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■喫煙者の立場

「ね、優子ちゃん、どう? 最近学校、楽しい?」
「別に」
「そう……あ、カレーおかわりあるわよ? 欲しかったら台所に」
「いい」
「そう、よね……太っちゃうもんね? あはは」
「……」

シュボッ

「あなた、食事してるときにタバコは止めてって言ってるじゃないですか」
「ああ、すまん」
「ごちそうさま」
「あら、もういいの? 残ってるけど」
「いい」
「あら、そう……。
 
 ねえ、最近、あの子、余り喋らなくなったわね」
「ああ」
「学校のことも話さなくなったし……思春期かしら、でも親にくらい話してくれたって……」

シュボッ

「あなた……子供の大事な話してるときにタバコは止めてよ」
「すまん」
「ねえ、貴方はどう思う?」
ブンッ
「私、不安だわ、親としてちゃんとやれてるのか……」
シュバッ ブンッ
「もしかしたら私、あの子に嫌われてるんじゃないかって……」
ブンッブンッブンッ

シュボッ

「あなた! 人が分身しながら大事な話してるときに、タバコなんて……」
「すまん」
「……私、最近思うの、もしかしたらぐ、ぐごごっ、ぐぐぐ……我を封印せし愚かな光の民よ今我が魂は現世に蘇り貴様らを混沌とした地獄に転校させた方がいいんじゃないかって、ね、もしかしたら学校にいじめにあってるのかもしれないわ、あの子。ああ見えて我慢強いから……。
もしそうだとしたら、私耐えられない、グゲゲッ、あの子の辛い顔を見るくらいなら、この世界を再び我が闇の力で支配してやろう! そして

シュボッ

「あなた、私が内なる悪魔『メフィストフェレス』に人格を乗っ取られようとしてるときにタバコはやめてって、言ってるじゃないですか!」
「すまん」
「今度私学校に行って(dont look back your distiny)
 先生と話してみようと思うの(your heart closed like a shell)
 だってそうでしょ?(damn it,so lets go)
 私はいつだってあの子を(what a dupe beat like hell)
 心配(geez high!)
 してる(shit tale)
 そうでしょ?(so lets go!)

シュボッ

「あなた! 私がm-floとコラボしながら子供の話してるときに、タバコはやめてっていつも……」
「すまん」
「もういいわ! 私あの子とちょっと話してくるから、やっぱりこういうことは女同士の方がいいもの」
ジュルルルル

シュボッ

「あーなーた! 人が液体状になって娘の部屋に忍び込もうとしてるのに、タバコ吸うなんて、ホント無神経! もう知らない!」

ジュルルル……

「……」

シュボッ

「ふぅ……

 君らも、吸うか?」

m-flo「あ、いただきます」
メフィストフェレス「メンソールならください」

2008年01月28日 20:55


■液体状で、カチカチの

部屋が寒い。

寒いなんてもんじゃないっての。正直十二月辺りをしのげたから「何、冬とかいって超ヨユーじゃん。全然寒くねえ、夏の方がマダさみーっつーの!」とか思って一切の暖房器具を使用せずに来たけれど、もう無理、ここに来て夜な夜なの冷えSHOW TIMEで絶賛凍死中。もう何冬とか言って超さみーじゃん、夏よりさみーじゃん。

しかし湯たんぽを初めとする近代暖房器具の一切を捨てた俺の部屋に残っているのはエアコンと、悔しさで握り締めた手から零れ落ちたちょっぴりの希望だけ。しかしエアコンは高い。エアコンの電気代は人を一人殺すのに充分な凶器だと思う。誰も信じてくれないけど、ソ連はエアコン使いすぎて崩壊したんだと思う。誰も、信じて、くれないけど。

しかしながら寒い。寒いのは寒い。しかし金は使いたくない。考えに考えた結果、金を使わない防寒方法を思いついた。

それは、叩く。

叩くと叩いた場所がじんじんしてちょっと暖かくなる。それを繰り返せば寒さなんかへっちゃら、って寸法だ。これを思いついてからもう寒いなと感じたらパチン! 冷えると思ったらぺチン! うっほ! パチンパチンパチン! あははっ! パチン! あははははっ! パチン!

「わかるわ。怖いよね、お父さん、怖いよね。でも勇気を出して、ちゃんと話してみて? その傷は、お父さんに殴られて出来た……そうよね?」
「違いますよ! 俺は体を叩くことで寒さを……」
「バカッ!
 そうやって自分を誤魔化して、思い込んで……あなたは、誰にも強制されずに、生きていく権利があるのよ! おいで、あなたの自由は、もう手が届くところまで来てるのよ……!」
「だからぁ、寒さをぉ」
「わからずや!」

パチン!

うひょっ!

2008年01月27日 00:53


■第二期では五人に増える

「ぐへへへー! この世の全ての人間の脳みそにある前頭葉、つまり意志を司る部分を切り取って、いわゆるロボトミー手術というヤツをやって世界を征服してやるー!」
「待ちなさい!」
「なんだ小娘! 邪魔を、つまり我々の計画にはない予定外の障害になるつもりか!」
「世界中の人々を思うがまま操ろうなんて恐ろしい計画、この魔法少女ガンガルあやかが許さないわ!」
「けぇー! こしゃくな! お前たち、つまり君たち組織の下で働く人たちよ、やってしまえー!」
「チルチルメチル・アルコホリック! へーん☆しん!」

