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■モンスター人類

土砂降りの日に必ず一人二人は現れる己の耐水性を過信したガキ。

「駅から本屋さんまですぐだから傘なんかいらないよー!」

つって思いっきり信号に捕まってびしょ濡れ街道ワールドレコードで突っ切った挙句そのまま、グラビアアイドルみてーな水滴の飛ばし方でご来店なさって「ちょっとコウちゃん!」そうだよお母さん言ってあげて「ちゃんと傘にカバーしないと駄目でしょ!」

そっちじゃねーよ! おめーの息子が! おめーの息子がホラそのままの湿度で立ち読みとか始めやがるから本に水滴がボロボロ落ちて、感動の余り本に涙の水滴が落ちる、みたいな演出スプリンクラーになってんだよ!

そんでもう社員が「おめー言ってこいよ。イワしてやれよ」みたいな目で見てくるから渋々どころか超弩ビターに親御さんのところいって「すいません、お子さんの頭タオルか何かで拭いていただけますか?」って言ったときの顔!

「うちの息子がびしょ濡れなわけないじゃない!」みたいな「雨の日に傘を差さなかっただけでびしょ濡れ扱いですか!? それが貴方達のやり方ですか!?」みたいな。いやもうホント事実おめーのリリースしたガキモンが土砂濡れだから、ね、気づいてくださいよ僕らのこの暮れなずんだ顔。暮れナズン、暮れナズンですよ。敵全体に200前後のダメージと、セピア色の思い出ですよ。

「本が濡れますので……」

といってようやく「ホラ、怒られたじゃない。頭拭きなさいコウちゃん」怒られたじゃない、ハハ、ホント頭にコールタールでも沸いてんのか。俺がプッツンシナプス全開で不条理に切れてるんならまだしも、こりゃ正論だよ正論! ヒトラーが同じ台詞吐いたら「ナチスが為した唯一の良心」つってNHKで特集組まれるレベルの正論だよ! ホント、こういうことがあるから雨ってのは嫌なんだ、それは前々から言ってるでしょう? じゃなんで来るの、こないだも来たでしょ、その時お断りしましたよね? ね? じゃなんでまた来るんですか、あなた方のせいなんですよ、ちょっと! 偏西風だかなんだか知らないけど、ちゃんと答えなさいよ! 台風! 台風さん! ちょっと! 

2009年08月31日 21:04


■人類は脱線の炎に包まれた

物凄く堂々とエロ本を買う中学生。

冬眠中の熊よりちょっとだけ活動的の代名詞である我々書店員。その業務中の楽しみなんてものは、いかにして中学生がエロ本を購入するか、その手管を見るぐらいしかない。

友達数人で罰ゲーム的勢いを出して買っていく者や、シャブ抜き二日目ぐらいに震えながら買っていく者や、メモ紙をちらちら見ながら「これであってるかな」などと呟くことによって「俺は兄貴から頼まれておつかいしてるだけなんだ」フレーバーを出して追求を逃れようとする者。

ありとあらゆる知恵を振り絞り、悪あがきとも言える策を弄し、プライド死守ん期の若者たちがおっぱいに挑みおっぱいに沈んでいく。その様をビルの五十五階からシャム猫を抱きつつ眺めるのが最大の娯楽。至上の愉悦。トレーディングカードとして発売されたら販売元ごとセレブ買いするほど楽しみにしてるのだけど、そんな俺の常識をくつがえす金剛不動が現れた。

まずもっては普通にご来店。すでにここから足取りが違う。本来ならあまりの恥ずかしさゆえになんとなく店内を一覧してからアダルトコーナーに向かうものだが彼は一目散にアダルト棚へ、そう、堂々と、身体の軸が全くブレない達人の歩法! あまりの雄大さに後光凄すぎて白飛びした近くのブタ鼻女子高生が可愛く見えたし、足元でちょっと蓮とか咲いてた。

そしてエロ本を物色し始めた。物色し始めたのだ!
凡百なら選ぶ余裕もなくとりあえず手に取ったものを購入してしまい、後で「なんだよ! 浣腸ばっかじゃねーか!」と無念の死を遂げるはずなのに! その男はまるでコナン君を眺めるかのように物色し、棚に戻してはまた違うのを物色する。その眼光は鋭く、閻魔が罪人と善人を区別するかのように荘厳で絶対で、足元でちょっと蓮とか咲いてた。

そしてレジに向かって彼はやってきた。新米の兵ならばレジの俺から目線を外し、うつむき以上速足未満でやってくるものが、彼は全く目線を逸らすことなく、いやそれどころか、ちょっと足元で蓮とか咲かせながらやってきた。

「これください」

差し出された東鉄神の『いけませんお嬢様!』
俺はエロ本にカバーをかけながら彼の顔をちらっと見た。澄んだ瞳、意志に満ちた唇、まるで迷いの無い表情、いや……少し彼は微笑していた。全ての人類を等しく許していた。

「ろ……六百三十円になります!」

気づけば俺は敬礼していた。

「じゃあ、これで。お釣りは結構ですから」

泣いていた。もう俺は泣いていた。
自分は何て卑しい人間なんだろう。エロ本に右往左往する中学生を見て悦に入るなんて、恥ずべき人間だ! しかし彼はそんな俺をも許してくれた。彼はそんな俺にも等しく愛を注いでくれた! もう中学生を馬鹿にするような真似はやめよう、そう、あなたのくれたこの蓮の花に誓っ


ちょっとお金じゃないと困るんですけど。君どこの学校?

2009年08月29日 22:38


■ダルそうに昇る新人の朝日

歯医者に行ってきた。

ホントだいたい一、二年に一回はこういう日記を書いている気がして、いい加減お前プラークコントロールはコントロールって言葉入ってるから多分洗脳である YES95%を主張する団体から抜けろよ、って思うんだけど、うん、行ってきた。

もうなんかね、上顎覗いたお医者様の顔がね、完全に荒野を眺める農民の顔。「ワシらはここを耕さねばならんのか……」みたいな。「ま、コツコツやっていきましょう」って言われたからね。歯医者っつーかアルピニストの目になってたよ。

んでまあそっからは削ったり何だりで相変わらずの作法。
やはり歯医者って進歩も進化もしない。二足歩行に至る前に火とスケボー使えるようになったからいいかもう中腰のまんまで、ってなった原人が後の歯科医であると言われても驚かないよ、ああもうとにかく早く終わってくれないかしら、フウ、男って皆同じ。あたしが寝て、口開いてるだけで満足なんでしょ? もっとやること他にないのかしら、あたしはもっと求められたいの! 身体と身体が溶け合うような……そういうセックスがしたいのよ。「あ、もう口閉じてもいいですよー」一方的に腰を振って満足したら終わりだなんて、ケダモノ以下じゃない。「口閉じて大丈夫ですよー」ふん! ホント、男って皆同じなんだから! あーあどこかにアタシを満足させられる男っていない「岩田さーん?」

2009年08月28日 23:03


■突きつけられすぎて、撃鉄からこめかみ出ちゃう

一応毎日の習慣として、バイトの昼休みにどこか適当なところで昼食をとった後はマクドナルドでコーラのSサイズだけをチャージ代わりに払いそこでブログのネタを考える、ってのがあるんだけども、なんかどうも最近それがうまく機能していない気がする。

ネタが浮かばないとかそういう問題じゃなくて、なんだろう、なんで女子高生のふとももってあんなにプレシャスなんだろうね。シェンロンが俺の飲んでるコーラからドバーッ! って出てきて

「お前のキンタマを(ドバーッ!)一つだけ(ドバーッ!)好きなところにこすりつけて(ドバーッ!)よいのだぞ」

なんて言われたら女子高生のふともも選んじゃうな。まあ四匹出てきてる割には許可出してるだけだから、結局は交番でポリスソバット喰らって昏倒だけど。

んで、これじゃ駄目だと皆思ってるって、俺も思ったからさ。今日はちょっと気分転換としてマクドナルドじゃなくスターバックスに行ってみた。

さすがに雰囲気がマクドナルドとでは大違い、なんか気取った店員がコーヒーデキールにセボーンとか言うだけでキャラメルマキアート出てくるしさ、店内ではサ行で口ずさんだほうが効率良いようなBGMで満たされてて、お、こりゃいいね。これならいつもと違った日記が書けそう! なんたって飲んでるモノの値段もコーラのSの4.2倍だからね! こりゃいつもの4.2倍面白いもんが書けるに違いねぇ!(ドバーッ!)「そっすね」

そしたらもう筆が走る走る。なんかかつてないネタが浮かんできて、うわヤバいこりゃワシゃもう天下人じゃ! 早く家に帰ってこれを形にしたい! 大傑作、大傑作の予感だ! 目ん玉かっ広げて見やがれ! これが近年稀に見る怪物日記じゃー!


スターバックスによく行く人のことを「バクサー」と呼び、スターバックスでお茶することを「バクシング」と名付けることによって始まるグランデ級タイトルマッチ、マキアート・タイソンと具志堅ラテ! 減量のキツさに耐えかねてこっそりタンブラーにうどんを入れるラテ……「バッキャロー!」
「お、おやっさん!」
「テメェ! ジムにこねぇと思ったらこんなところで……来い! その腐った根性をドリップしなおしてやる!」
「嫌だ! もう、減量は嫌だ!」
「この……大タワケ!」 ボルーン!
「お、おやっさん……」
「どうでぇ、効いたか、この老いぼれのパンチが効くほど……おめぇは今根性が曲がってんだ!」
「へっ……効いたぜ……意識がオ・レになるほどにな……!
 おやっさん! 俺が間違ってた! また叩きなおしてくれ!」
「あったりめぇよ! おらっ! ジムまで怒涛ールの走りこみだ!」
「ココアー!」


ま、座れよ。

2009年08月27日 21:29


■シリコンバレーを畑と呼ぶ

仕事から帰ってきて飯を喰って横になると一分も経たないうちに寝てしまうので、こないだ試しに「勘弁してくだせえ! ワシらの村ではこれだけしか納めることができませぬ! 年貢を、どうか年貢を軽くしていただけませんか!」みたいな格好で寝転がってたらそれでも寝てた。

起きたら「おっ父! おっ父! 畜生! お侍だって何が偉いってんだ! 畜生ー!」みたいな格好になってはいたけれども、結構無理な格好でも寝れるってことが判明したので、今日また「我々の綿密なカリキュラムをこなすことさえできれば、息子さんを東大に行かせることなど容易い容易い! と、アドルフは申しております」みたいな格好で寝てみた。クロスさせた足に随分負担のかかる格好だったけれど、それでも気づけば二時間ほど眠っていた。

やはり体勢を維持するのは難しいらしく、また起きたら「おっ父! おっ父! 畜生! おっ父ー!」みたいな格好にはなっていたけれど、寝入るまでならある程度無茶な格好でも行けそう。

問題はどこまで無茶な格好が許されるか。

「なあ! アドルフ!」が許されるなら派生の「どんなに俺に抗議してもこの契約書がある限りあんたは手も足も出ないんだよ!」もいけそうだ、いや、もしかしたら「マザーノ裁定ニヨリ、コノ星ヲ、リセットシマス」も行けるかも知れないし「そんなことはさせない! この星はみんなの希望なんだ! その希望を守るためにマザーだか何だか知らないが、お前を倒す!」も出来るだろうし「喰らえぇええ! 閃光烈火斬!」もやれるし、その後の「おっ母! おっ母! 畜生! お侍だって何が偉いってんだ! 畜生ー!」も!?

