ! 読みたくなんかならないぞ! 読みたくなるもんか! マップスなんて読みたくねえ!

早く残りが届いてくれよ、読みたくなんかねえけど!

2006年10月14日 16:06


■i can campus

汗。

日記を書くと汗が出る。別に風が吹けば桶屋が儲かるとかアイツが死ねば丸く収まる、みたいな慣用句を作ってノーベル慣用句賞をもらいたいとかそういうことではない。単なる事実を書いたまでである。写実主義、現代のミレーだ。僕はミレーだ。

で、ミレー的には日記を書くと凄く汗をかく。日記を「書く」と汗を「かく」を上手く引っ掛けた写実ギャグがうかつにも出来上がってしまったがこれを下手にフォローすると恥のミルフィーユになってしまうので放っておく。腐れ。つまりは日記を書いている最中僕はものすごく発熱するということなのだけど、他の誰に聞いてもそんなことはないという。

別段日記に限らず、何かを集中して考えると発熱する。夏場なんかはもう座椅子にケツ拓が出来るぐらい汗をかくのでアイスノンを首筋に当てたまま日記を書いていたりするのだけれども、やはりどう考えてもこれ、正常じゃないらしい。知人に話したとき「えええ!」と「だからか!」というリアクションを同時に頂き、驚愕と納得のナイスセッションを食らった僕は心を何に例えればいいかわからなくなったので左脳のシャッターを早めに下ろした。でも発熱するだけで身体に問題はないし、何なら、岩盤浴に代表される昨今の浴ブームに乗って日記浴とでも言い張ろうとさえ思っている。

まあ、これだと迂闊に人前で物を考えることが出来なくなるという問題はある。テストの最中なぞ危険だ。いきなり上半身裸になれば「わ、気持ち悪い!」かといって着たら「あ、問題わからなかったんだ」とバレる。「馬鹿」か「汚物」の地獄の二択。さらに理由がわからない人にとって僕は「何だかわからないけど気持ち悪いから敵」というモノに成り下がり、敵意を装填した双眸の銃口が一斉に僕へ向けられ、きっと、そんなの、失神する。

幸いにも「理性」という手錠が人間には生まれつき備わっており、今まで何とかストリップ沙汰を避けては来れた。しかし今後もっともっと難しい問題に直面したとき、超ひもドリルなんてものが宿題として出された日の保証は無い。しかしそれでも僕は生きていかないといけないのだろう。この十字架は重いけれど、きっと次は何かいいことがあるはず、明日は明日の風が吹くのだ。

そして桶屋が上場。

2006年10月10日 16:52


■喪に服せ喪に服せ

えーと、前回「ガンダムを観た」という出だしで始まる日記を書いたんだけど、その中身が「オタクをばばばばばばば馬鹿にすんな!」に終始しちゃっていることに今さっき気づいた。肝心のガンダムのことが書かれていない。そう、肝心のガンダム。肝心の! ここが肝心の! ガンダ! ム!

あんまりやるとまた各所から「いい加減に」という声と「しろ」という声が挙がるのでいい加減にしてガンダムの内容に触れてみようと思う。誰もが名前を聞いたことはあるけれど、結構見たことがあるという人はその知名度に反して少なかったりするアニメ「ガンダム」。続編が作られたり外伝が作られたりリメイクされたりして死ぬほど派生シリーズが多く、各シリーズの相関図を書いて地上100mから見たら「あ、あれれ? モナリザの顔になってる!」ってぐらい入り組んでいる。今回僕が観たのはその派生の根元の根源、いわゆる「ファーストガンダム」と呼ばれるものだ。

主人公はガンダムのパイロットでもあるアムロ・レイ。「アムロ、いきまーす!」「親父にもぶたれたことないのに!」「セガサターン、しろ!」などの台詞で有名なアムロ、アムロ、藤岡弘。少し本郷猛が混じってしまったことに遺憾の念を覚えるが、こういったレビューに不純物(と、本郷猛)は付き物なのでご容赦いただきたい。話を戻す。このアムロは元々軍人でも何でもなく、宇宙に浮かぶテラフォーミングされた人口居住基地「サイドセブン」に住むただのメカ好きの少年。何の変哲も無い日常を送っていたはずが突然、サイドセブンに巨大ロボが攻めてきた! 

「きゃー! あれは地球連邦軍に対して反旗を翻し、徹底抗戦の構えを見せているジオン公国の開発したモビルスーツと呼ばれる兵器だわ!」

ありがとう説明好きの被害者、彼女の言うとおりこのアニメでは人類が二手に別れて戦争をする羽目になってしまっており、アムロ少年はガンダムと共にその動乱に巻き込まれていく、というのが物語の導入だ。

端的に言えばこのアニメ、成長物語である。成長物語なんていうと急に柔らかくなってしまうが、その背景はあくまで戦争。なので一話目からどんどん人が死ぬ。名も無い民間人なんてのは死にに出てくるようなもので、おそらく台本にも「死人A」とか書かれているに相違ない死にっぷり。当然、割と重要な人たちも死ぬ。そして肝要なのは、アムロ少年もガンダムという「兵器」に乗って戦っている以上人を殺しているということだ。