「うわー! 
小娘の振りかざしたステッキの先からまばゆい光が出たと思ったら、小娘が若干宙に浮いたままくるくると回りだし、それにともなって衣服もだんだんと剥ぎ取られて、いや、剥ぎ取られてというより衣服そのものの分子構造が変化していると言ったほうが誤解を招かずに済む! しかも、しかもだ、そのステッキの先から出ている帯状の光が人々を取り囲み、光に取り囲まれた人々がなぜか我を失ったようになったかと思ったら、急にさっき俺がけしかけた手下たちをボッコボコに殴り始めた! つまりあの光は何らかの洗脳物質を伝達するための媒体といえるだろう! 少女はまだ空中でくるくる回っている、足元がすでに何らかのコスチュームに変化している、と、いうことは? やはりさっきの仮説は正しかったと言えるだろう! そんなことを考えている間に光の帯は街を、国を、世界を覆い尽くす勢いで増えていき、これは、これはまるでハリケーンだ! 巻き込んだものを洗脳する、洗脳ハリケーンだ! 人々が少女の意のままに、何かを作り始めた、そこには人種も国境も存在しない、被洗脳者という完全平等のもとに行われる社会主義! 人々が造っているものは、塔! 塔だ! 地球六十五億人が共同で馬鹿でかい塔を作っている! 少女はまだくるくる回っている! ピンク色のニーソックスが見える! 塔は天を貫き、もう先の方は雲に隠れて見えない、が……うわー! 何だ! 塔が急に、崩れ始めた! これは……バベルの塔の伝説! 『神に近づこうと、巨大な塔を作った人間たちが神の怒りに触れ、その言葉と肌の色を別々にされてしまった』 この伝説の通りだ! つまり、あの時代にもこの少女が生きていたことになる……! 俺は、俺は歴史を目の当たりにしているのか!」

「きゅ☆りーん! 魔法少女ガンガルあやか、参上!
 あんたみたいな悪党は、銀河の渦で脱水よ☆!」

「(やりかねない……! この女なら、あるいは……!)」

2008年01月24日 23:00


■しかも当日来ない

「はい、じゃあ遠足に関するお知らせはこれで全部だ。
 何か質問あるやついるかー」
「はーい、せんせぇー」
「どうした、土田」
「おやつは300円までですかあー?」
「そうだぞ、だからちゃんと考えて買わないとダメだぞ」
「せんせぇ! バナナはおやつに入りますか?」
「ははは、安心しろ、バナナはおやつに入らないぞ」
「先生」
「どうした」
「バナナ目当てで遠足に参加してもいいですか」
「先生初めて目にするモチベーションだぞそれ
 バナナ好きなのか?」
「はい」
「じゃあ、何本でも持てるだけ持ってきていいぞ?
 なんてな、ははははは!」
「軽トラは弁当箱として認められますか」
「お前何トン持ってくるつもりだ。
 そこまでバナナに情熱傾けても喜ぶのは東南アジアの人ぐらいだぞ、ほどほどにしとけ
 他に質問ある奴いるかー」
「はい」
「ん、何だ?」
「人はいつか土に還りますか」
「うん、難しい問題だな。シンプルに答えるとイエスだけど、それでも精一杯生きるのが先生大事だと思うぞ」
「天に昇っていった魂は、幸せであると言えますか」
「うん、また難しい問題だな。結果はどうあれ、幸せだと先生は思うぞ」
「うんこ行ってきていいですか」
「哲学のすぐあとにうんこを持ってくるって、凄い気圧差だぞ。先生高山病になっちゃうかと思ったぞ」
「バナナはうんこに入りますか」
「いいから早く行ってこい。そしてお前なりの答えを見つけろ
 さ、他に質問あるヤツいるかー?」
「せんせぇーおやつの300円には、しょーひぜい入りますかぁ?」
「お、いい質問だな。安心しろ、消費税は入らないぞ?」
「手数料は300円に含まれますか」
「あんまりATMに無理言うのは良くないと思うな先生。お母さんにもらいなさい、ね?」
「10%複利だと遠足が終わる頃にはいくらになってますか」
「悪かった。無理するな。無理しなくていい。先生が貸してやるから無理するな」
「300円に振り回される人生は滑稽ですか」
「そんなことはない、そんなことはないぞ! 大丈夫だ全然大丈夫だから」
「300円以下の人生でも、魂は天に
「還る還る、還るとも。お前はきっと幸せになれるとも」
「先生」
「どうした」
「うんこ流してきていいですか」
「何で放置して帰ってきたんだお前は、流して来い、行ってこい早く」
「先生」
「何だ」
「僕は寝るとき裸です」
「うんこ流して来い早く」

2008年01月22日 22:28


■スクライド

「とうとうこの日が、来たな」
「ああ」
「俺とお前、どちらが印輝神拳の正統継承者にふさわしいか……」
「フンッ もはや言葉では役者不足……
 残る思いは、この拳にて伝えようぞ!」
「望むところよ! 来いっ!」
「おおおおおぉおお! 天地万象の脈動よ、我が拳に連理せよ! 森羅神明の加護もて、北方の禍を粉砕せん! 印輝神拳奥義・天脈奔砕拳! 喰らえぇえええーーーー!

ぴるぴるぴる

はーい! はいはいはい、あ、追加のご注文ですね。お伺いいたしますー。えーともちチーズお二つと、シーザーサラダお一つ。あとお飲み物がカルーアミルクとカシスオレンジを二つずつ追加で、よろしいですか? はいありがとうございますー!

……とんだ邪魔が入ったな」

「ふっ、気にするな。俺が正統継承者になるまでの時間が、少し延びたまでのこと……次はこちらの番だっ! はぁあああぁあ……! 我、氷帝の名の下、那由他の全霊に命ず! 天なる掌にタナトスの意志を、地なる掌にリビドーの怨嗟を、往け! 印輝神拳秘義・天地雹砕破ぁあああぁあああぁああ

ぴるぴるぴる

ああぁあああーい! はーい、はいはい! あ、えーと、先ほどのカシスオレンジを一つ梅酒のロックに、はい、かしこまりましたー! 