2009年08月26日 19:45


■リスが来る

男はガムテープで腕と足を椅子に固定されている。
その顔は青痣と内出血に満ち、数度に渡る暴行の跡が見て取れる。
男は首の据わらない赤子のようにぐったりと背もたれに身を任せている。
そのこめかみには銃口が突きつけられている。

「口が堅いってのは、命に関わるものなんだな」

銃の持ち主が淡々とした口調で男に話しかける。
声をかけられた男の眉が少し上がる。

「俺の口が軽けりゃ、もっと早死にしてたさ」

ここでリスが来る。

「……そうかもな。まあどちらにせよ、結果は同じだが。
 ところでよ。お前に聞けなくなる前に、ちょっと教えて欲しいことがあるんだ」

男は首をもたげ、鈍く光る双眸で銃の男を睨む。

「口が堅い、って言うのによ、その反対は、口が軽い、っておかしいよな」

男の眉に疑念の波紋が立つ。
ここでリスが来る

「口が堅い、っていうのなら、その反対は、口が柔らかいになるはずだ。そうじゃないか?」

なんだそんなこと、と口の中で呟いてリスが来る。
相変わらずこめかみには銃口が向けられており、その問いへの返答を暗に強要していた。

「甘いの反対は、何か知ってるか?」

男が呆れた笑みを浮かべて、逆に問いかける。

「辛い、だな」

リスが答える。

「その通り。では、甘辛いってのは何だ? なんで反対のものが共存できる? お互いを殺しあうではなく、活かす事ができる?」

「このリスは何が言いたい」

「世の中は不思議でいっぱい、ってことさ」

男が答える。男のこめかみにリスが向けられる。

「言葉遊びは終わりだ。終わり、だ」

リスに向けた銃の撃鉄を起こす。
男はそっと、目を閉じる。まるで当たり前のように目を閉じる。八時間後また目を開けて、そしてシャワーを浴びて出勤するかのように目を閉じる。リスが来る。
引き金にかけられたリスに、力が込められる。

(乾いた残響)
(リスが来る)

2009年08月25日 21:50


■セルフ脳炎

空いてるファミレスとかに一人で入ると席案内されるまでもなく
「お好きな席どうぞー!」
って言われるけど、なんか、お好きな席って表現されると、凄い意識しちゃう。

いや俺は別に席は席として見てるし、これからもいい席友達として付き合ってくつもりだったんだけど、何かこう、第三者から「お好きな席」って言われると「サトミあんたのこと好きらしいよ」とか言われたときと同じぐらい意識してしまう。お好きな席、俺、お前のことお好きかもしれない……。

いやそんなことはない! 席は席、俺は俺だ。お好きな席、ってのは座りたいところって意味でそんな深い意味は無いはずなんだ! と適当な席に座る。

視線。視線が痛い。見られてる気がする。
「あの人、あの席がお好きなんだわ……」
「あの席、こないだ小汚いおやじにも座らせてたビッチェアーよ」
「でもほら、具合はよさそうよ」
「ふん! 男って馬鹿ね!」
そんな会話をされている気がする! このままのんびりしてると「あら、取り皿お持ちしましょうか?」とか「お箸もう一つお付けしましょうか」とか言われそうで、なんかもうそう考えるといてもたってもいられなくなって定食を平らげたら早々に店を出ちゃうんだけど、多分それも「座るだけ座ったら帰っちゃう男」みたいな評価になって、所詮あなたにとって私はただのイストモなんでしょ! イスタレなんでしょ! みたいなこと言われてんだろうな、くっそ! なんだよ! だから女っていやなんだ!

ん、女?

2009年08月23日 18:06


■エンドレスエイト


「あ、藤崎さんだ。オーイ、藤崎さーん」
「あら、ウィルソンくんじゃない」
「伊藤です。
今日はもう授業終わりなんですか? 藤崎さん」
「そう。
であれば、私と一緒に帰ろうという観念が見え見えよ」
「観念」
「私と並行移動したいという観念が、私の洞察力によって丸裸だわ。
シャツぐらい着せなさい」
「あ、えーと」
「無論、構わないわ」
「あ、うん、帰りましょう」
「ウィルソンくん」
「はい?」
「漫画という文化をご存知かしら」
「あ、うん、好きですよ、漫画」
「私もね、昨今、漫画文化に親しんでいるの」
「へぇ、何読んでるんですか?」
「一つ、群を抜いて面白いものがあったけれど、題名を失念してしまったわ」
「え、面白かったのに忘れちゃうなんて」
「いいえ。これが世に言うド失念というやつね」
「ド忘れですか」
「もう、名前が出掛かって、あのあたりまで来ているのだけれど」
「何がですか」
「このあたりまで迎えに来ているのだけど」
「誰がですか」
「思い出したわ。
 『オモシロ接吻』よ」
「……。
 『イタズラなKiss』ですか、もしかして」
「そう、それ、その『奇抜唇接着沙汰』
 面白かったわ。特にどこが、ということはないのだけど」
「僕は『イタズラなKiss』読んだこと無いですねー少女漫画はあんまり……」
「あら、男根漫画ばかりなの?」
「あんまりそういうジャンル聞いたこと無いです」
「週刊男根ジャンプに連載されているような漫画たちのことね」
「その袋とじから陰毛がハミ出てる感じ、勘弁してください」
「私もいくつか読んだわ」
「あ、何が面白かったですか?」
「そうね。まず『シェンロンスタンプラリー』と」
「『ドラゴンボール』と」
「『こちら葛飾区亀有5丁目34−1』と」
「『こち亀』と」
「『ジョジョのるるぶ逆さ読み』は読んでてワクワクしたわ」
「あ、『ジョジョの奇妙な冒険』僕も読みましたよ! 第何部が好きですか?」
「この私は、第二部が好きよ」
「へぇ~意外だなあ」
「ジョジョセフ・ジョジョースターのような男性は、いいわね」
「ジョジョジョジョになってますが」
「あのような男性は、たまらんのだわ」
「へぇ~僕は三部が好きだな~。承太郎カッコイイから」
「そうね。空条状 承太郎状も、たまらんものがあるわね」
「良く似た何かになってますよ」
「でも私は、ジョジョセフのあの飄々とした感じが好きよ。
 『クソ歌謡』の主人公もやや近い雰囲気があったわね」
「『ろくでなしブルース』は読んだことないなー]」
「最近の、あの『RA-MEN NI UITERU GURUGURU MOYOU NO TOKUTYOUTEKI NA NERIMONO』は、どうも人物像に寄せ集め感があって良くないわね」
「確かに『NARUTO』は昔のほうが面白かった気がしますね
藤崎さんはジャンプ漫画が好きなんですか?」
「いいえ、他誌のものにもいくらか目を通したわ。
 そうね。せっかくだからスポ男根もので言うなら」
「また陰毛が」
「私、野球はわからないのだけど、『人を呼びますよ!』は面白かったわ」
「『タッチ』かぁ~最初の展開が凄いですよね」
「そうね。一卵性の片割れが死亡する場面は『お客様困ります!』の名場面の一つだわ。
同じスポ男根ものだけど『部内最高権力者翼』はいまいち馴染まなかったわね」
「『キャプテン翼』は、絵柄で好み別れちゃうかもしれないですね確かに」
「やはり『エッチ!』には及ばないわ」
「『タッチ』好きなんですね
 結構昔の漫画多いですね。最近の漫画は読まないんですか?」
「読まないという事態にはなっていないわ」
「あ、そうなんですか、何読むんですか?」
「『チェーザレ』」
「あれっ」
「なに?」
「いや。」
「そう。」

2009年08月21日 22:21


■疲労でポッキーを持つ指が震える

書店員ブログ。

つっても書店員がやってることなんてのは、エロ本にカバーかけるとき必要以上に本の中を開いて「貴様が買おうとしている書籍の具は、もうこんなになっておるぞよ!」と見せ付ける程度の簡単なお仕事しかないんだけども今回はちょいと特別。新店の書籍搬入手伝いに行ってきた。

四トントラックにぎっしり詰まった文庫やら書籍やら雑誌やらを実に千五百箱分全て店内に運び入れるまさに倉庫内奴隷作業。そんな馬鹿力仕事をやるのに何故か集まった人間は各店舗の店長+書店員バイト+書店取次店社員という太陽どころか黒木メイサの目力ですら日焼けしそうな青びょうたんばかり。

案の定三時間の搬入作業に休憩を二回も挟むという日進月歩っぷりで何とか搬入を終え、店内にうずたかく積まれた書籍のダンボールは、クラスで人気のあるファラオを奉るにはちょうどいいピラミッドといった感じ。そしてそこからようやく書店員の本領、棚入れを皆で行う。

つっても。

ダンボールに入った書籍をジャンルごとに棚に入れてくだけなんだけど、新店の広さが百五十坪の二フロアという、ローマ法王なら余裕で満足する敷地面積に所狭しと棚が並び、しかもダンボールに入れられた書籍のジャンルはバラバラ。

新店なので誰も棚の位置なんか把握してるはずもなく、棚入れ作業中そこかしこで「健康雑誌! 健康雑誌どこー!」だの「男性誌二階ですかー?」という怒号が響き渡り、終いには「子宮がん! 子宮がんどこー!」「子宮がんこっちにありますー!」えーもう声出し合って子宮がん探さなきゃいけない状況って何だよ。メスのだいだらぼっちの手術でもしてんのかよと思えば、二階で「エロー! エロどこー!」性欲のハンドル切りすぎてる社員が。

他にも「児童売れますかねー?」や「もう自己啓発いいよ!」など。本のジャンルだけを良い大人が叫ぶだけで相当PTAからローキックされそうな会話になるんだなあと新しい発見に心躍らせながら「戦争ー! 戦争どこですかー!」と叫びまわってたバイトは俺。いやー、丁寧に言えば勃発するってもんでもないね。

2009年08月20日 21:51


■3キロバトル

砂と闇が支配する荒野の中、蜃気楼のように浮かぶ町影があった。それが今でも人の存在を許すものなのか、それとも以前そうであったことを示すただの墓標なのか。窓は砂に覆われて見えず、扉は堅く閉ざされて開かず。それは外敵から身を守るためであったか、あるいは、もう開く必要の無いためであったか……。

「おーい、誰か、誰かいないか」

私は声を枯らして叫ぶ。旋風巻く砂塵が嫌でも私の叫びを奪っていく。町並みはしんとして沈み、呼びかけに応じる物音すら聞こえない。

「俺は敵じゃない。誰かいないのか。誰か、ホントにいないのか、誰か」

蝶番の外れた酒場のドアがきいと軋み、ぎいと戻る。奥は薄暗く、生き物の気配は無い。カウンターとテーブルには砂が降り積もり、また久しく掃除をされた様子もない。モザイクがかった酒瓶を手に取り振ってみるが、中の液体はとうにその甘美さを蒸発させてしまっているようで、空気のみがゆらりと揺れた。酒瓶を床に落とす。雨粒が屋根を打つような音を立てて、やがて酒瓶は砂塵の仲間入りを果たした。

