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■しかしクズはあるものを残した。ゴミである。

クズである。

最近はまったくクズである僕である。まこと生きるために必要なことだけ、それすら面倒くせえの一点張りでやっとこ行っているだけのクズである。これでは何かを生み出すことも、あるいは何かを得ることも適うはずがない。クズである。正真正銘のクズである。世界中のクズを集めて、ふるいにかけ選りすぐりのクズを水と空気の綺麗な高山地帯の流氷の中で、永い永い年月をかけ超圧縮し不純物の一切を取り除いた挙句、宇宙に光速で放り投げその身の凹凸をダークマターの超微粒子摩擦によって極限まで滑らかに鍛えあげたそのクズの放つ光は、地球からはまるでクズのように見える(これをクズ方偏移という)その光は太陽と木星とクズと地球が一直線上に並ぶとき発生する超重力磁場によって世界中にオーロラ(クズのカーテン)を呼び起こし、その光を浴びたものは例外なくクズになり、クズのもとに集い、クズのための国家を設立し、民主クズ制によって統治されたが三日で滅亡した。

全員クズだったからである。

2008年05月21日 23:16


■予定調和の因果律

「無人島ね」
「無人島だねー」
「アンタのん気ね、アタシら無人島に閉じ込められてんのよ」
「だって、騒いだって仕方ないじゃん」
「まあね、じゃあとりあえずアタシは食べられるもの探してくるから。アンタは火でも起こしてて」
「火、って、ライターとかないよ!」
「どうせ後ろのポケットにどこかでもらったマッチとか残ってんでしょ」
「あ、ほんとだ! お姉ちゃん凄い!」
「じゃ、行ってくるから」
「でも、食べられるものなんてあるの!?」
「よくあるでしょこの手の映画で『これぐらいしか食べられるものが無かった』って台詞
 つまりそれぐらいは食べられるものがあるってことよ」
「そっかー」

* * *

「よしっ、火は起こせた……お姉ちゃんまだかな

 あ! 船だ! おーい! おーい! こっちだよー! おーい!」
「何一人で騒いでんのよ、潮風でシナプスでも錆びたんじゃないの」
「あ、お姉ちゃん!
 だって、船が!」
「あの手の船はどうせ気づかないわよ。
 もしこっちに向かってきたとしたら大抵エイリアンに占拠された後だから、むしろ来なくて正解」
「そっかー残念
 あ、食べるものあった?」
「これぐらいしか無かった」
「見たことない果物だね、食べられるの?」
「大丈夫よ。たいてい大丈夫なもんだから」
「あ、ほんとだ、おいしい
 でもこれからどうするの」
「そーね、とりあえず二時間交代で眠ろうか」
「そうだね、疲れちゃったしね」
「あ、で、アンタ自分の番のとき近くの森までトイレ行きな」
「なんで?」
「この状況打破するにはそれしかないの、いいから行きな」

* * *

「うー……やっぱり夏とはいえ夜は冷えるなー……
 トイレいきたくなっちゃった……ちょっと行ってこようっと」

きゃー!

「お?」
「お、おね、お姉ちゃん!」
「よしよし、どうした?」
「ぞ、ゾンビが!」
「そのパターンかー」
「た、たすけ、助けて!」
「あーほんとにゾンビだわね。よし、じゃあこの燃えてる薪を投げつけて、と」
「うー、怖かったよー!」
「よしよし、もう大丈夫」
「でも、もしあんなのが一杯襲ってきたら、今度こそ食べられちゃうよ!」
「いや大丈夫、ゾンビの体漁ってみな」
「え、うーん……何か腐ったトーストみたいな匂いする……
 あ! 拳銃だ! あと何故か日誌みたいなのが燃えずに残ってた!」
「上出来上出来
 じゃ、もっかい漁ってみな」
「あれっ、さっきは見つからなかった銃の弾が見つかったよ!」
「うんうん、じゃ、行こうか」
「お姉ちゃん、日誌読まなくていいの?」
「いいよそんなの、大体核心とは程遠いもんだから」
「ちょ、ちょっと、どこ行くの?」
「ゾンビの来た方向よ」
「え、えええ、わ、私ここでお留守番してていい?」
「駄目よ。アンタの背丈でしか通れない通風孔とかどうせあるんだから」
「えええー!」