ふっ……どうも宿命の女神は気まぐれらしい」
「何、そうでもないさ……なぜなら
 この一撃で、勝負が決まるからだ! 行くぞ! はぁああああああ……!
 天宇の因果律に捧げし我が二重螺旋のカルマよ! 流転し奔回する我が命に天命をまぶし油でパリっと揚げてポン酢で美味しくいただけ! 印輝神拳奥義・狂雷竜田揚げえええぇえええぇえええぇええ

ぴるぴるぴる

ええええいぃ! えーい! えいえい! お待たせしました竜田揚げになりま、あ、頼んでない? あ、えーと、もちチーズのお客様でしたね、それとシーザーサラダ、はい。すぐお持ちしますので!

悪いな、時間を取らせた」
「隙あり! おおおおおぉおおおお!
 天界を術べし慈悲の母、破壊の父、博愛の叔父、就活の姉、漫画家の嫁、童貞の兄! 全ての気を我が拳に乗せて我が敵のあのへんにドーーン! 喰らえい! 

ぴるぴるぴる

はーい! お冷ですね! すぐお持ちいたします!」
「今だ! おっぱいプルンプルンぽよぽよぶりりーん! 印輝神拳奥義! 天地破砕雷電

ぴるぴるぴ

お冷でーす! 天地破砕雷電お冷おもちしましたー!」
「そこだ! 元気いっぱい! 夢いっぱい! 印輝神拳奥

ぴるぴるぴる

の座席が空いております! よろしければ奥の座席お使いくださいませ!」
「もぉー! パーンチ!」
「ぐっはぁー!」
「これで……これで俺が正統継承者だ!
 師匠! 見ててくれましたか!?」
「うむ、よくやった

明日から時給870円じゃ」
「やったー!」

2008年01月21日 20:40


■フロイトさん、辛口でお願いしま~す

変な夢を見た。

僕はかなり大きいドラムバッグを持ちながら凄く可愛い子(落ち着いた色調のジャケットとスカートを着ていた)とデートしていて、状況は何かのライブを見た帰り道だとか、そのあたりだったと思う。暗くて、街灯も余りないような道を二人で歩いてて「楽しかったねー」なんて話してるとどこかからぶんぶんと音が聞こえてきた。

何だろうと思えば虫、それも蜂。カナブンぐらいの大きさの蜂がぶんぶんと僕の周りを飛び回っていた。どこから飛んできてるんだろうと見渡すと、僕の持っているドラムバッグから大量の蜂が這い出しては飛び回ってるのが視界に入り、瞬間「またか」と思い「初デートでバッグから蜂出しちゃマズいよなー」と考えバレないように立ち止まって蜂を追っ払うことにした。

とりあえずバッグを開けてみたけれど、いつも入れてる色んな大きさのレンガしか出てこず、蜂が沸く原因になるようなものが見当たらない。僕は「彼女の気のせいだ」と思って彼女の方へ視線を戻すと、僕を置いて500mぐらい先まで一人で歩いているのが見え、凄く腹が立った。「人がバッグから蜂出してるのに一人で行くか普通!」と思った。追いつこうとバッグを持ち上げるとまた大量の蜂が沸き始めた。

僕は「あ、そういえばサイドポケットついてたな。そこかも」と閃いて、バッグのサイドポケットを開けると、案の定そこに蜂がぎっしり詰まってた。正直気持ち悪すぎて、直接手とかで触るのは嫌だなーどうしようかなーと逡巡してると、ふと、バッグに聖剣が入ってるのを思い出したのでそれをつかって蜂を追っ払うことにした。でもバッグにはSとLの聖剣しかなかったので、仕方なくLの聖剣を使って蜂を殺してく。触れるだけで蜂が黒焦げになり、何だかそれが無性に楽しくなってきたのでどんどんやってると横から彼女が「何やってるの?」と声をかけてきた。

英字新聞の柄のブラジャーをつけてる彼女に「蜂を潰してるんだよ」と伝えると「それはボスの仕業かもね」と言われ、僕は「ああ、なるほど蜂を使って間接的に、ってことか」と納得した。帰りのトラックの中で、ボスが蜂を使って一体何をしようとしたのか完璧に理解して、ブレーキを踏んだところで目が覚めた。


起きた瞬間「またか」と思った。

2008年01月20日 20:56


■賭博破戒録バイト

アルバイトの面接に行ってきた。

今回はコールセンターで客からのクレームを八時間受け続けるといったドマゾ御用達のバイトだったのだけれども、短期ってことでナメて行ったら予想外にちゃんとした面接だった。

まずは業務内容や待遇の説明と確認。それが終わったらパソコンのタイピング試験を十分ほど、さらにその後三十分ほどの個人面接を経た後極め付けに四十分の筆記試験。正直このときほど履歴書の写真を米粒で貼ってることを後悔したときはなかった。

中にはスーツの人もいたりするそんな中、確実に不採用あるいは面接侮辱罪的なものによる懲役を覚悟し望んだ筆記試験。ぱっと見ただけで「法人」だの「税率」だのいう単語が誌面上でかなりの縦ノリ、ライブは始まったばかりだぜー! ってな感じで大盛り上がりを眼前に前世のセーブデータからやり直した衝動を抑えつつテストに望む。

終わった頃には以前は「俺」だった灰の塊が残ってるだけだろうな、と思っていたのだけど、この試験が予想外に簡単。簡単、というか、バカにしてるとしか思えない内容。問題文の難しさに圧倒されて諦めかけたのだけど、よくよく設問を見ると簡単なことしか聞いてないのだ。例えば