「誰もいないのか。本当に、本当に誰もいないのか」

カウンターに手をかけ、注文をするような格好で呼びかけてみる。返事はない。
酒場から出る。外も中も似たような景色だ。

「うさぴょん」

声を枯らして叫ぶ。

「うさぴょん、ぴょーん! ぴゅるぴゅる! うさぴょんビーム! ずきゅーんずきゅーん!」

私が残した足跡は、もう風が攫っていったようだ。

「うさぴょんハイパービーム! 説明しよう! うさぴょんハイパービームは、うさぴょんビームの五倍の香辛料と、八倍のメンマをトッピングした当店オススメのビームでありコラーゲンたっぷりの目玉メニューなのである! まとも食らえば五年は若返るといわれているが、うさぴょんハイパービームを撃てる人間は年々減っており、若者離れがうさぴょん産業へ深刻な打撃を与えていることはこのグラフを見てもわかるだろう!」

世界は文字通り暗黒に閉ざされた。

「おっぱい揉ませてくだっさぁ~い!」

今が昼なのか夜なのかすら区別がつかない。

「相対性理論完成させるんでぇ~おっぱい揉ませてくだっさぁ~い! ねぇ~! でっへへぇ、思春期時代のアインシュタインの真似ぇ~!」

それでも喉を振り絞る。

「ちゃんこ出すよ、いい? ちゃんこ出すよ、出しまぁ~す! ちゃんこっ、ちゃんこ出してもいいの!? 二人分出すよ、いいね、出すよ、ちゃんこ、ちゃんこ、これは本居宣長の分だけどいいの? 俺本居クルーの一員だからさ、ちゃんこ出してんの! うん、そうそう五時から森林浴、はーい、じゃあねーちゃんこの素出す! もったいないから! ちゃんこの素出すよ、出しちゃうよ、せぇ~のっ!」

遠雷が聞こえる。

「正解は、救助犬の樽の中にたっぷりめかぶでしたー!

つーまぶーき君が蹴ってるリスがープレミアつーいて五十万(五十万!)
たーめしーてびっくーりすれっちがい通信
そっこなーしぬーまで五十人(五十人!)
らっふれーしあーのうーえに立っつと
パケットつーしんやっすくなる(長老の知恵!)」

がさっ

「!
 誰か! 誰かいるのか! おい! 誰かいるんだろ! 教えてくれ、俺のギャグは面白いのか? ウケてたのか? 頼む! 教えてくれ! 俺の、俺のギャグは!」

遠雷が聞こえる。

2009年08月19日 22:48


■shut up and let me go

マクドナルドでぼーっとしながら「ゴキブリホイホイがゴキブリHEYSAYだったらジャニーズ好きのゴキブリが捕まるのかな」なんて思ってたら俺の席の横で子供が二人喧嘩しだした。

それはじゃれ合ってるとかいう次元をとうに越えた、金的目潰し砂入り米びつ有りの随分とバーリトゥードな様相。

やりとりに耳を傾けて双方の言い分を聞いてみると、どうやら兄貴の方はトイレに行きたいらしいが弟は一人になるのが絶対に嫌ということで押し問答しているらしい。

兄貴は小学生高学年、弟は低学年ぐらい、おそらくはお母さんが一階で注文をしている間場所取りがてら荷物を見張っといてということなのだろう。兄貴としては二人いるんだから俺がトイレで性器露出してる間おまえが荷物見てろ、ということなんだけど弟は絶対に嫌! 嫌! 一人になるから嫌! でもついてきたらお前お母さんに怒られるぞ、という兄貴に対し弟、嫌! それも嫌! 絶対に嫌!

兄貴の理論武装度に対して弟が丸腰過ぎる。
難しい話はわかんないけど落ちるの絶対に嫌だから全身にダイナマイト巻いて御社の面接に伺いました! って感じの逆圧迫面接。痺れを切らした兄貴が無理やりいこうとすると、弟もまた無理やりついていこうとするので、地面を蹴って威嚇をする兄貴なんだけどその衝撃で腎臓にいらん催促をしてしまって尿意が内股を加速させる。弟は兄貴の殺意と尿意の混じった形相を目の前にほぼ半泣き。

怯んだ弟を尻目にまた行こうとする。ついてくる弟。威嚇の地面蹴り。ウェルカム尿意。このループを三回ぐらい繰り返したところでもう兄貴がキレて弟を突き飛ばし、そのままトイレに向かおうとすると後ろから「死んでやる!」

また随分とアンモニア臭い修羅場に居合わせたもんだなと思いながら眺めてると、さすがに兄貴も死なれては困ると思ったのか「ごめん、ごめん」と謝りながら弟を抱き起こしている。しかし足元のもじもじを見る限りもう相当腎臓グランデな感じであと五分もすれば「セットのドリンクお待たせいたしましシャー!」って感じだろう。

必死に弟を説得する兄貴。頑として首を縦に振らない弟。迫り来る尿意。

尿意ってのは人間の善意とか悪意を全否定する存在だと思う。
もし俺が、例えば親父が余命幾ばくもなく、あと五分もたないって時に彼ぐらいの尿意に襲われたら、たぶんちょっと親父の点滴つまんじゃったりする。粉ポカリ入れたりする。

しかしそれでも兄貴は弟をなだめて説得させようとしている。母親の言いつけをちゃんと守ろうとしている兄貴は愚直ながらも随分と輝いて見えた。自己犠牲。かくも美しい自己犠牲があったろうか。膀胱の限界においてなお、彼は責務を果たそうとしている!

ちょっと普通に感動しながら見てたら階段から三人分のセットを持った女性が上がってきた、母親だ、あの兄弟の母親だ、今この事態を収拾しうる唯一にして最大のカードだ!

「あ!」兄弟二人の顔が目に見えて明るくなる。ものその嬉しさでジョバりそうな兄貴が立つより早く弟が満面の笑顔で母親からトレイを受け取りながら

「もういいよ! おしっこ兄ちゃんバイバイ!」

愕然とした。
「こらこら、またお兄ちゃんにそんなこと言って」と母親が笑いながらたしなめていたが、違う、違うんだマムさん、もっと絶望的な。もっと全否定的な響きが「おしっこ兄ちゃん」には込められているんだ。

兄貴は何も言わずにトイレに走った。
俺も何も言わず兄貴を見送った。

彼が、人類の尿道に栓をするウィルスをばら撒く尿道テロで世界中を敵に回したとしても、俺だけは彼を最後まで弁護する。彼が、為すべきことを為し遂げるまで、俺は彼の傍らでそれを見届けようと思う。その時おしっこがしたくなったら?

我慢するさ。俺のおしっこだもの。

2009年08月18日 20:04


■食リトレシート

【七宝麻辣湯】

予算:1000円未満 雰囲気:少人数でも可。カウンター有。女性客多目。

麻辣湯とは、上海生まれの本格スープ春雨! ……といっても中国ではラーメン屋台並の気軽さで食べられてる庶民食。とっても辛~いのにスープにコクがあって病みつきになる! 一度食べたことのある人ならわかると思いますが、ほとんど中毒症状といってもいいぐらい食べたくなってしまいます(笑)

そんな麻辣湯、日本おそらく唯一食べさせてくれるのがこのお店「七宝麻辣湯」。

雛壇に桃の節句よろしく並ぶトッピングを最初に選び、店員さんに渡すと極上の麻辣湯に変身させてくれます!(変身といっても、遺伝子を変質させる類のものや、量子変換によるものではありません。言葉のあやです) 

辛さも選べる五段階、自称超辛党(政党ではありません。私は議席を確保していません。言葉のあやです)の私でも辛さ3でヒーヒー言ってしまうので、辛いのが得意じゃない人は1でも充分かと……。

後のせトッピングも豊富で、カレー玉やコラーゲン玉を入れたり、残ったスープを雑炊にしたり……個人的オススメは薬膳麻辣湯!

クミンやコリアンダーなど各種スパイスをスープに調合したもので、ちょっとカレー風味になって食欲倍増! 滋養強壮! 体にも心にも優しいスーパーファーストフード! とにかく皆にオススメしたい麻辣湯なのですが、シリーズ皆勤だったリプリーが何故か回想でも出てこないし、前作「エイリアン4」との繋がりも薄く感じました。映像が非常にリアルだっただけにストーリーにも力を入れてほしかった……残念。

評価:★★★★☆ 

2009年08月17日 22:21


■入ろうとすると長老に止められる居酒屋

夏エンジョイ経過報告。

とりあえず限られた休日を使ってこれまでこなしてきたことといえばポケモンスタンプラリーと夏コミ参加ぐらいで、まだ海だとか山だとかそういったところへはまるで行っていない。

やっぱり夏っていったらレジャーって行ったら海だろ山だろうとは思うものの、海は相当ハードルが高い。海に行っては見たものの大して泳げないし、泳げたとしてそれの何が楽しいんだろうホリックに罹ってしまい砂浜ではしゃぐ友人を体育すわりで眺めてたら背中と肩だけ日焼けしたという思い出を持つ俺にとって海は母なるといえど、日曜日の朝に「さくらんぼあるから起きなさい! さくらんぼだよさくらんぼ!」とエビで空母釣ろうとする類の相当ウザい母なる海。

だとすれば残された可能性は、山。

海は水辺だから涼しいと思われがちだが、砂浜は遮蔽物がないので日光をもろに浴びる、比べて山は森林が日光を遮断し地面が熱を吸収してくれるので実は山の方が快適なのだ! さらに景色も一定でなく、空気も澄んでおり、水も美味しい。山だ、何を迷うことがある山に行けばいいんじゃないか。

女の子と一緒に行けば途中で重たい荷物を背負って歩く俺の大きい背中を見せたり、水が無くなれば葉についた朝露を集めて水分を確保する俺の横顔を見せるといったキュン活が行える! さらに山中で虎に出くわして

「助けてー!」
「待て、この虎……お前、怪我をしているんだな」
「岩田くんダメよ! 捕食されるわ!」
「こいつが怒ってる理由はコレさ」
「棘……?」
「これが足に刺さってたんだな、よしよし、もう大丈夫だぞ」
ニャーゴロ
「凄い、あんなに獰猛なシベリアトラが懐いてるわ! 岩田くん素敵!」

なんつってもう俺の野性味と優しさと包容力で女子キュン殺。ヤバいもう山行くしかないな。ちょっと東京から近いところで良い山知ってる人いない? そんなに険しくなくていいからさ、シベリアトラがいっぱいいて、あと途中でメガネで色白で制服ブレザーの女の子と意気投合しやすい山。朝露の自販機もあると嬉しいです。

2009年08月16日 23:18


■初めてのコミケ

コミケ。

年に二度あるオタクによるオタクのための大祭典コミッケマーケット略してコミケに行ってきた。

国際展示場前駅に降りる、駅のホームからして既にどこかにマザーオタクがいるとしか思えない沸きっぷり。さらにホームから改札に上がるエスカレーターの壁面には人気アニメのポスター、柱には新発売ゲームのキャラがウェルカム、改札に切符を入れれば「入れちゃらめぇ!」の嬌声が上がり、万が一Suicaの残額が足りなければ「もう! お兄ちゃんたら間抜けなんだから!」と、ツインテールの石破茂防衛丁長官がホログラムで赤面しながら説教してくる。ウソ。後半特に。