* * *

「こんなところに、研究所なんてあったんだね。昼間はこんなの見えなかったのに……」
「まあ、そういうもんよ」
「でも長いこと使われてないみたいだよ
 ほら、あそこの用水路なんてツタだらけだし……」
「それはさておき、地下に行く方法を探さないと」
「地下? 二階建てっぽいけど……」
「だいたい地下なのよ、こういうのは
 ともかくアンタもメダル探しなさい?」
「メダル? メダルって?」
「その辺に落ちてるから、探しなさいって」
「メダルメダル……あった!」
「あんのねやっぱり」
「見た目太陽みたいな形してて、何か書いてあるけど、読めないよ……」
「読まなくていいわよ。錆除去剤なんかどうせ研究所内にしかなさそうだし
 太陽みたいな形してるのね、じゃ、次石像探すわよ」
「石像? 何の?」
「女神、かな」
「女神の石像……あった! 本当にあったよ!」
「うん。じゃ、その下のところに丸い窪みがあるから、そこにメダル嵌め込んで」
「うん、嵌め込む!

 ……どこかで水の流れる音がするよ!?」
「よし、じゃ、さっきの用水路行こうか」
「あ! ツタ植物が流されて、さっきは気づかなかった入り口みたいなのが見える!」
「ふーむ、どうやらアンタがギリギリ通れるぐらいの大きさだね
 よし、行ってきな!」
「え、ええー!?」
「大丈夫大丈夫、どうせ味方がいるから」
「ほ、ほんとに……?」

* * *

どさっ!

「痛ったー……お尻打った……」
「お、おい、君、女の子がこんなところで何してるんだ?」
「あ、ほんとにいた」
「ん、何のことだ?」
「あ、いや、何でもないです
 えーと、道に迷っちゃって」
「参ったな……よし、じゃあ、俺と行こう。
 ここは危険だが二人で行動すればいくらかマシだろう」
「あ、はい。お願いしまーす」
「俺は秘密部隊KABUKI R.O.C.K.Sのメンバーだ
 この無人島で放射能を使った実験が行われているという報告を得て調査しに来たのだが仲間は次々とゾンビたちに食われ残るは俺一人に……」
「(お姉ちゃん大丈夫かなー)」
「こ、これは!」
「わーひろーい!」
「地下にこんな巨大な施設があったとは! しかもこの生命体はまるで未知の生命体! これはまさか生物兵器を開発するための……」
「(よくしゃべる人だなー)」
「これは……研究資料か……そんな……いやまさか、これによれば、まるで未知のテクノロジーが使われている……資材も地球上にはない金属だ……馬鹿な…」

びーっ びーっ

「しまった警報装置が、ぐわー! しかしこの施設の起爆装置は作動させたぞ!」
「あー! 大丈夫ですかーマジで」
「君は未来への遺産だ……俺の役目はここまでだが……君たちが生きている限りこの地球……は……
 これは研究所の資料だ……そしてこのカードを……」
「え、これ、くれるんですか?」
「この研究所のマスターIDカードだ……それで地上へ脱出を……」
「あ、はーい」
「俺には六歳になる娘がいるんだ……もし君が娘に会「あ、じゃあ、急ぎますね。お姉ちゃん待ってるから」

びーっ わーにん わーにん くりてぃかるえらー あらーと わーにん

「あ、外だ、おねえちゃーん!」
「おう、おかえり」
「あのね、地下に男の人がいてね!」
「爆発するんでしょ、じゃ、逃げるよ」
「うん!」

* * *

「いやーあの後すぐ助けも来てよかったねー。一時はどうなることかと」
「まあ、そんなもんよ」
「あ、これ、まだ読んでないや」
「なにそれ」
「なんかあの研究所の資料なんだって、読まなきゃなー」
「読まなくていいよ」
「いいの?」
「うん、2に続いちゃうから」
「そっかー」


* * *

「なんだと……馬鹿な! 生物兵器による侵略計画は失敗だと!? 何故だ!?」
「だから地球にそういうことやっても無駄だって言ったんですよー」

2008年05月11日 21:25


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