[ 設問1:以下の定期保険の保険料の取扱いに関する文章を読み、問題に答えよ ]

  法人が契約者となり、役員又は使用人を被保険者とする定期保険に加入して支払った保険料は、保険金の受取人に応じて次のとおり取り扱われます。
  なお、定期保険とは、一定期間内に被保険者が死亡した場合にのみ保険金が支払われる 生命保険で、養老保険のように生存保険金の支払はありません。
(1)  死亡保険金の受取人が法人の場合
  その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。
(2)  死亡保険金の受取人が被保険者の遺族である場合
  その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。
  ただし、役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合には、その保険料の額はその役員又は使用人に対する給与となります。

(注 1) 傷害特約などの特約がある場合は、その特約部分の保険料の額を期間の経過に応じて損金の額に算入することができます。
  ただし、役員又は部課長その他特定の使用人のみを傷害特約等に係る給付金の受取人としている場合には、その特約部分の保険料の額は、その役員又は使用人に対する給与となります。
(注 2) 給与とされた保険料は、その役員又は使用人の生命保険料控除の対象となります。
(注 3) 役員に対する給与とされる保険料の額は、定期同額給与となります。

こんな問題文が出たとする、これを読ませた上で出される問題が

(問題1)
「損金」にフリガナを振れ

(問題2)
「損」って「茸」になんとなく似てるから、キノコの仲間と思うか?(YES/NO)

(問題3)
問題2でYESと答えた方、シイタケ好き?(YES/NO)

マジでこんな感じ。正直問題だけ読めば問題文の意味がわからなくても解ける、まるで中学生の国語テストだ。解けることに対して首を傾げたのは初めてだったが、まあ所詮短期のバイトというところだろう。何か最初に緊張して「履歴書の写真、米粒じゃなくて赤飯で貼ればよかった……!」なんて思ってたのがバカみたいだ。まあどこまでいってもバイトはバイト、そんな気負うもんじゃないってね。

落ちたけどね。

2008年01月19日 03:11


■童話「アリとキリギリスとB型」

「うんせっ うんせっ」
「ハハハハ、せいが出るねえアリさん」
「おやキリギリスさん、こんにちは」
「こんにちは。
 君たちはいつもあくせく働いているけれど、それは楽しいのかい?」
「いいえ、でももうすぐ冬が来てしまうので、食べ物を蓄えておかないと……」
「ハハハハ! 冬のことは冬が来たら考えればいいんじゃないかい?
 今は辛い冬のことなど考えず、この美しく色づいた木々に心を傾けていたいね」
「それは楽しそうですね
 でも私たちはそれだと食べ物がなくて凍え死んでしまう……」
「その時は僕が何とかしてあげよう! ハハハハハ!」
「え、ちょっと、何の話? 何の話?」
「あ、いや、えーと」
「俺の話? こないだの学祭のときの俺の話?」
「いや、違うけど。冬に備えて働くアリさんと」
「あー冬っつったらさ、マジ寒くね? 今回マジ寒くね?
 温暖化とか嘘じゃんねー」
「あ、うん。寒いね」
「あ、アリさんアリさん、こないだ池袋いたっしょ?」
「え、いや、いないですけど」
「マジで? 絶対見たと思ったんだけどな、え、マジ? マジいない?」
「はい」
「マジか! あの池袋の駅前に出来たジーザスって店マジでヤバいから今度行ってみ? すっ飛ぶから、マジで
 で、何の話だっけ」
「あの、冬の蓄えの話」
「蓄え? 何? たくあん?」
「蓄えです。
 私たちアリは、冬に備えて食べ物を集めているのです」
「マジで! 週何? 週何で?」
「毎日です。
 そうしなければ冬に凍えて死んでしまうので」
「ハハハ、アリさん、だからそういうのは冬に考えたら
「無いわー!」
「いや、あの、僕まだしゃべっ」
「週七で、シフト満タンでって、マジしんどくないですか!? しんどいでしょ? 辞めた方がいいですって、マジで! ありえないっすもん!」
「いや、でもアリさんはそうしないと凍えて」
「でも週七ですよ週七! ありえないっしょ。キリギリスさんとか週何?」
「いや、僕は別にこれといって」
「だしょ? ホラちょっとアリさん、辞めた方がいいってマジで」
「いやでもアリさんにはアリさんの考えがあるから」
「え、何、俺、ハブ? ハブ一丁いただいている今もしかして?」
「私たちはこれでいいのです。働かないと、死んでしまうので」
「でもそのままだとマジ過労死になって死ぬ確率アップですよ!? たまには休んだ方がよくないすか?
 あ、息抜きしたかったら池袋のジーザスって店行ってみ? マジヤバいから、裏返るから、マジで」
「ま、でも、あのアリさんみたいに働かなくてもいいけど、君も少しは冬に向けて
「え、何、ヒロ? うん、いや、今アリとキリギリスさんと、え? タクもいんの? どこ? ラウンドワン? おっけ、行くわ、んじゃねはーいじゃねー
 ちょっと俺行きますわ、んじゃまたねっ、うぃす! うぃっす!」
「うぃっす」
「何これ! へへへ何このテンション、俺何これ!
 へへへ、またね!」

* * *

「もっしー、もしもっしー」
「はい、どなたでしょう?」
「あのさ、アリさんごめん、ちょっと木の実貸してくんない?
 ちょっとマジキリギリスさんとか死にそうでさ。五個でいいんだあ、五個でいいからさあ」
「あ、はい、わかりました。
 では、これ、持っていってください」
「え、十個も!? いいの!? マジで!?」
「はい」
「ありっす! んじゃもらってきまっす! ほいじゃ!」