そして見えてくるビッグサイト。さらに増える人だかり。異常な熱気に包まれたコミケはすごーく楽しい! はずのもの。

あー。

結論から言うと楽しめなかった。正直。

コミケが楽しくないわけでは決してない。なんというか、こちらはそういうジャンルにまるで興味の無い人を含めた複数人で行ったわけなんだけど、その心意気がまず間違ってた。コミケは与えられるイベントではなく、与えるイベントということ、その意識が決定的に欠如していた。

コミケは誰かが何かをしてくれるわけじゃない。自分の表現物を皆に見てもらいたい! っていう目的と、心躍らせる表現物を手に入れたい! っていう目的が何十万と集まって固まってできたイベントであって、そこではげっ歯類がエレクトリカルなパレードを見せてくれるわけでもなければビッグサンダーでもなく、ましてやマウンテンなどもっての外なのである。

それを「まあ何か人いっぱいいるみたいだし、有名なイベントだし、行ったら何かオモシロそうじゃね?」ぐらいの気持ちで行くと完%路頭に迷う。というか迷った。

とりあえずコスプレでも見れば何かあるだろうと思って少し離れたところに用意されているコスプレ会場に行く。三角コーンとポールで構成された入場通路に既にゆるく列が出来ているあたりでやや戦慄はしてたんだけれども会場について愕然。そこは三次元と二次元が入り乱れるアナザーディメンション。

しかし当然だ。そういうことなんだ。「コスプレしてる人がばーって並んでて、それをチラチラ見ながら歩けるのかな」などとインスリンがボイコットするほどに甘い意識。完全に見誤っていた。

そこは目的と目的が濁然と混ざり合い、アニメキャラと一般人が互いの目的に交錯する異世界。セーラームーンもキューティーハニーもユフィもティファもクラウドも博麗霊夢も霧雨魔理沙もいる超銀河。

もっとこう、コスプレイヤーと撮影者は柵で一定距離隔離されて不可侵条約を結んでいるのかと思っていたが全くそんなことはない、民間人に混じってコスプレイヤーも移動しているし、あちらでは銀魂の登場人物が、そちらではD-graymanのキャラが、こちらではピッコロ大魔王がナルトにぶつかって「すいません……」と呟くジャンプ奇跡のコラボレーションが行われており、俺は前を歩くべジータの引いてたキャリーラック結構蹴っちゃってマジごめんね。

しかしそんなことだから参加者同士の自治が非常に厳しく行われている。カメラを向けて縦横無尽に撮影しようものならスタッフでもなんでもない人から「ちゃんとレイヤーの人に許可取りましょう」と咎められる。混沌とした会場だからこそそうやって秩序を紡いでいかないとイベント自体が破綻しかねないことを参加者は熟知している。

なのであまり写真は撮ってないんだけど、流行のキャラが跳梁跋扈している中「ワシゃこれで十五年やってますねん」感のあるナディアを見つけたので許可とって一枚撮らせてもらった。

他にも、ヘルメット小さくてうまく着けれないのを碇ゲンドウに手伝ってもらってる仮面ライダーや、ポーズを決める鋼の錬金術師エドワード・エルリックに反射板を持つアルフォンス・エルリックそしてそれをローアングルから撮影する両津勘吉と覇王丸など、面白い画はいっぱいあったのだけど、意識がまるで撮影する方に向いてなかったので見逃したのが悔やまれる。

そしてどうもコスプレ会場は二つあることを知り、今までいたのは「第二」コスプレ会場だと聞かされ「あれで……第二……だと……? バカな……!」なんて少年漫画っぽい展開を見せながらもここらで我らコミケ行軍内の温度差が決定的なものに。

自分含めアニメ漫画がかなり好きな人間はまだハツラツとしてるんだけど、そういうのに興味ない人間の表情がこのまま即身仏になるのを待つ者のそれになっていたので、もうとりあえず勘弁してください派と、まあもうちょっと見る派に別れて別行動。


俺は後者に混じって同人誌ブースやら企業ブースを見て回る。そこで「アカギ(参考画像)」と「市川(参考画像)」のBL本を見つけたので何故か買う。三百円で「安い!」って無意識に思った俺の相場感覚が全く理解できない。アカギBL本の相場を胎教の一環で仕込まれてたりしたんだろうか。

そして企業ブース。ここでも自治。壮絶な自治。新作ゲームのプロモーションとして声優を交えてのトークイベントみたいなのを遠巻きに立ち止まって見るのも許されない。もちろん全員がそんなことをしては人の流れが澱み、イベントが滞ってしまうからなのだけれども、なんというかその「俺達がイベントを作るんだ!」という意識に感服ただ感服。

そして大して得るものもなく帰路。なんというか「もっと楽しめるはずのイベント」なのだと痛感した。知識はあるからコスプレの元ネタの八割はわかるし、同人誌のノリも好きだからブースも見ていて楽しい。だが余りにも目的意識が希薄すぎた。参加する気が皆無すぎた。

事前に目的を立てて、そして入念に準備を進め、当日は目的に向かって一心不乱に進行する、これはそこまで積極的にのめりこんで行かなければ楽しめないイベントなのだと理解した。俺はまだコミケを楽しめる。方向性とやり方さえ間違わなければもっとコミケと仲良くなれる。

初めてのコミケは惨憺たる結果に終わってしまったけど、大丈夫、俺達はまだ始まったばかりだから。きっとやり直せる。そうさ今年は忘れよう、来年、来年こそは!

そうやって家に帰ってカバン見たらアカギのBL本入ってた。何? テロ?

2009年08月15日 22:33


■CM

「こ、これは……!」
「焚き火の跡!」
「無人島だと思っていたが……まさか俺達以外にも……」
「ひ、人がいるんですかね!?」
「ああ、間違いないだろう
 足跡が森の中に続いている、行ってみよう」
「え、で、でも、友好的な人じゃなかったら……」
「火が使えるってことは、それなりに常識のある奴だろうさ
 きっと、俺達のようにあの大災害のドサクサでこの島に流れ着いたんだ」
「じゃ、じゃあもし協力できれば、僕達生き残れるかも!」
「とにかく行ってみよう」
「た、隊長! 足跡の先に缶詰の空き缶が!」
「やはり俺達と同じように遭難したんだ! しかも缶詰を持っているということは……他にも食料を持っているかもしれんぞ!」
「隊長!」
「どうした! まだ何かあるのか!?」
「全部、全部コーンの缶詰です!」
「……嫌いか」
「え?」
「コーンが嫌いか!」
「いいえ!」
「嫌いか! コーンが!」
「いいえ!」
「よし、行くぞ!」
「はい!」

***

「しかし随分と森の奥にキャンプを張っているんだな、こりゃ相当な装備を持っているに違いない……もしかしたら我々と同じく、どこかの軍所属の人間……」
「隊長!」
「どうした!」
「また空き缶が落ちてます! アクエリアスと、アクエリアスネオの空き缶です!」
「飲み物まで持っているのか! なんと! これはますます協力を仰がねば……」
「しかし隊長!」
「何だ!」
「潰されているんです!」
「何がだ!」
「空き缶です! 中身を水で洗って、上から踏んだように潰されています!」
「なんてこった……この島には……回収業者がいる!
 他には何か落ちてなかったか!」
「他にはこんな袋が……!」
「これは……資源プラスチック! 資源プラスチックとビン・カンが同じ回収日……バカな……いやまさか……」
「隊長!?」
「田井中、俺の予想が正しければ……この島は……国分寺市だ!」
「隊長!」
「そして今日は金曜日だ!」
「隊長!」
「この島の全貌が明らかになってきたな、行くぞ!」
「はい!」

***

「糸ようじ、ムースワックス、割り箸、半額シール……」
「あ、また落ちてました」
「ZINRO……」
「わっ! へ、蛇!?」
「違う、良く見ろ。DSliteだ」
「な、なあんだ……ヒァッ!」
「どうした!」
「何かが足に絡み付いて……だ、大蛇!?」
「違う、ビニールテープだ。ん? テープが地面に続いてる……?」
「どうしました?」
「このテープを引っ張ってみろ」
「え、こんなところで童話『おおきいかぶ』ごっこですか!? 俺ウルトラマンゾフィー役でいいですか!?」
「バカ! いいから引っ張れ!」

ずぼっ!

「これは……! 月刊『ねじの世界』が大量に結えられて地中に埋められてたのか!」
「バカな……信じられん! なんてこった、クソッタレめ!」
「隊長! あっちの方から煙が!」
「とうとう見つけたか、行くぞ!」

***

「崖……」
「ここで着ている服を燃やして、のろしを上げてたんですね。
 でも助けが来なくて、悲観して……」
「バカ野郎……バカ野郎」
「徒労に終わっちゃいましたね……」
「ちくしょう! どうして! どうしてなんだよ!」
「隊長、気持ちはわかりますが、帰りましょう!」
「ちくしょう! バカ野郎!」
「隊長!」
「雑誌の回収日は水曜日だろうがバカ野郎!」
「隊長! もう、もうやめましょう隊長!」
「うっ……うっ……ぐすっ、くそ、こんなもの! こんなもの!」
「やめてください! せっかくの月刊ねじを、そんなビリビリにやぶいたら、やぶいちゃったら……ハッ! 細かくやぶれた雑誌は……可燃ごみ! 可燃ごみなら金曜日に出しても……違反じゃない!
隊長はわざと……?」
「協力すればこういう風に助け合うこともできたんだ……それなのに……それなのに……バカ野郎ー!」
「隊長……!」
(でも隊長……彼の残していった衣服は……木曜の回収なんやで……人はホンマ、悲しい生き物やで……)

2009年08月14日 21:39


■電気羊の淫夢

虫歯がヤバい。

普通はだいたい「痛くなったら即歯医者」みたいなことなんでしょ? ってか大体病気ってそういうもんだろうと思うんだけど、俺の場合「虫歯」を発見して同棲を始めてから相当経つ。もうなんか、ゼクシィとか買っちゃうぐらいの年月一緒に暮らしてる。

しかも数が半端ない。上顎の小臼歯が二本、視認できる程度の虫歯。さらに上顎、右奥臼歯、治療済みだけど引越しの間際だったので銀を被せないでそのままエアーズロックが一本と、左奥臼歯かぶせてた銀が外れてそのままのグランドキャニオンが一つ。

口ん中に世界遺産二つ抱えたまんまもはや一年以上経とうとしている。別に歯医者が嫌いなわけじゃない。「我慢してくれそうだったから」という見込みだけで麻酔無しに神経引っこ抜かれた思い出もあるけれど、別に嫌いじゃない。痛みは我慢できるもん。が。もんが。歯医者の、あの、手際の悪さが嫌いなんだ。

一個の歯を治療すんのに二回も三回も通院させられるのが納得いかない。医学は日に日に進歩していると聞くが歯医者ばっかりはいつまでも前時代的なまま。なあ。ドリルで歯を削るとか、いつまで磨製石器時代引きずってんだよ。もう時代は平成なんだよ! 朝昼晩ケツに単三電池つっこみゃ飯のいらねぇ時代なんだよ!

いまどきは自転車屋だって、修理してる間に乗る自転車を貸してくれるってのに「詰め物が取れたら困るんで、ガムとか噛まないでくださいね」ってはぁ!? 恐怖政治か! ガム論弾圧か! 焚ガム坑グミか! 

