■ばかおんな
「もういい……もううんざりよ、あたし、もうこんなのうんざりよ!」
「……そうか」
「そうか、って何よ! あなたはいつもそう! 少しでもあなたが私を幸せにしてくれるとか思った私が馬鹿だったわ! 仕事もしない! 口を開けば「飯、風呂」 そのくせ自分じゃ掃除も洗濯もしない! 何よこんな靴下! こんなくっさい靴下こんなところに脱ぎ散らかして! こんなもの、こんなものこうして、こうして、こう脱水して、こう広げて干してやるわ!」
「……そうか」
「そうか、って……はんっ、わかったわ、どうせあなた、私がまた口だけだと思ってるでしょ! ヒステリー女の、気まぐれで言ってるんだと思ってるんでしょ! 私だってやるときはやるんですからね、もう! どいて、どきなさいよ! いまさら何よ! どいてってば! あなたの下の畳に染み付いたしょうゆ、今日こそ取ってやるんだから! 私が口だけじゃないって、教えてやるわ! 中性洗剤をこうして! ホホホ! 何よキッコーマンなんて、偉そうに気取って! これからは女性の時代なの! キッコーウーマンの時代なのよ!」
「……そうか」
「きぃいいい! あなたなんてどうせ私がいないとご飯だって作れないくせに! せいぜいが野菜炒めしか作れないんでしょどうせ! ほら! 作ってみなさいよ! 冷蔵庫にある食材で、作ってみなさいよ! こんなものぐちゃぐちゃに捨ててやるわ! あなたなんて餓死してしまえばいいのよ! ほぅら! ありったけの食材をぶちまけて、醤油とみりんと砂糖とだし汁でびちゃびちゃになっちゃったわ! あははは! 見れたもんじゃない! さらにこれを煮込んで蓋をすればすき焼きの……え、春菊がない! 春菊がないじゃない!」
「……そうか」
「あなたは私から、春菊さえも奪うっていうの! 幸せな家庭、幸せな未来を奪っておいて……春菊さえも! もう出て行きますからね! あーもうせいせいするわ! 出て行きますとも! 聞いてるの!? ねえ! 何か買ってきて欲しいものは!?」
「……コーラ」
「ペプシ!? コカ!? あたしにどうしろっていうのよ!」
「……コカ」
「二リットルも持てるわけないじゃない!」
「……500でいい」
「そ、そうやって……いつもこんなときだけ、やさしくして……! もう、馬鹿っ……!」
2008年02月04日 18:13