「キリギリスさーん! 食べ物もらってきたよー!」
「あ、ありが、とう……」
「五個しかくんなかったっすけどね。まあとりあえず、はいっ」
「五個、か……」
「まあいいじゃないすか、もらえただけでも。あんま贅沢言ったらダメっすよ」
「僕のこと、笑ってただろ……アリさん」
「え? いや、特には聞いてないッスよ」
「そっか……」
「ジーザス行きます?」
「うん……」

2008年01月17日 01:20


■ウロボロス

俺はスナイパー。

暇だ。

獲物を発見したはいいけど物陰に隠れて全然動かない。ちょうど頭のところだけ隠れて動かない。動けよ、ちょっとでいいから。あと5センチ動いたら正確に打ちぬけるのになんで動かないの。うち歩合制だからさ、これ終わらして早く次のところいかないとホント生活苦しいんだけどな、あの、動けって、動いてくれって、頼むよ、もしもーし! もう大声で「動けー!」って言っちゃおうかな。つーかアイツ死んでんじゃねーの? 他のスナっ子が打ちぬいた後なんじゃねーの? 死んでる、死んでるよ多分アイツ。だって心臓の音とか聞こえねーもん。500m離れてるってこと抜きにしても、心臓の音聞こえないってことは死んで、あー! 動いた、生きてるわー! 何だよ鼻かくぐらいなら、もう地面に鼻こすりつけるぐらい動けって! もういい俺もうこの仕事やめるわ、女にモテるとか言われて始めたけどそもそもあんま人に言えねーしコレもういいやめるやめるやってられっかこんな(パン!)さ、次いこ。

次は、何だ、あのビルか。どうも風呂入ってるみたいだな。まあ好都合、風呂から上がったときってだいたい油断してるからな。そんで絶対冷蔵庫いくだろ。冷蔵庫の前に照準あわせとこ。何飲むんかな、俺ピルクルだけど、ああいう奴に限ってデカビタとか飲むんだよな。風呂から上がったら乳酸菌だろ、デカビタとか! デカビタなんかリアルゴールドの量の少なさに納得できない小学生が妥協案として買うもんじゃねえか! 絶対ピルクルだ、あるいはマミー、ピルクルかマミー以外認めね(パン!)ミロて!

次は、ああ、飯の途中か。ごめんなホントKYなスナイパーだよなあ。KYSだよなあ。カレーか。うまそうだな、具の形状がなくなるまで煮込んであるってのがこだわりを感じるな。具沢山、とかいって具がゴロゴロしてる奴はカレーじゃねえよな。カレー味のあんかけだよなあんなの。で、お、福神漬けか! わかってるなーコイツ! やっぱ福神漬けだよな! らっきょなんて邪道だよ! カレーにらっきょとか合わせてたら俺まずらっきょから撃つもんな! うわーコイツと友達になりてえー、絶対カレーの話で盛り上が(パン!)ルーは右側だろ! バカか!

ふぅ……さて、ちょと休憩しよ。ノドも渇いたしな。仕事の後はやっぱこれ、ピルクルに限っ(パン!)……


「デカビタだろ普通」

2008年01月16日 00:49


■クソキリタンポ

ぽとっ

「うわ、もったいねっ!」
「うわわ! ポルコムのヤツ地面に落ちたヌメトロン食べたぞ!」
「ちがっ! これは、ホラ、あれだよ! 三コンマルールだよ! 三コンマルール!
 地面に落ちてから三コンマのうちに拾ったら雑菌がつかないんだって!」
「ホントかよ~!」

* * *

ぽとっ

「うわっ、もったいねっ!」
「うわわ! ヴェロタンのヤツ地面に落ちたケロリンチョップ食べたぞ!」
「ちがっ! これは、ホラ、あれだよ! 三日ルールだよ! 三日ルール!
 地面に落ちてから三日間のうちに拾ったらタモチャンがつかないし、雑菌もつかないんだって!」
「フンゾかよ~!」

* * *

ぽとっ

「エバッ、もったいぬっ!」
「エババ! ドンポコのヤツ、地面に落ちたクソキリタンポ食べたぞ!」
「ちがっ! これは、ホラ、あれだよ! 三秒ルールだよ三秒ルール!
 地面に落ちてから三秒のうちに拾ったらオッパルもつかないし、ゾッコスも無いんだって!」
「キンポタロ~!」

* * *

ぽとっ

「うわっ、もったいねっ!」
「うわわ! 田中のヤツ、地面に落ちたミートボール食べたぞ!」
「ちがっ! これは、ホラ、あれだよ! 三秒ルールだよ三秒ルール!
 地面に落ちてから三秒のうちに拾ったら雑菌がつかないんだって!」
「ホントかよ~!」

***

「隊長!」
「どうしたポルコム」
「地球人は雑菌だらけのヌメトロンを平気で口にします!
 こんな野蛮な星は侵略するだけ無駄です!」

***

「隊長!」
「どうしたヴェロタン」
「地球人はほぼ無菌状態のケロリンチョップを常食する潔癖症です!
 我々の天敵といえるでしょう、触らぬ神に祟りなしかと!」

***

「隊長!」
「どうしたドンポコ」
「田中ん家の弁当ミートボールで超うまそうでした!
 明日我々もミートボールにしましょう!」
「よそはよそ」
「じゃあ、餃子!」

2008年01月13日 03:00


■なぜ彼は

キンタマについて考える。

いや、まってほしい。今まっさきにウィンドウを閉じようとした女子たち、まってほしい。誤解なんだ、俺はただシンプルに、ただ一筋にキンタマについて考えたいだけなんだ。落ち着いて俺の話を聞いてほしい。キンタマの話を。