なんでお前らは「あーじゃあ直しとくんで上顎借りますね」カポッ!「じゃ、これ臨時の貸し顎です」スポッ! ができねえんだ! カポッスポッが俺の望む歯医者の姿だ! もしくは再起動だ、再起動で直せるだろ!? 「ちょっと目つぶっててくださいねー」で電源ボタン長押しして『上顎を再起動しています』……ジャーン! SEーGAー! 「はいオッケーですよー」だろ!? それが何でできねえんだ! 「できたとしてもお金かかりますよ?」 いいよ! 倍額払ってもいいよ俺は! 「でも今までの倍痛いですよ」 え! ダメ! それはダメ! ヤだヤだじゃあ俺ドリルでいいもん!

2009年08月13日 22:20


■覚えとけ、ファッションは死ぬほど大事だぞ!!!

バーレーたー!

バイト先にサイトがバレたー!

っていうか色々バレたー!

接客がまんじゅうよりも怖い俺は今日も裏にトンズラこいて返本雑誌をダンボールに詰める作業に人生賭けてたらいつの間にかバイト上がりの時間になってたらしく、遅番の大学生たちがぞろぞろとやってきた。

ああ、引継ぎかな、まあ引き継ぎっつっても俺はダンボール相手にぼそぼそいらっしゃいませとか言ってただけなんだけどもとか思ってたら、その内の一人が口を開き

「岩田さん、相方さんの服装なんとかなりませんか」

疑った。ああ。疑ったとも。五感フルに疑ったわ。五感フルに使って五感フルに疑った。何のことだか、誰のことだか、何を言われてるのか、てにをは5W1H起承転結全て理解できなかった。出会い頭に熱々のおでん口と耳に突っ込まれて「定額給付金だよ!」って言われた方がよっぽど理解できたし、よっぽど気持ちいい。

「なんで……」

俺完全に火サス。前門に船越英一郎、後門には絶壁の断崖しかも崖下で知り合いが誰一人としていない合コンが開催されてまさに絶望オブジイヤー。なんでと聞くまでも無かったが、聞かざるを得なかった。

「いや何かいつも見てるブログにあのファッションの記事のリンクあって、そしたらなんか、アレ? ってなって」

件の、ファッションの記事とは
これ→http://picup.omocoro.jp/?eid=572
である。

はてなブックマークが千人を越し、ホットエントリにもなった怪物記事。ファッションセンスのダサさここまでのムーブメントになるなんて素直に凄いなと思ってはいたけれども、いやしかし、しかしだよ、幼馴染のファッションセンスのダサさ故にバイト先にサイトバレするなんてとこまで予想できねーよ! 見えないジャブなんてレベルじゃない、川原でシャドーしてたらノックアウトされたぐらいワケわからない。服がダサくてサイトがバレるなんざ、風が吹けば桶屋が儲かる以上の次元ワープ。

いやだが待て待て、まだこのサイトがバレた、とは限らない。彼、名前を出すのはアレだからイニシャルトークとしてO君、O君は少なくとも「上の記事を見た」といっただけでこのサイトまで辿りついていないかもしれない!

そう、そうだ。
オモコロのスタッフプロフィール一覧に俺の名前もあるしブログのリンクもあるけど、でもクリックしていない可能性ももちろん残されているし、そこでブラウザを閉じた可能性も全然あるじゃないか! そう! あるじゃないかーぁああもう無理。オモコロから俺のサイトなんてもう薄皮一枚の紙一重。うんこしにきた殺人鬼が便所に隠れてた俺の上に座って用を足してるぐらいの首皮一ミリ、クリックしてない可能性なんかほぼ無いに等しい。

まあ。うん。もう見たなら見たで構わない。
だがO君、聞いてくれ、頼むからこの事はあまり職場内に広めないでほしい。なんかもう、結構あそこでは好青年で通してたつもりだから、一人称も「僕」にしてたし口癖のように「猫? 蹴りませんよ~」とか言ってたから。なんつーかこう、平和に静かに暮らしたいんです。ね。これで明日タイムカードの名前が「岩田」から「クリトレシート」になってたら俺もうマジで即ゲロ、即ゲロだから。サイトがバレて転職とか嫌なんです、だからお願い! お願いしますO君! 勘弁して! O谷くん! Oh谷くん!

2009年08月12日 21:24


■また母親からメールかユージロー

地震。

まあ地震があったんですよ。この頃ね、二回ほど。で、道歩いてても体感できるぐらい結構大きい地震だったもんですからかねてより「東海大地震!」とか煽られてたこちとらクエイク世代としては、ついに来たか! ってなもんで。前菜か! ってなもんで。

で、うちの親さ、息子が地割れに巻き込まれるスペクタクルを見て「Whaaaaaaa!! Coooooool!」ってなんないわけで、いやむしろお前ろくに女の子の割れ目に侵入できてないくせに地球のヴァージンを全身で奪ってどうすんだよこのガイア童貞、つって父親がメールをくれたんですよ。心配をね、電波に乗せて「地震あったけど大丈夫か?」

実際地震を体感した人はわかると思うけれど、揺れはしたけどなんていうか、そこまで酷いものでもなかったから「大丈夫か?」なんて大袈裟だなとも思ったけれどそこはやっぱり俺も父親産の息子だし、岩田護産のキンタマに数年間借りさせてもらった身としては「大袈裟だよ! ヨーロッパサイズでのXL袈裟だな!」なんて邪険にするのもアレだから「うん」とだけ返信。

昔から便りが無いのはOhメルシーと言うけれども、さすがに地震があって返信がないってのはよろしくないし、それに心配されているというのは幾つになっても有難い話だと思っているとまたメール受信。オイオイ、さすがにそれは心配しすぎじゃないか? と思ってメールを見るとfrom母親。

アレ? って思った。親父が水をかぶったのかな? その昔女人が溺れたという呪いの泉の上で修行してたときついつい足を滑らせてああめんどくせえ、らんま1/2のあの設定かな? 俺にらんまって呼ばれたいのかな? って思った。しかし良く見るとどうも偽装ではなくマジ母。

「地震あったけど、どうやった?」

たったこれだけの文字数で人を混乱させる文章なんてフェルマーの最終定理以来。

別居してんのかってぐらい父母感コミュニケーションの取れてなさにもビックリしたがそれ以上に「どうやった?」の意味がわからない。完全に「修学旅行どうやった?」のノリ。もしくは「合唱コンクールどうやった?」のニュアンス。「地震あったけど、うまく止めれた?」みたいな、だとしたら先の父親からのメールの「大丈夫か?」も大分意味が変わって「初めてだけどうまく止まった? 大丈夫か?」みたいな、アレ、俺さ、地震って天災だと思ってたんだけど、何、その、生理みたいなもんなの地震って。ナプキンの使い方さえ分かれば津波の心配は無いの? 横漏れギャザーって海岸沿い一帯カバーできるぐらい凄いの?

迂闊に「うん、大丈夫」と答えては、今度石川県で大きな地震があった際にものすごいスナック感覚で「ちょっときてー!」って言われそう「タラちゃん、ちょっとそれとってー!」ぐらいのノリで言われそうで怖い。そうなったらもう持てるだけのナプキンを持って里帰りするしかないんだけど、え、度々ごめん、地震のときってみんな夜用? 昼用?

2009年08月11日 20:39


■2009A/Wコレクション

ソニア・リキエル

フランス・パリ出身。技のソニア、力のリキエル。ソニアが巧みな指捌きで仕上げたニットに、リキエルが砂とかをいっぱい詰めて子供達に配る。

攻略法:二人で行動しているときはタメ口だが、単独行動しているときに話しかけると途端に敬語になるぞ!

ドルチェ&ガッバーナ

イタリア出身。風のドルチェ、炎のガッバーナ。ドルチェでは背伸びしても届かないところにある高い本を、ガッバーナが燃やす。

攻略法:お子様の手の届かないところ、は必ずしもドルチェの手の届かないところではない!

ヴェロニク・ブランキーノ

ベルギー出身。甘党のヴェロニク、口臭のブランキーノ。ヴェロニクは糸ようじを使わなくても虫歯になったことがないし、ブランキーノは何を食べても口がニンニク臭くなる。

攻略法:ヴェロニクが「俺達のコンビ攻撃を受けてみろ!」というとき、必ずブランキーノが「え、達、って、俺も?」みたいな顔をするぞ!

アレキサンダー・マックイーン

イギリス・ロンドン出身。豪腕のアレキサンダー、保証人のマックイーン。強い信頼で結ばれた二人で、互いに「お母さん」と呼び合う。しかし本当のお母さんはヴェロニクである。アレキサンダーは薄々その事実に感づいているが、真実の究明はこのオレオ食べてからでいいか、と思っている。

攻略法:こめかみを二回押すとスリープモードになるぞ!

ヘルムート・ラング

オーストラリア・ウィーン出身。多趣味のヘルムート、融通のラング。ヘルムート今大会唯一のナイフ使いである。二本のナイフを巧みに操り、箸のようにして使う。ラングは箸を使う。ヘルムートが空けたシフトの穴を、埋めるのはいつもラング。

攻略法:いつも半袖だが、やはり気温の低い日は寒いようだぞ!


エンポリオ・アルマーニ

イタリア出身。技のエンポリオ、力のアルマーニ。ソニア・リキエルのことをライバル視している。「ライバル視してるんですよねぇ」と言ってたし、わざとらしく睨んだりもしていたので、ライバル視しているのは確実。今大会には参加していない。

攻略法:ソニア・リキエルを倒した後、一緒に死んでる可能性が高いぞ!

マーク・ジェイコブス

アメリカ・ニューヨーク出身。可燃のマーク、不燃のジェイコブス。本大会優勝最有力候補と噂されている。二人はまだ実力を隠しているのではないかという噂がたっており、その技もヴェールに包まれたままだという噂が出場者の間に広まっている。また、噂だが、実は二人ではなく三人ではないかという見方もある。これらの噂をマークは気にしていないという噂だが、噂を流したのはジェイコブスではないかという噂もある。

攻略法:とにかく謎に包まれた二人! うかつに手を出すのは危険だがイライラしてるときは殴ってもよい。

2009年08月10日 22:32


■東京マグニチュード8.0

地震ー!

地震だー!

八月九日二十時東京震度微シェイク。

さすが地震大国日本、東京だってお構いなしに揺れる揺れる縦に横に。しかも今回のは結構でかかった、震度四から五ぐらいはあったんじゃないかってえぐらいの中地震。いやしかし心配なのはサマソニだね。今まさに日本屈指のロックフェスが幕張メッセで開かれているところだろうにそこへ来てこの地震。

アーティストも客も全員ヒートアップして、多少の地震ではビクともしないぜそれでこそRock'n Roll! さあ行くぜ次の曲だ! つってるところにこの地震でステージ上のライトが、危ない! ビヨンセの頭上に落ちてきた! すぽーん! うわー! ビヨンセがライトをかぶってムッシュかまやつみたいな感じになった! おい早く誰かビヨンセを!