人は可能性を内包するものであり、未来を内包するものでもある。それを殺すというのは未来への可能性を殺すということに他ならない。戦争というものは人の死の上に成り立つイベントだが、では戦争は果たしてどのような未来を作るのか? つまり、うんこがしたくてしたくてたまらないけど家は遠いし、この辺はコンビニも駅も無い、ならその辺の草陰に隠れて野糞リアンとして第二の人生を歩むか、持ち前のギャンブラー気質を生かして家まで走るか。この葛藤の末「うんこでトイレを作る」という可能性が生まれた。さあ、人類はこの可能性を見出した先に決断を迫られる。家のトイレを見捨てるか、それでも家に帰るか。

このトイレを巡るうんこの投げ合いが戦争であり、淘汰された未来の裏に秘められた可能性こそがアムロとそれを取り巻く運命の螺旋なのだ。運命は複雑に絡み合い、やがて一つのとぐろを巻いたうんこを形成する。そのうんこを、あなたはどうしますか? ガンダムが投げかけたこの問い(うんこ)に人類はまだ答えることが出来ていない。

2006年10月08日 13:01


■立てよガンダム

ガンダムを観た。

ガンダムだ。機動戦士ガンダムだ。モビルスーツ・ガンダムだ。ガンダムはガンダムだからザクとは違うのだよザクとは!

いわゆるロボットアニメの金字塔としてアニメのみならず漫画・小説・映画・グッズありとあらゆる分野に影響を及ぼし誰の彼の片隅にもその名前の一端が必ずあることから「もうこれ本能ってことにしてもいいんじゃね」という声が学会で毎回挙がるので調べてみたら全部同じ奴。前回も前々回もアイツだけそんなこと言ってるよ、と、無視されてきましたが今回それが三人になっており「無視できない」という声も挙がったので調べてみたら、結局これもアイツだったことでお馴染みのガンダム。

社会現象を起こしたアニメとしてエヴァンゲリオンと双璧を成す一大名作なのだけれども悲しいかな、そのファンの熱狂的な行動によって「ガンダムオタク」という言葉さえ生む羽目になり、社会に於いて彼らは「話の通じない気持ちの悪い熱狂的ガンダムファン」と認識され迫害されてきました。前述のエヴァンゲリオンも同じ轍を踏み、またそれは「アニメ好き=キモいオタク」という方程式の確立へ最後の一押しをしてしまったのです。

この事実は「ガンダム」がある種のドグマとして人々の心に刷り込まれていることの証左でもあります。しかしそこには二項対立が存在し、また止揚されぬまま宙ぶらりんに置かれているため未だ「ガンダムファン」と「一般人」の間に和解が成立せず、しばしばの論争、小競り合いを引き起こす種となっているのです。その結果「ガンダム」がいかに素晴らしい作品であろうと、一部のファンによる行き過ぎた行動だけを取り上げフィードバックさせる悪魔の演繹法が発動し、作品そのものにさえ「キモい」の烙印が張られようと、こんな、こんなことが! 許されているということが! もう日陰に生きる必要はありません、その悲しみを怒りに変えて、立てよ国民! ジークジオン! ジーク・ジオン!

2006年10月05日 22:22


■マヒャ道

冷凍庫に霜がびっちり。

誰かの家に行くたびに驚かされるのは、誰の冷凍庫にも「霜」がほとんどついてないことだ。聞けば、最近の冷凍庫には「霜取り機能」なるものがついているらしく、それによって霜がつかないのだという。しかし誰も彼もがそんな最新式を持っているはずもなく、物を冷やす以外には英検四級ぐらいしか特技の無さそうな小さな小さな、いわば冷蔵と冷凍が一体型の冷蔵庫しか持っていない友人もいる。しかし、それにしたって霜がほとんどついていなかったりする。

冷凍庫の霜、なんてのはどうしたってちょっとぐらい付くものだよ、と言われる。よく言われる。だが僕のはそんなちょっとぐらいなんて言葉で片付けられるほど簡単な霜じゃないのだ。皆が想像している霜なんてのはせいぜいシロップをかければ美味しく頂ける程度のシャーベットだろうが、僕の冷凍庫に鎮座している霜は最早ちょっとした札幌霜祭りでありぶつけりゃその辺のタイタニックぐらい沈めれる威圧感がある。対策としてこれまたよく言われるのは「冷蔵庫の電源抜いて二日三日外に出しておけば」ああもうこれに関しては言われすぎて文字にするのも面倒だ。とにかくそんなレベルじゃない。

そしてこの霜は衰えるどころかどんどんその勢いを増し今や製氷皿を飲み込んで一生氷が作れないように、ていうか冷蔵庫の右上四分の一が氷河期に突入している。製氷皿が氷に敗北した瞬間だ。今までは、まあ、別に氷も作らないし特に困らないだろうとして放っておいたものだが日に日に勢力を拡大していく霜軍にそろそろ普通の食品さえ入らなくなってきている。無理やり突っ込めば入らないこともないが、少しでも霜と接触するとそこが凍る。誰か教えて欲しい、この霜を取り除く革命的な方法はないものだろうか。このままでは入れるもの全てが台無しになってしまう。右半分だけ凍ったニンジンにキカイダーと名付けるのにも、飽きたんだ僕は。

2006年10月04日 13:17


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