男の子にはキンタマがついている。これは当たり前のことだけど、キンタマがもし女の子についていたとしたらどうだろう。想像してほしい、君の大好きなあの子に、キンタマをつけてみたまえ。そうすると例えば登校時のあんなシーン

どっしーん☆

「キャッ!」
「痛て!」
「痛たたたたた……はっ!
 ちょっと、アンタ!」
「な、何?」
「今アタシのキンタマ見たでしょ!?」
「み、見てないよ! キンタマなんか!」
「嘘! 絶対見たでしょ!
 もう最低!」
「な、なんだよ! そんな格好でキンタマはみだしてるお前が悪いんだろ!?」
「てことはやっぱり見たんじゃない!
 もうエッチバカ変態最低キンタマ揉み揉み男爵!」
「揉んでないだろ! 男爵だけどさ!」
「あーもう! アンタのせいで遅刻じゃない!
 ダッシュしなきゃ!」

ぺとっ

「お、おい! キンタマ落としてるって、オーイ!」
「急いでるから、後で洗って返して!」
「洗ってって……別に汚れてないぞこのキンタマ!」
「アンタが触ったから、に決まってんでしょ! バーッカ!」
「な、なんだよその言い方!」
「オイ、タカヒロ、何やってんだよ」
「あ、アツシ、聞いてくれよ変な女が」
「お、お前、その手に持ってるの」
「ああ、これ」
「女物のキンタマじゃねえか!
 わー! タカヒロが変態になったー!」
「違うんだって、アツシ! アツシったら!」
「わー! わー! タカヒロのキンタマ揉み揉み公爵ー!」
「公爵じゃないだろ! 揉んでるけどさ!」


想像できたかね? そうか
ならいい。

2008年01月12日 16:02


■米騒動

「さあ今回ご紹介するのはこの全能高枝切りバサミ! キリストのわき腹を貫いたロンギヌスの槍をモチーフにデザインされたスタイリッシュな高枝切りバサミ!

(※商品はイメージと異なる場合があります)

これなら街中で振り回しても『なんだ、ただの戦国無双か』と思われるだけで、まさか高枝切りバサミとは思われません! 地中海の一流デザイナー達が(※デザイナーは二流の場合があります)二年かけて制作した(※三年目に突入している可能性があります)珠玉のデザイン!

さらに肝心の機能も充実! 全能高枝切りバサミですので貴方にはむかう人間たちに天罰を下すこともできます! このように構えて(※どのように構えても結構です)矛先を相手に向けて「GO! 天罰!」と叫びましょう、裁きの雷が民の上に降り注ぎます!(※雷が降り注ぐまで3~6営業日かかることがあります)

さらに蘇生機能も充実! 友達が裁きの雷で消し炭になっちゃった……なぁんてこと、大学生ともなればありますよね? でもこの全能高枝切りバサミならそんな問題も一発解消! 矛先を天に向け「よいしょっ!」と叫べば消し炭になった友達も一発蘇生!(※生き返った友達は以前と異なる場合があります) まさに全能高枝切りバサミならでは!(※全能マッサージチェアでもできます)さらにご安心ください、高枝切りバサミとしての機能ももちろん!(※ありません)

お電話はこちらまで!

0120~555(※333)~467(※987)~

2008年01月12日 00:26


■寝た子をおコスメ

実家に帰るとき、乗った電車での出来事。

自由席で隣に乗り合わせた女の子。見た目は女子大生って感じの、まあいわゆる普通の女の子だったのだけれどもこの子が乗ってからずっと化粧していた。ずっと、本当にずっとだ。

具体的に何をしてたかまではちゃんと見てないけど、顔に何か色々塗ってるように見えた。俺は化粧に関して全くといっていいほど知識がないのでわからないのだけど、顔に塗る化粧品なんてそんなにたくさんあるのだろうか。せいぜいファンデーション? まあその辺ぐらいだと思うんだけどその子はもうそんな次元じゃなく、とにかく化粧ってより「舗装?」ってぐらいの勢い。

とてもファンデーションだけ塗ってるとは思えない。何ならマーガリンとかジャムとかまで塗ってたかもしれない。「ママレードボーイ」の意味を大幅に勘違いした女子大生、あるいは彼氏の「もっとお前とベタベタしたい」って言葉を糖分的に捉えた結果のジャム大生ってことならあり得て妙。

でもまあ、人の塗装作業にとやかく言うのもなんだと思ってぼんやり外を眺めてたら、窓の反射でその子の動きが急に止まるのが見えた。
あれ? 死んだ?
もしくは気づいた?
「えー! アタシ、ジャム塗ってるー!?」って気づいた?
ってちょっとその子の方見てみると、寝てた。
化粧道具をそのままに、その女の子、寝てた。

もう、えー!? って。うぇー!? って。うっへぇー!? ってなった。
全部なった。

何だよ最近の子は化粧の途中で寝ちゃうの? そういう習性が激カワで泥モテなの? 確かに寝不足は肌に悪いっていうけど、そんな付け焼き寝で解決するほど人体はシンプルじゃないだろう。もしかしたらこれも寝てるんじゃなくて、何か全然別のことかもしれない。何か、こう、あるかもしれない、最後寝ることで完成する化粧! とか、あるいは心眼に塗るマスカラとか、そういうのあるかもしれない。そうだ、きっとそうだ、これ以上見てると何か色々わからなくなりそうだったから俺も寝ることにした。

一時間ぐらいして起きて、ふと女の子の方を見たら
化粧してた。

(悲鳴)
(暗転)