「あたいにマンモス任せな!」

あ、アンタは!? 酒井の姐さん!
どうして、サツにつかまったはずじゃ……。

「へっ! あたいは現代に生きる忍……くのいピの一人だよ、脱獄くらいワケないさね! ところでムッシュのかまやっつぁん、ビヨンセはどこに!?」

のりピー! そいつがビヨンセだ!

「なんだって!? こいつはムッシュかまやつじゃないか! もしくは無重力で作られたナス科のかまやつじゃないか!?」

かまやつは元々ナス科だよ! 姐さん、ビヨンセはライトをかぶされたせいでそんな感じになっちゃってるんだ。ライトを外してあげて! お願いだよ姐さん!

「そんな……これがビヨンセ……あたいには信じられない……」
「……デー……」
「何か聞こえる! かまやつの下から何か聞こえる!」
「デー……デレッデデデッデー デーデレッデデデッデー」
「これは! ビヨンセの代表曲Crazy in Loveのリフ!
 あんた! 九分九厘ビヨンセだね! 今助けてあげるよ!」

スポーン! やった! ビヨンセのライトが外れた! ビーヨンセッ! ビーヨンセッ! 「デーデレッデデデッデー!」 イエーイ! デレッデデデッデー! 「デー?」 デー! 「デレッデ?」 デデッデー! デー、デレッデデデッデー! デー、デレッデデデッデー! デー、デレッデデデッデー! デー、デレッデデデッデー! 「この地震デー?」 津波の心配はデレッデデデッデー! 「この地震デー!?」 津波の心配はデレッデデデッデー! 


あー。怖かった。

2009年08月09日 20:21


■右肩爆弾上がり

外国人怖い。

今日も今日とて書店員、だけれども売れ筋の新刊も無いしこれといってめぼしい雑誌の発売曜日でもない書店はそれこそスゲー暇。何一つやることがないので漠然と「エッチな染みのついたパンティとかつおだしのよく染み込んだパンティ、どっちがおでん屋にとって価値のあるものなのだろう」とか思ってたら外国人が来た。

肌は浅黒く顔の堀は深い、ワンピースを「あーあるある」つって読みそうなほどのカリブ面。顔だけ見ると家伝・スライディング靴舐めを条件反射的に発動させてしまいそうなほど怖いんだけど、ジーンズに黒い長袖のポロシャツ、革靴と深緑のキャスケットにサングラスという出で立ちが見惚れるほどに似合ってる。
もし俺が赤絨毯持ってたら完全敷いてる。
「祝! 来日!」って言いながら敷いてる。

そんなこんなで軽く眼で追ってたら視線に気づいたのかカリブが俺の方にずんずん歩いてきた。

ヤバイ、って思った。
っていうかもうちょっと言ってた。

客がレジに歩いてくるのにヤバがる俺の接客センスもどうかと思うけれど聞いてよ、超怖いんだから。想像して、身長二メートルに届こうかという棗顔の外国人だよ。AK-47と対戦車砲を小脇に抱えながらだよ? 胸にはAKの銃弾がこう、十字に襷がけになってて「ビーッチ!」って言いながら歩いてくんだよ!? そんなの誰だって逃げ腰になるじゃん、武田鉄矢だって飛び出すの見送って「まあ、百二回目のプロポーズで頑張ればいいか」って思うレベルの暴走トラックじゃん!

これが俺店内をフリーで動いてたんなら煙幕張って丸太に衣服着せてドロンすりゃ済むんだけど如何せんレジだし店内に俺一人だし完全に逃げ場無しで「hey」来た。脳内ドームでうんこ八回漏らす予告出しながら「はい?」ってホント「蚊の鳴くような声だな!」って、蚊に言われるぐらいの声で応対。カリブはサングラスをきゅっと外し、にっと笑って、指でこう、小さい四角を作って俺に向けてきて、ああ、その時初めて気づいたんだけど、

カリブの着てるシャツ、長袖じゃなかった。

もうベタ過ぎて少し笑っちゃった。
長袖じゃなくて全然半袖だった。俺が長袖の柄だと思ってたのは、柄じゃなくてカリブの腕に彫られた刺青。んでまたその刺青ってのが、肩口から伸びた無数の蛇が絡み合いながら、中指に伸びていくっていうホントもう何それ、何その中指への異常な愛情。ファックユーにそんなに全身全霊込めてる人アタクシ、この番組長いですけど初めてでしてよ。

頭ん中の黒柳徹子がラストミステリー正解し損ねるほど動揺してるとカリブが口を開いて「...dictionary」

「dick(ちんぽ) show(祭り) marry(結婚)」
なるほど今ここで俺を犯して、その逸物に俺を洗濯物みたいにかけてお持ち帰るってそういうことか! って思ってたら今度はスゲーゆっくり

「dic,tio,nary,english to japanese.....where can i have?」

これはさすがに聞き取れた。なるほど、辞書、辞書ね。まず辞書で俺を殴って昏倒させてからってことか! じゃあこのもっとも掲載単語数の多い辞書はいかがですか!? 「nah」え、もっと分厚いヤツ所望? そんなの書店じゃなくて板金行ったほうが早いよ?

頭上に浮かぶ無数の?マークでアフロみたいな髪型になってると、カリブが胸ポケットをぽんぽんと叩いて、また小さい四角を作った。

あ、なるほど、なるほど、そういうことね、これから俺は奴隷市場に連れて行かれるわけだから道中持ち歩ける辞書が必要ってことね! あーなるほどね! じゃあこの当店最小の辞書はいかがですか!「ah,cool」そしてパラパラめくり始めて"buy"の項目を指差し「買、う、です」俺を!? 「this」辞書を指差す。ハハッ! 最後に書店員の仕事をさせてやろうってことか! いいだろう1890円になりますとも! 会計を済ませた辞書をまたパラパラめくって、ああ今度こそ、今度こそか! thank youのところを指差しながら、
「あり、がとう」
稼がせてくれてありがとうってことか! はいどうもこちらこそー!
にっと笑うカリブ。
へへっ、どうするの!?
またサングラスをかけなおすカリブ。
さあ、俺をどうするの!?
大股に去っていくカリブ。
なるほどねー! あーなるほど! えーと! うーん!


テンション間違えたー!

2009年08月08日 22:22


■最後の一次会

「イエス様、一体どうされたのですか?
 我ら十二使徒を集めて……何か重要な話でも?」
「よく聞きなさい我が子であり友たちよ
 私はゴルゴダの丘で、十字に磔られるであろう
 そしてそれは、そなたらのうち一人の手引きによるであろう」
「我らの中に裏切り者がいるとでも?」
「それは裏切りではない。誰かが為さねばならぬことなのだよヨハネ」
「その者は、なぜそのようなことを」
「人の原罪は、誰かが購わなければならないものなのだ、ペトロよ
 そのものの行いは罪ではない、私が磔られるのは、宿命なのだ」
「(この中に……裏切り者が……)」
「(信じられん……しかし主が……)」
「これから私がある者に、パンをワインに浸したものを与える
 その者こそが『為す者』である」
「バカな……到底捨て置けません! 主よ!」
「恨んではいけない。責めてはいけないのだ、マタイ。
 彼の者は、為すべきことを為すだけなのだ」
「(そんな、まさか……)」
「(見ろ、主がパンを手に取った!)」
「はい失礼しまーす! こちらお通しのパンのワイン浸しになりまーす!
 はい十三名様ですねーお飲み物お決まりでしたらお伺いいたしますがー!?」」
「あ……」
「え……」
「主……イエス様?」
「あーえーと……えーちょっとまってね
 (ちょっと! 何これ!? こないだ佃煮だったじゃん!)」
「あ、本日のお通しはこちらになりまーす!」
「(そんなこと聞いてんじゃないよ! もう! パン持ち込んだ俺がバカみたいじゃん!)」
「あ、お客様飲食物の持ち込みはご遠慮ねがえますかー!?」
「(元気よく注意すんなよ! スゲェ見られてるじゃん! 神の子なのに俺!)」
「お飲み物はー!? お決まりですかー?」
「(聞けよ話!)」
「い、イエス様?」
「あーうん、いやいや、んーと、あ、そうそう!
 これから私が生中を注文して与えるものこそが『為す者』であり
「僕、生」
「ヨハネー!」
「あ、俺も」
「ペトロー!?」
「私も」
「マッターイ!」
「はい生の方ー!? えー、いち、にい……十二名でよろしいですかー!? 他お飲み物のご注文ございますかー!?」
「イエス様何にします?」
「何にしますかじゃないよヨハネお前、邪魔すんなよ!」
「だって早く決めないよ店の回転に支障出ますよ」
「何で飲食店側なんだよお前! 今回は楽しく飲むのが目的じゃないの!」
「え、そうなんですか?」
「最初の空気で大体わかんだろそんなの!」
「いや何か酒マズくなりそうな話だったし」
「主! 俺主! 主の扱い雑くね!?」
「こちらのお客様お飲み物わー!?」
「あ……ハイボールで」
「はい承りましたー!
 お食事の方は、あとでお伺いいたしますかー!?」
「あーはい、あとで言うんで……
 あ! なんこつ唐揚げだけください!」
「はーい! かしこまりましたー!」

* * *

「はいお待たせいたしましたー!
 こちら生中と……ハイボールですねー!
 で、こちらがなんこつ唐揚げになりまーす!」
「うむ、うん、よし、良いか皆、聞きたまえ
 これから私が取り分けた唐揚げにレモンをかけたものを、ある者に与える
 その者こそが『為す
「カンパーイ!」
「ヨハネー!」
「お疲れしたー!」
「ペトロー!?」
「あ、レモンかけちゃいますねー」
「マッターイ!」
「なんですか、はしゃぎすぎですよ」
「お前勝手にレモンかけちゃうなよ!」
「だってこん中にレモンダメな人いないし」
「違うじゃん! 今日のレモンは特別な意味があるんじゃん! C-5000ぐらいのビタミンが含まれてるんじゃん!」
「マジもう酔ってるんですかモジャさん」
「何だよそのあだ名! もういいよ!
 すいませーん!」
「はーい! ご注文どうぞー!」
「チヂミください!」
「はいかしこまりましたー!」
「いいか! 俺が! 今からチヂミを渡すものが! 裏切り者だからな! そいつはそれ食ったら三千円置いて帰れよ! あとヨハネ! お前チヂミ絶対とんなよ!」
「俺こないだ韓国行ったんで。
 あ、知ってます? 韓国だと屋台とかで普通にチヂミ売ってて」
「うるせーし! 
 知らねーし!
 知る予定もねーし! 
 いいから手出すなよ、な!」
「はいお待たせしましたー! こちらチヂミになりまーす!」
「よし! 
 見てろ裏切り者コイツをお前の顔面に何コレ熱っつぃ!」
「あ、鉄板熱くなってますから気をつけてくださいねー!」
「熱っつい! 熱い! マタイ! 耳貸して耳!」
「マタイの耳で指冷やしてっ、るっ! ウケるっ! はっ!
 福音ならぬ、マタイの福耳っ!」
「すいませんねぇ~このモジャロン毛酔ってるみたいで」
「ヨぉハネー!」
「これお好み焼きとは違うんですか? でも旨いすね」
「ペトロぉー!?」
「すいません俺もチヂミー」
「マッターイ!」

* * *

「でぇ、誰が裏切るんすかぁ? モジャ公さぁん!」
「うっせぇーよ、もう言わねぇ、絶対ぇ言わねぇし!」
「スネんなよ! うはっ! 神の子スネてるしょべぇ!」
「ちょっと飲みすぎですよ、お冷頼んできますね」
「酔ってねぇよユダ! ハゲ! 余計なことすんじゃねぇよテメェ裏切るくせに!」
「ぶっはー! ユダお前裏切んのかよ!」
「いや、私は、決してそのような」
「写メ撮っていい? ねえ写メいい?」
「ちょっとやめ、やめてください!」
「ヨハネー!」
「はい?」
「ペトロー!」
「んー」
「マッターイ!
 次の店行くぞ、次! うめぇやきとん屋があんだよ……吉祥寺には……
 ユダぁ! お前会計しとけよ! 金貨もらってんだろ! なあ!」
「……せぇなモジャロン毛……」
「何か言ったか、ユダぁ!」

2009年08月07日 20:17


■そして今日に至る

タイムマシンほしー。

この八月で、っていうかあの七月で東京に来てからフル一年が経とうとしてるっていうか経ったよ経った。とっくに経った経ったよ、経った経ったわ! クララが脚を患ってから十五年の月日が経って、クララが立ったわ! ハイジ「おっせー」

だというのに、未だに俺は東京に馴染んでる気がしない、ってのもそれはそう。ほとんどが国分寺市内で済む生活を送っているし、たまに都心に出るとしても新宿か渋谷かごく稀に池袋か。それ以外の山手線の駅なんざこないだのスタンプラリーで初めて行ったような所ばかり。これではおのぼりさん、完全なおのぼりさん。

あータイムマシンほしい。

俺は一年何をやってきたんだ。いや何かしらをやってきたんだろうとは思う。それは俺の血肉になってるんだろうとも思う。しかしながらその唯一東京で培ったと言える血肉を「お腹がすいたのかい!? なら僕の血肉をお食べよ!」っつって松屋でカレーの福神漬けの量が少ないってキレてる親父にあげてたりしたもんだからね。そら一年経っても丸裸ですよ。

思えば東京に来た初日、俺はここで何をしてたか、そう、寝てた。寝てたわ。知らない土地怖いし、誰か来たら心配だし、っつって寝てた。起きたら不在通知五通ぐらい入ってた。ダメだ。こんなの誰がどう見積もったってダメだ。タイムマシンだ、やり直したい。人生を最初からなんてダルいことは言わない、東京初日からやり直したい!

「ようやくタイムマシンに乗る決意をしてくれたか!」
「その声は! 照焼ソーセー次郎博士!」
「これじゃ! これがワシの発明した『過去に戻ルタレン軟膏』じゃ! 今すぐこれを太股の内側に塗るんじゃ!」
「あーっ……すっごいヒンヤリして筋肉の疲れ、そして凝りがほぐれてく感じがします」
「スポーツの後はこれじゃよ」
「ほら、脚がすっごい軽いですよ。さっきまで筋肉痛で動けなかったのに、すぐ走れそうな感じです。ほらほら、どうです、ほらほら、すごい速く走れるでしょ、ほら、あ、光の速度を、超えっ」

バシュンッ

「成功じゃ! 光速を超えることで時間というくびきから逃れたのじゃ!」

ここは……あの日、あの時の東京だ! 俺が東京に来た初日だ! やった! 戻ることが出来たんだ! よし、これからの一年はより充実したものにするぞ、なんたって何が起こるかわかってるんだからな。えーと、一年か、長いな。まあ初日だしとりあえず今日は寝とくか。

2009年08月06日 22:28


■そう呟いた母の顔は、やつれて見えた。

「うわーんうわーんお腹が好いたよー」
「カバ夫くん!」
「あ、アンパンマン!」
「お腹が空いたのかい? なら僕のパンティをお嗅ぎ!」
「クンカクンカ」
「ハフッハフッ」
「クンカクンカ」
「ハフッハフッ」

っていうメールを無差別に送ろうかと思うぐらいに夏エンジョイしてるんだけど、何、やっぱりみんなあれなの、海に山に花火大会に、家族と恋人と友人とレジャーに赴いたりしてるわけ。レジャー行軍なわけ。板垣死すともバカンスしてね! なわけ。

いやーもーホントそういうの結構なんだけどさーそうやって君らがレジャー先でチキン食ってられんのも俺が毎晩毎晩ちくわにICBM通した核ちくで怪鳥ロックを落としては市場に卸してるお陰だからね? ケンタッキーとかマジ俺に感謝すべきだし、サンダースの顔を徐々に俺の面にモーフィングして然るべきだよ。

つって。

愚痴ってるだけの夏はもう終わり。今まではホント、怪鳥ロックに俺のストレスもぶつけてたところはあったけどこの夏は違うわ、やめるわもそういうの。俺も夏楽しむ、エンジョイしちゃう、レジャーしちゃう!

愚痴ってばかりじゃ人は成長しないんだ。だから俺もこの夏は海に行って両手に両額に花火持っては家族連れを追い回すクリーチャーになってライフセーバーに射殺されるし、山に行っては恋人たちの今にも恋人繋ぎをしようとする手と手の間にホカホカのおにぎりを投げ込んで指の間からノリみたいな米粒がにゅうっとでるように仕向ける産土神として地元猟師に射殺されるわ! よーし、手始めにしろくまアイスの価格設定について今度愚痴っチャオ!(いいね!)

2009年08月05日 22:33


■私の頭の中の円楽



「皆さんが私の股間をまさぐったら、私が『キャッ 痴漢!』と言いながらも満更ではない顔をするので、そこでおもしろい一言をどうぞ」



「皆さんが私の鎖骨をねらってかかと落としをしてきたら、私が両腕でそれを受け止めそのままアキレス健固めに以降するので、そこでカウントが三つ入るまでにおもしろい一言をどうぞ」



「皆さんが『逃げろ!』とおっしゃったら私が『え、何て?』といいますのでそこで皆さんがまた『逃げろ、に、げ、ろ!』と、そうしたら私が『ごめん電波悪い、何何?』と言いますから、そしたら皆さんは『だから逃げろっつってんだろ?』とおっしゃってください。その時に私が『リベロ?』と聞き返しますので、そこでおもしろい一言をどうぞ」



「私が乳首でプラスネジを開けますので、そこでおもしろい一言をどうぞ」



「私が皆さんのアドバイスを聞かずに赤い導線を切りますので、そこでおもしろい爆発をどうぞ」



「皆さんがおもしろい一言をおっしゃった後、私が『まだ冗談を言う元気があるようだな、座布団の電流を強くしろ』と言いますので、そこでおもしろい軍事機密をどうぞ」



「ククク、バカな人間どもよ。これも全て儀式の一つ。大喜利をしているように見えるがその実言霊による洗脳支配が着々と進んでいるのだ! クハハハ! だがもう遅い、貴様らはもう充分に言霊による支配を受けた。あとは我輩が言霊を発動するだけで貴様らはまるでロボットのように我輩の意のまま気の向くままに動くただの肉人形と化す! 喜べ、そうなった暁には貴様らを恐怖心の無い最強の軍団として世界に宣戦布告をする! 蹂躙し支配し破壊の限りをつくすMerciless Armyよ、征け! 焼け! 犯しつくせ! いずれ世界が我が御旗の下にひざまづく、その栄えある記念日に貴様ら愚民どもは我輩という神を見るであろう! その日その時その瞬間に凱歌を歌え! 信仰を熾せ! 我を讃え、おもしろい一言をどうぞ」

2009年08月04日 22:06


■好意の作法

休日だったからポケモンスタンプラリーに行ってきた。

あまりの過酷さ死傷者の多さ故に、長く日本での開催が禁止されていたがこの夏、ワックワク☆ドッキドキのポケモン新作映画が公開されるということでキャンペーンの一環として全国の小学生とその保護者の脚に乳酸を溜めようという目論み、それがポケモンスタンプラリー。

無料配布のパンフレットに六つのスタンプを押すだけなのだがスタンプカウンター設置時間が午前九時半から午後四時までという、二十五歳成人男性を全く考慮しないampmになっているため、パンフをもらいはしたものの半ば諦めていた。が、しかし、スタンプを集めればピカチュウサンバイザーがもらえるという情報を耳にし一念発起。前日から入念に準備を進め、今朝十時、スタンプラリーへ男一丁ご出陣。
ただ偏に、ピカチュウサンバイザーのために。

午前十時半―西国分寺

最短六駅で済むとはいえスタンプカウンターは改札の外。乗り降りする運賃を考えると相当な出費になるし、その辺にいるジャリを捕まえ、かば焼きさん太郎握らせてスタンプを押してこさせたとしても手間がかかる上、ジャリが我が軍を裏切るリスクもあるため素直に都区内フリーチケットを買う。

一日だけ、山手線を中心とした都区内の駅に乗り降りし放題で740円という夢のような切符。これを握り締め、まずは西国分寺を出発。

西国分寺→代々木

計画したルートは代々木→目黒→田町→神田→日暮里→巣鴨、ククク、もう既に気づいたとは思うが、この駅を全て線で繋ぐと……ククッ! ダビデの星、六芒星が出来上がる! フハハハ! だがもう遅い! 貴様らがこの日記を呼んでいる頃、儀式は全て終了し、六芒星の中心、すなわち市ヶ谷には邪神アスモデウスがその寧猛な牙を人類に振り下ろしているだろうよ! ハーッハハハハハ!

いざ絶望の一里塚、代々木へ!


午前十一時半―千駄ヶ谷

千駄ヶ谷にピカチュウのスタンプあるんだってー! イエーイ!

千駄ヶ谷のスタンプカウンター。まだ午前中だと言うのに子連れがチラホラ見受けられる。画像からは判別つかないだろうが、俺はまだ朝勃ちが持続している状態だ。
勃起したままスタンプカウンターに向かう。

ピカチュウゲットだぜ!

ピカチュウ にくしょくポケモン

ネズミのような格好をしており、山野に住む。「ピカチュウ、ピカチュウ」というような鳴き声を発し、ピカチュウが軒先で鳴くとその家には二度と子供が生まれなくなるという。回避するためにはピカチュウを捕まえ、尻尾のギザギザしたところをヤスリでこすり「すいませんした」と言わせなければいけない。性格は獰猛で好戦的。素早い身のこなしで顔に飛び掛り、腹にある口で噛み砕こうとしてくる。庄内地方では「ピカ獣」とも呼ばれる。耳の黒い部分は垢であり、舐めると苦いがコーヒーにいれるとうまい。

千駄ヶ谷→秋葉原

戻って山手線に乗りなおすのもなんか面倒なので、そのまま総武線で秋葉原へ。

午前十二時―秋葉原

この駅で押せるスタンプは、シークレットスタンプという特殊なものらしく、千駄ヶ谷以上にジャリジャリしておりノーモア二十五歳の空気が充満していた。

だが年金を払ってない俺に、その程度で潰れるプライドなぞもう無い。

シークレットスタンプゲットだぜ!