2008年01月11日 01:09


■ドラクエ15

(……アルス……アルス……私の声が聞こえますか……今、世界は危機に瀕しています……アルス……貴方の力が必要なのです……勇者よ……)
「コラッ! アルス! またあんたったらずーっとゲームばっかりして! 今日はアンタの十七歳の誕生日でしょ。お城にいって王様に挨拶してきなさい!」

「ようこそ、ここはオルレハンの城下町……って何だ、アルスじゃないか。お城へ行くのかい? お城はそこの教会の西だよ。お城へ行く前に教会でセーブしておいた方がいいんじゃないか? ま、お前も早く立派になっておふくろさんに楽させてやんなよ、ゲームばかりやってないでさ!」

「あら、アルス! 珍しいわねこんな時間に出歩くなんて、ゲームはもういいの?」

「いらっしゃい! ここは武器屋だ! って、オイオイ、アルス坊主か。武器が欲しいのかい? 何でも揃ってるぜ! 青銅の剣は初心者にも扱いやすい武器だ、ブーメランは攻撃力こそ低いけれど、一度にたくさんの敵を攻撃できるぜ! こんぼうは攻撃力もそこそこ、一度に一人の敵しか攻撃できないけれどアンデッドなんかに効果バツグン! 1.5倍のダメージを与えることができるんだ! ま、何にせよ武器は装備しないと意味がないぜ! ゲームばっかりやってると腕がなまっちまうからな、男は鍛えてナンボだぜ!」

* * *

「おお、アルスよ! 死んでしまうとはなさけない! ゲームばっかりやっておるからじゃ!」

2008年01月10日 00:31


■2LDK3DJ

猫のいる生活。

猫のいる生活、に憧れる。常に部屋に猫がいたら、どんなに癒されることだろうか。生活のパートナー。人生のパートナーとしての猫。けれど残念ながらこの部屋に猫はいない、あるのはキンチョールだけ。キンチョールに甘えられても余り嬉しくは無い。周りで虫が死ぬだけだ。

とりあえずの慰めに、日記に猫を登場させてみよう(にゃーん!)おおっ! ハハハっ! 何だこいつ、いきなりだなオイ! やめろって、こらこら、そんなに手の甲嘗められたら、ウヒヒッ! くすぐったくて文字が打てないじゃないかっ! ハハハッ!(にゃーん!)あっ! こら! キーボードの上に足を乗せるンじゃぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ

コラッ! 足どけないから画面が「ぬ」ばっかりになったじゃないか! これじゃまるで俺が「ぬ」大好きなヤツと思われちゃうじゃないか!(なーご)バッカだなっ! 俺が大好きなのは「ぬ」じゃなくてお前だっつーの! ハハハ! (みゃーお)おほほっ、そうだな、そろそろご飯の時間だな。よし、じゃあディープ、ご飯にしよう! スロートも呼んできてくれ!(にゃーん!)(あ、ども)よしよし、今日はぺディグリーチャムだぞ!(にゃんにゃん!)(できれば白米のがいいすけどね)おいおい、ディープにスロート、あんまりがっつくなよ!(フゥー!)(あ、すいません)こら! スロート、ダメだぞディープのご飯食べたら! ウフフッ! いいなあ! 猫のいる生活っていいなあ!(にゃあん!)(そッスね)あ、もういいですよ(にゃ、あ、もういいスか)(じゃ、俺もバイト行きます)

2008年01月09日 18:45


■野生のコッポラがとびだしてきた

お料理。

「お料理をするときはお料理本を見るのがお自炊をするときのお作法でございます」と、自炊の神コマッタ・ラ・カレー様に教えられてきたので、俺の家にはお料理本がある。タイトル『基本の和食』なるほど看板に偽りゼロ、開けば筑前煮、ブリの照り焼き、炊き込みご飯と基本的な和食が名を連ねてる。そして『基本の和食』その横にこうも書かれている「とりあえず この料理さえ 作れれば」

さりげない五・七・五の風流さでずっと誤魔化されてきたけれど、どういう意味だこれ。
「とりあえず この料理さえ 作れれば」
作れれば、何だ。どうだというんだ。

とりあえず俺は今までの人生で「チクショウ! 筑前煮さえ 作れれば!」と叫んだことは無い。雨の中、傘もささずに地面を殴りながら叫んだことはない。そんなのはよほどの和食好きかバカだ。もしくはバカだ。そう、それだ。バカだ。「筑前煮さえ作れれば……」なんだって言うんだ「筑前煮さえ作れれば……息子は返してもらえるんだな」お?

「ああ、約束するぜ、筑前煮さえ作ってくれりゃお前の息子は返してやる!」
「わかった……」
「おおっと! 間違っても警察なんか呼ぶんじゃねえぜぇ……」
「わかってる! みりんを取りに行くだけだ」
「へへへ……さあお前のお父さんは筑前煮を作れるかなあ~?」
「お父さんは、お父さんはきっと筑前煮を作ってくれるんだい!」
「へっ! 威勢のいいガキだ……お前の親父が筑前煮を作れなかったら、どうなるかわかってんだろうなぁ!」
「待て! 筑前煮だ……!」
「お、へへっ、意外と早かったじゃねえか……!
 ふぅ~いい臭いだぜ、どれどれ……!」
「今だ!」ばしゃーん!
「熱っちー! 熱っちー!」
「逃げろ! 息子よ、逃げろー!」
「パパー! 切迫した状況とはいえ名前を呼んでよー!」
「てめぇらー! もうゆるさねえ、死ねぇ!」ぱーん
「うぐっ……ふんっ!」
「な、何で死なねえ! 
 俺の高価なピストルが確かに心臓を撃ち抜いたはずだ!」
「この生煮えのニンジンが、俺を守ってくれたのさ!」
「何ぃ~~!?」

最後は息子のセリフね。

2008年01月09日 02:32


■働け

公園でボーっとする。

俺は公園でボーっとしていた。何もしていない。ただぼんやりと公園を眺めていた。とくに何も考えない。たまに色んな大きさのおっぱいのことが頭をよぎるが、歴史には記されない。それほど重要ではない。おっぱいは、そのときそれほど重要ではない。

子供が一人走り寄ってきた。何かを期待したニヤニヤ顔で走り寄ってきた、俺はそれをぼんやり眺めていた。子供と少し距離を置いたところで立ち止まると、構えた。両手を後ろにやり、足を踏ん張る、何か見覚えのある構えをして

「か~」
相変わらず何かを期待するニヤニヤを向けている。俺はもうそれを理解していた
「め~」
鳥たちが囀る
「は~」
犬が少しこちらを見る
「め~」
後ろで老人があくびをする
「波~!」
平和そのもの。

俺は相変わらずぼんやりしていた。子供はキョトンとしていた、彼の必殺技で倒れなかった人間は、俺が初めてだったのだろう。子供はちょっと泣きそうな顔になっていたが、そりゃそうだ、戦闘民族サイヤ人が全力でニヤニヤして放ったかめはめ波が、フリーザならともかくなんでもないフリーターに効かなかったのだ。

俺は、彼にとって最初の壁になったことだろう。そうだ、僕はフリータだ。全宇宙を恐怖に陥れるけど仕事のない魔人・フリータだ! 子供よ、若きサイヤ人の子供よ! 乗り越えろ、俺を乗り越えて、その先へ行け! そして伝説のスーパーサイヤ人になって「ママー!」「あら、あらら、ごめんなさいね、ホラ、お兄ちゃんに変なことしちゃダメでしょ!」「だって、僕の」「ほらほら、いくよ、ホラ!」

俺も帰った。
惑星フリータへ帰った。

2008年01月08日 16:08


■まゆちゃんは年長組の古参

「ゆうくん、大きくなったらまゆと結婚してくれる?」
「うん! するよ!」
「ほんと!? 約束だよう!」
「もちろん、約束するよう!」
「じゃあ、指きりね!」
「うん!」
「せーのっ、ゆーびきーりげーんまーん、ウソつーいたーら針せーんぼーん飲ーます相手を本人ではなく、本人の大事な人間そう恋人に、しかも千本を一気にではなく一日三本ずつ飲ませることで徐々に苦しみを与えていくそうして999本飲ませ終わった後、一本だけ残った針を眉間に突き刺すことでそいつの人生のピリオドとするのだ。そうしてゆうくんと付き合った女を一人ずつ針の餌食にしていけばいずれゆうくんは私のもとに戻ってこざるを得なくなる。私は決してゆうくんに針千本飲ませたりなんかしないよ? だってゆうくんは私のお婿さんなんだから、それを引き裂こうとする女こそ針千本飲ーますべーき罪人! ゆーび切っ」
「タンマタンマタンマ」

---

「ふーるさっともとめてはーないっちもんめ」
「だーんすなーがもっち、どの子がほしい?」
「あーの子がほっしい!」
「あーの子っじゃわっからん!」
「この子っがほっしい!」
「わったしっじゃなっいの!?」
「いや、もっちろん、そのつもり」
「じゃなーにっよこの子って!」
「そっういうゲームじゃん」
「ゲーム程度の関係なの!?」
「いーやだっから、これは」
「言い訳なんて聞きたくない!」
「花いちもんめなんだから」
「だっかーら、何よ!」
「この子、って言わなきゃ」
「私の前で言わなくたっていいじゃない、わざわざ! あてつけなの!?」
「もう歌でっも、何でもねえ」
「実家に帰ります!」
「ちょっちょちょっちょっ、ちょ待って!」
「いいえもう、待ちません」
「そそそ相談しましょっ!」
「法廷でね」

2008年01月05日 17:35


■頭のブートキャンプ

喉ガッサガサ。

年末にやってたフルーツのラッピングの短期バイトが、何故か市場で一日中声を張り上げていちごを売る、という業務にシフトしてから朝も夜も無く食った事もねえいちごを「うめえ! うめえよ! だから買えよ!」と叫んでいるうちに喉が生涯で一番枯れた。

なんていうかもう、喉っていうか軽くサバンナを思い出す感じ。ちょっとしたコヨーテとかガゼルとかなら全然住みたいレベルのパサパサ加減。今いい部屋ネットでサバンナの物件探したら新着の一番上に出れる自信ある。こんなに人生で自分に自信持ったの初めてなぐらい、出る自信あるわ。

そんなだから満足に喋る事もままならない。出す声出す声全てにもれなく濁点のサービスがついてくる上に、それが全部裏返って出るという過剰接待。「俺はいらないよ」という台詞を喋ろうとすると「ぉれゎい゛らなぃョ」とギャル文字変換されて相手に届けられる柳原可奈子リスペクトぶりにうんざり、さらに加えてハイトーンでの「いらっしゃいませー! いちごいかがですかー!」という台詞だけは何故か裏返る事もなくスッキリ出ると言うエコノミックアニマルぶりでうんざりの重ね着。

まあ雨降って地固まるっていうし、これが治ったら男子高校生が排卵しちゃうぐらいの美声が手に入るに違いないんだろうけどもネ! なあんて楽観する枯れ始めてから三日目の夜。未だ雨季の来る気配のない喉。

コヨーテに間借りさせて、家賃収入で余生送るか。

2008年01月02日 22:49


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