ピカチュウ&ギザみみピチュー ひきょうポケモン

ピカチュウの亜種。二種一対のコンビネーションを活かして襲ってくる。ピカチュウが前足で相手の目に砂をかけ、ピチューがギザみみで急所を狙う。ピチューの耳がギザみみなのは、負わせた怪我を治りにくくするためであり、たとえ返り討ちにあったとしても治癒しきらない怪我を残すことで、闇討ちによる復讐を成功させるのだという。ピカチュウとピチューはとても仲良しで、ピカチュウが格ゲーをやってるのを見ると、何も言わずに両替をして投入口にコインを積んでくれるほどである。

秋葉原→浜松町

何だよ秋葉原にピカチュウスタンプあるんなら、やっぱ代々木でスタンプ押してくればよかった。おかげでダビデの星計画が大幅に狂ってしまった。しかしまだ俺は諦めてはいない。千駄ヶ谷→秋葉原→浜松町で一つ目の三角形が完成する……!

午後十二時過ぎ―浜松町

フハーハハハハハハ!

ガーハハハハハハハ!

イーブイ あっせんポケモン

バイトも探さないでウダウダしているフリーターに、職を斡旋するポケモン。最初は楽だが時給の悪いバイトばかり紹介し、調子に乗ったフリーターが「もっと金のいいバイトないんすか?」と詰め寄れば、一転して時給は良いがキツくて遠いばかりでなく辞めづらいバイトを紹介する習性を持つ。平日の昼間は連絡がとれない。

浜松町→上野

ダビデの星とかマジめんどくさい。

午後一時―上野

しまった。しくじった。上野はスタンプ駅ではなくゴール駅だった!
ゴール駅は、スタンプが六つ揃ったパンフレットとピカ獣タンホイザーを引き換えるための駅で、スタンプカウンターは設置されていない!

途方に暮れた俺はとりあえず頭を冷やし、今後のプランを練るため上野公園へ。

ピジョン ハトポケモン

サイゴドン&ノットニャース さつまポケモン

とりあえず、このまま山手線を北上していこう。最終ゴール地点を新宿と定めれば、それまでにどこかであと三つスタンプを押せばいいんだから簡単だ。時間もまだたっぷりある。ふむ。

だったら何か、レアっぽいポケモンのスタンプも押しておきたいな。せっかくだし、こう、主役張れるようなカッコイイやつを……、などとパンフレットのポケモン分布図を眺める。有象無象のポケモンが各駅に配置されておりそれはまるで一見ランダム配置のようにみえるが……。
ここで重大な事実に気づく。

都心にいるポケモン、脇役ばっかり。

ピカチュウは除外するとして、映画などで主役やライバルを張る強力なポケモン達は全て郊外に追いやられているのだ。

例えばダークライは千葉、ミュウツーは八王子、ディアルガは大宮、パルキア・ルギア・フリーザーなどの幻ポケモンに至っては全部横浜! 比べて都心はどうだ。原宿にイシツブテ、五反田にキャモメ、日暮里にニャースと来たもんだ! ふざけんな!

そういえば今まで押してきたポケモンも木っ端なものばかりだった……このままではスタンプが全て脇ポケモンで埋まってしまう! カブトムシ取りに山いったはずなのに何か山菜ばっか取って帰ってきたなお前みたいなヤツになる! 

なんとか都区内フリーチケットの圏内でイカしたポケモンはないかと必死に探すと……あった! 一駅だけ! 赤羽! 赤羽には何と新作映画の主人公格ポケモン・アルセウスがいる!

ルートは決まった。京浜東北線で赤羽まで行き、そこから埼京線で新宿に戻る。赤羽までにアルセウス以外のスタンプを押しておけば完璧だ。だがしかし! 日暮里のニャースは嫌だし鶯谷のウソッキーに至ってはお前ただのダジャレじゃねーか! かくなる上は!

上野→田端

午後一時半―田端

ここなら! ここならばきっと!
きっと俺も満足し得る伝説のポケモンが!

ナメてんのか。

田端→赤羽

午後一時半―王子

呼ばれた気がしたので、降りた。

ピジョン はとポケモン

「スタンプラリーとかしてる場合なんすか(笑)?」

スポミー ダメだしポケモン

居酒屋やバーなどで女の子を口説いていると現れるポケモン。口説き文句が陳腐なものであったり、到底それじゃオトせないものだったりすると頭の上に大きな×を作りダメだしをする。スポミーが現れるということは、その時点で結構もうヤバい空気になっているということなので、×を出すまでもなく女の子がまだ九時だというのに「終電が」といって帰ってしまうことが多い。女の子が帰って一人になった後、肩をポンッと叩いてくる習性がある。そのとき逆上してスポミーに殴りかかろうとすると「おおっと! へへっ!」と鳴く。頼んだ唐揚げに勝手にレモンをかけると死ぬ。

王子→赤羽

二時―赤羽

さあ赤羽。結構栄えてる駅な上に、置かれてるスタンプも新作映画主人公のアルセウスということでジャリ度マックス。駅員もそれを察知してか、王子駅の五倍ぐらいの駅員が「走らないでねー」「ちゃんと並んでねー」と、注意を促していた。俺はもちろん走ったりはしないし、ちゃんと列にも並んで待っていたのだけれども、何故か一番見られた。

アルセウス そうぞうポケモン

千本の腕で宇宙を創ったポケモンとして、神話に描かれている。(ゲーム内説明ママ)

まさかの赤羽ビッグバン。

しかしこれでスタンプは六種類揃った。あとはこのパンフレットを胃下垂サンバルカンとやらと交換してくればラリー終了だ!

しかし思ったより早く六種類スタンプが揃ってしまったので時間が余ってしまった。そろそろ朝勃ちも収まりお腹も減ったので赤羽で昼食を取ることにした。ショッピングモール地下のレストラン街でインド料理屋に入る。

ランチで、カレーとナンとドリンクそしてタンドールチキンがつくという結構なボリューム。一応、ブログをやってる身として一般に倣い店員に「お料理の写真取ってもいいですか?」と尋ねると、笑顔で「皆やってる」と言ってくれた。オッケーだと判断したが、裁判にされれば負けるなと思った。
こちらがランチメニュー画像

キーマカレー。見た目に反して割とアッサリとした味付け。

ナン。見た目からはわからないかもしれないが、かなりモチモチしており食べ応えがある。

コールスロー。少しドレッシングが酸っぱかったかな。でもいい箸休め。

ピジョン ほねポケモン

ごちそうさまでした。
お腹も膨れたし新宿へ。

赤羽→新宿

午後三時―新宿

案内に沿ってゴールカウンターに向かうと、完全に疲れきった顔の女子バイトが迎えてくれた。ピカチュウサンバイザーをかぶってはいるものの生気が全くない。三蔵の念仏でサンバイザーがギリギリ頭を締め付けているとでも考えなければ説明がつかないほど顔がやつれてる。

まあ、一日中子供のテンション目の当たりにしてれば仕方ないか、などとひとりごちてパンフレットとサンバイザーを交換してもらう。やったー! サンバイザーとスタンプ帳ゲットだぜ! ゲットだぜー! スタンプ帳! ん、スタ……ンプ帳……?

2009年08月03日 20:11


■どこかで失くしたアイツのアイツ

電車内での化粧。

別に電車内で化粧をすること自体に何の感慨も沸かないので「電車の中で化粧をする女性」に関してとやかく言うつもりはないんだけど、一つ、そういう子たちに聞きたいっていうか不思議なことがある。

なんか、変わってるの?

こないだたまたま化粧しようとしてる女の子を見つけたから、ずっと観察してたの。夏休みだし、アゲアゲの自由研究心で「セミってこうやって羽化するんだー」って感じで見てた。でも、なんか、化粧する前とした後の違いが全然わからない。

いやまあ確かに俺の目は節穴だよ。
母親が俺を産んだとき何かコロコロしたのが二個余ったんだけどこれ何? え? 丸いの二個なら金玉じゃねーの? ってことで眼球はないけど金玉四つあるみたいな状況だからね。だから化粧どうのじゃなくてテメェの眼力が右目0.0001で左目眼帯同然です、ってなもんだろう。それでも一つも違いが見つかんないってこと、あるの?

いやそりゃちょっとは変わってた、目の下に泥みたいなのがついてたし。でも、基本全然変わってないじゃん。俺としては、もっと劇的な、ちょっと可愛い岩石がアジアンビューティになっていく、そういう様を見たかったんだけど、ちょっと可愛い岩石が、泥のついた岩石になっただけだからね。そんなの化粧じゃなくて、すぐ近くを除雪車が通ってもなるよ。

で、わかった。俺わかった。
電車内での化粧があんなにダメダメ言われてる理由がわかった。
要するに、見てる方が「ガッカリ」するからだ。
二十分ぐらいかけてペタペタやってる割に全然変わらないじゃん、もー期待して損こいた! ってなるからじゃあもういっそ禁止ってことになったに違いない。

だって冷静に考えりゃそりゃそうさ、もし化粧でホントに別人のように、見違えるようにキレイになるならそんなのむしろ見たい。そんなイリュージョンをタダで、しかも眼前で拝めるならむしろウェルカムに決まってる。

最後眉をしゅっと引いて、わっ、まるで別人だ! なんてことが出来たらもうブラボー! ブラボー! U・S・A! U・S・A! のコールと乗客総立ち万雷の拍手で車両は大興奮のまま『次は~山手線ウィニングラン~ウィニングランでございまーす』つって化粧してた女子高生が窓から身を乗りだしてホームにいるオーディエンスに「センキュークソどもー!」って言いながら豚の臓物投げつけるでしょ、そうなっちゃうもん。実際そうじゃないってことは、化粧なんて無力ってことなんだよ。結局は気休めなんだよ。もっと内側からキレイになる方法を実践して、三十代からさらに輝けるオンナを目指した方がいいと思うわ。このあたし。この桃井はね。

2009年08月02日 21:59


■校門前のエマニエル婦人像が夜な夜な足を組みかえるという噂

なんかさー注意書きとかホント読まない客いるよね。店内のいたるところに「トイレは三階です」って書いてあるにも関わらず、そんなものはお構いなしに、むしろその張り紙の目の前で「トイレとかないんですか?」って聞いてきたりする客。何、トイレ『とか』って何、トイレor some soってこと? トイレみたいなものだったら何でもいいの? え、じゃあ俺がスコップをお前のケツの後ろに持っていったら「あ、じゃあ」ってうんこなの? 「あ、じゃあ」で済まされる狼藉だと思ってんの? まあ「トイレどこですか?」でも充分アレなんだけどな! 張り紙読めよ! って思うんだけどな! そういうとき大体俺はその張り紙をチラッと見てから、「三階にございます」って言うからね。あれ? トイレの位置変わったのかな? 誰かトイレの横にある▽マークのボタン押しちゃったのかな? って思っちゃうからね! ウソ思わないッスぅ~イヤミッスぅ~イヤミのサービスになりますぅ~あちらにイヤミバーがございますのでご自由にお取りくださぃ~当店をイヤミでお知りになったお客様にはシャンプーの試供品をプレゼントしておりますぅ~! まあでもねでもさ、トイレを探して切羽詰ってるときって周りなんか見てられないよね。張り紙なんて、あってないようなもんだし、やっぱり店員に聞いちゃうよね。それは悪じゃないよ。人は善悪じゃ判断できないんだ。心の温かさが、その優しさが人類を豊かにしていくんだよ……。


そういう想いを込めてこの曲を作ったそうです。それではどうぞ今週第二位、ブリトニー・スピアーズで『Toxic』

2009年08月01日 22:30


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